国民の健康づくり運動の推進に向けたNCD対策における諸外国の公衆衛生政策の状況とその成果の分析のための研究

文献情報

文献番号
202009050A
報告書区分
総括
研究課題名
国民の健康づくり運動の推進に向けたNCD対策における諸外国の公衆衛生政策の状況とその成果の分析のための研究
課題番号
20FA1022
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
中村 良太(一橋大学社会科学高等研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 小塩 隆士(一橋大学経済研究所)
  • 井伊 雅子(一橋大学大学院経済学研究科)
  • Yao Ying(ヤオ イン)(一橋大学社会科学高等研究院)
  • Thomas Rouyard(トーマス ルーヤード)(一橋大学社会科学高等研究院)
  • 森山 美知子(広島大学大学院医系科学研究科)
  • 近藤 尚己(京都大学大学院医学研究科)
  • 五十嵐 中(横浜市立大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者 近藤尚己 東京大学大学院医学系研究科(~令和2年8月31日) → 京都大学大学院医学研究科(令和2年9月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
非感染性疾患の死因に占める割合の世界的な高まりを背景に、その予防に焦点を当てた政策介入の導入が盛んになっているが、現状ではそれらが政策介入のための体系的なエビデンス・ベースとして整理されているとは言い難い。さらに、政策介入は予算投入を伴うが、予算配分を正当化させるための費用対効果の観点が近年特に重要となっている。また、政策介入がもたらす健康の公平性への効果や、政策によって健康・経済上の影響を受けるステークホルダー等の分析や、実際の政策策定プロセスの分析も重要である。
本研究の目的は、非感染性疾患の予防のための政策介入の効果及び費用対効果に係る基礎資料を作成し、さらに日本への導入可能性の課題整理・検証を含めた政策提言を行うために重要となる論点や具体的な政策に関する分析を行うことである。
研究方法
非感染性疾患に対する介入の基礎的なエビデンス・ベースを作成するため、(1)公的介入のインパクト評価のシステマティック・レビュー、(2)介入の費用対効果の登録データベースの分析を行った。さらに、(3)各国の政策担当者および有識者に対してインタビュー調査を実施し、政策策定プロセスの特徴や政策の優先順位付け等について知見を得た。政策介入に関する個別の論点として、(4)行動科学の知見の活用、(5)介入効果の公平性の評価、(6)利害調整等の政治経済学を掲げ、それぞれに関する文献調査やデータ分析を行い、これまでの知見及び課題点の整理や、今後の研究の方針を検討した。さらに、日本における政策提言を行うため、(7)健康情報提供のあり方、及び(8)タバコ製品の供給規制、に関する文献整理とデータ分析を行い、具体的な政策提言に向けた研究を進めた。
結果と考察
(1)健康行動に関する集団レベルでの公共政策としての介入に関する既存文献のシステマティック・レビューを進め、喫煙と飲酒について結果をまとめた。タバコ税、条件付き現金給付、教育・啓発、喫煙規制、タバコ製品への警告添付等の政策が頻出した。課税と法規制の効果が強いことが分かった。

(2)米国タフツ大学が管理する全世界の費用対効果評価のデータベースを用いて、非感染性疾患ごとのデータの分布とタバコ・アルコール関連研究のデータの分析を行った。タバコ、アルコールに関する一次予防介入では、総じて費用対効果は良好といえることが明らかになった。

(3)タイ、ブータン、英国、シンガポール、米国における①主要な非感染性疾患の予防について、その政策形成過程と結果についてインタビューを行った。政府から独立したエビデンス収集と政策モニタリング機関の存在、政策決定に医療関係者以外の複数の専門職やステークホルダーの政策決定への関わり等、日本の政策にとって参考になる事例が抽出された。

(4)行動科学を使った予防介入としてナッジとブーストに着目して比較分析を行った。現時点では特にブーストに関するエビデンスが不足しており、所与の状況下においてナッジとブーストのどちらを採用するべきかについて科学的な答えは見出されなかった。介入効果の大きさ、持続性に加えて、社会グループ毎の効果の違いなどに関する分析の必要性が認識された。

(5)予防介入がすべての人に等しく効果的であるのかという「公平性」の観点から、エビデンスの蓄積状況や今後求められる研究等を検討するためのスコーピングレビューによる調査を実施した。社会経済的要因が考慮されている研究が多く、健康格差を是正する介入から、健康格差を拡大させる可能性のある介入も示唆された。

(6)たばこ税率の設定に関する文献整理を行い、日本のデータに基づく予備的分析を行った。喫煙抑制政策に関する政治経済学研究は定性的な論考が多い。データ分析により、たばこ増税からたばこ税収への因果性は確認できたが、たばこ税収からたばこ税額への因果性は確認できなかった。

(7)インターネットを用いた非感染性疾患に関する健康情報の提供のあり方について国内外の方策や文献を比較検討した。日本では情報提供は百科事典的であり、病気に関する情報が網羅されている。英国では患者本位の情報発信が為されていた。日本の文脈において健康情報の需要を推計する必要が認識された。

(8)タバコの供給規制に関して日本の消費者データを用いた分析を行った。供給規制によって消費者はよりタールやニコチンの弱い製品を選び、購買本数が減少し、その効果は長期的に持続することを発見した。
結論
国民の健康づくり運動策定に向けて、諸外国や国内の生活習慣病対策に関する基礎研究や文献調査、インタビュー調査を行った。今後は各分担研究を予定通り進めつつ、その際には医療経済学、行動科学、倫理と臨床等の広範囲の専門性をもつ有識者を交えて学際的な検討を行い、成果を統合して包括的な政策助言につなげたい。

公開日・更新日

公開日
2022-05-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-05-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202009050Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,000,000円
(2)補助金確定額
15,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,664,888円
人件費・謝金 8,480,032円
旅費 3,604円
その他 1,851,476円
間接経費 3,000,000円
合計 15,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-05-06
更新日
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