文献情報
文献番号
202009047A
報告書区分
総括
研究課題名
国民健康・栄養調査の質の確保・向上のための基盤研究
課題番号
20FA1019
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
瀧本 秀美(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 栄養疫学・食育研究部)
研究分担者(所属機関)
- 横山 徹爾(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
- 石川 みどり(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
- 黒谷 佳代(昭和女子大学 食健康科学部健康デザイン学科)
- 岡田 恵美子(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 栄養疫学・食育研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
7,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
国民健康・栄養調査は、国民の身体の状況、栄養素等摂取量及び生活習慣の状況を明らかにし、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基礎資料を得ることが目的であり、調査の標本代表性を確保するためには、協力率の維持が重要である。
そこで本事業では、国民健康・栄養調査の協力数の年次推移や欠損値によるバイアスの影響を評価した。加えて、協力率を向上させるために有効な方法を明らかにするため、インターネットを利用した食事調査の妥当性・ユーザビリティを評価するとともに、各自治体が調査協力率を向上させるために行っている方策について定性的分析により整理した。
そこで本事業では、国民健康・栄養調査の協力数の年次推移や欠損値によるバイアスの影響を評価した。加えて、協力率を向上させるために有効な方法を明らかにするため、インターネットを利用した食事調査の妥当性・ユーザビリティを評価するとともに、各自治体が調査協力率を向上させるために行っている方策について定性的分析により整理した。
研究方法
以下の4つの分担研究に取り組んだ。
1)国民健康・栄養調査結果を二次利用し、①身体状況調査ならびに栄養摂取状況調査の協力者数、②協力者における身体状況調査および栄養摂取状況調査への協力状況について、経年的な変化を評価した。
2)国民健康・栄養調査結果を二次利用し、身体状況調査、栄養摂取状況調査、生活習慣調査における欠損値(未回答・未測定)を多重代入法により補完し、欠損値によるバイアスを推定した。
3)インターネットを利用した食事調査と対面で行われる従来の食事調査を比較した研究をレビューすることにより、インターネットを利用した食事調査の妥当性やユーザビリティーを検討した。
4)19自治体の調査担当者21名が、調査協力率を向上させるために実施している対策についてグループワークで議論し、挙げられた意見をコード化・グループ化しカテゴリを作成した。次に研究者が、参加者のあげた全てのコードとカテゴリを1つのシートにまとめ、内容を分析した。
1)国民健康・栄養調査結果を二次利用し、①身体状況調査ならびに栄養摂取状況調査の協力者数、②協力者における身体状況調査および栄養摂取状況調査への協力状況について、経年的な変化を評価した。
2)国民健康・栄養調査結果を二次利用し、身体状況調査、栄養摂取状況調査、生活習慣調査における欠損値(未回答・未測定)を多重代入法により補完し、欠損値によるバイアスを推定した。
3)インターネットを利用した食事調査と対面で行われる従来の食事調査を比較した研究をレビューすることにより、インターネットを利用した食事調査の妥当性やユーザビリティーを検討した。
4)19自治体の調査担当者21名が、調査協力率を向上させるために実施している対策についてグループワークで議論し、挙げられた意見をコード化・グループ化しカテゴリを作成した。次に研究者が、参加者のあげた全てのコードとカテゴリを1つのシートにまとめ、内容を分析した。
結果と考察
1)国民健康・栄養調査の協力者数の総数は、平成7年から平成30年までの間に減少しており、性・年齢階級別にみると70歳以上を除く年齢層で減少していた。また身体状況調査と栄養摂取状況調査の両方に協力する者の割合は、性・年齢階級に関わらず減少しており、20歳未満では栄養摂取状況調査のみに協力する者の割合が増加し、20歳以上では身体状況調査のみに協力する者の割合が増加していた。今後は、年齢を考慮した上で、調査協力に影響すると考えられる地域、職種等の背景要因を探る必要があると言える。
2)欠損値によるバイアスの大きさを推定したところ、バイアスは極めて小さいことが示された。これは、回答・測定ができた者とそうでない者とで背景因子が類似しているか、欠損値の頻度が少ないためと考えられる。
3)6報の文献が抽出された。従来の食事調査とインターネットを活用した食事調査から算出した栄養素摂取量の差の割合に着目すると、たんぱく質では-12.1%と最も過小に評価された一方、脂質において10.1%の過大評価がみられることが示された。さらに、インターネットを活用した調査は、従来の栄養調査より回答時間が短かったことから、インターネットの利用が普及している世代においては、インターネットを活用した調査は、協力率を上げる1つの手段となる可能性が示された。
4)コントロール可能な対策として、次の12カテゴリが特定された:調査方法の標準化、調査員の技術の確保、調査の実施体制、会場の設置、対象世帯への調査の依頼方法、調査の実施時期、調査中の対応、栄養摂取状況調査の食事内容の確認方法 、報酬/インセンティブ、喜ばれる謝礼品、調査結果のフィードバック、コロナ禍における調査の注意点。これらの対策は、将来的に、調査必携やマニュアル等に反映させることが可能だと考えられる。
2)欠損値によるバイアスの大きさを推定したところ、バイアスは極めて小さいことが示された。これは、回答・測定ができた者とそうでない者とで背景因子が類似しているか、欠損値の頻度が少ないためと考えられる。
3)6報の文献が抽出された。従来の食事調査とインターネットを活用した食事調査から算出した栄養素摂取量の差の割合に着目すると、たんぱく質では-12.1%と最も過小に評価された一方、脂質において10.1%の過大評価がみられることが示された。さらに、インターネットを活用した調査は、従来の栄養調査より回答時間が短かったことから、インターネットの利用が普及している世代においては、インターネットを活用した調査は、協力率を上げる1つの手段となる可能性が示された。
4)コントロール可能な対策として、次の12カテゴリが特定された:調査方法の標準化、調査員の技術の確保、調査の実施体制、会場の設置、対象世帯への調査の依頼方法、調査の実施時期、調査中の対応、栄養摂取状況調査の食事内容の確認方法 、報酬/インセンティブ、喜ばれる謝礼品、調査結果のフィードバック、コロナ禍における調査の注意点。これらの対策は、将来的に、調査必携やマニュアル等に反映させることが可能だと考えられる。
結論
本事業で得られた成果は、これまでの国民健康・栄養調査の結果を用いて施策立案を行う際には調査協力率の経年的変化や欠損値の影響を考慮することに役立つと考えられる。また、今後の国民健康・栄養調査の調査方法の見直しに向けた基礎資料となることが期待される。
公開日・更新日
公開日
2022-06-27
更新日
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