糖尿病神経障害・糖尿病足病変の診断ガイドラインならびに管理法の確立

文献情報

文献番号
202009045A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病神経障害・糖尿病足病変の診断ガイドラインならびに管理法の確立
課題番号
20FA1017
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
中村 二郎(愛知医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 神谷 英紀(愛知医科大学 医学部)
  • 姫野 龍仁(愛知医科大学 医学部内科学講座糖尿病内科)
  • 下田 博美(愛知医科大学 医学部)
  • 麻生 好正(獨協医科大学医学部)
  • 加瀬 正人(獨協医科大学 内分泌代謝内科学講座)
  • 佐々木 秀行(関西医療大学  保健医療学部)
  • 出口 尚寿(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
  • 有村 愛子(冨田 愛子)(鹿児島大学 医学部)
  • 水上 浩哉(弘前大学 大学院医学研究科)
  • 村上 千恵子(鈴木 千恵子)(弘前大学 医学部)
  • 石橋 宏之(愛知医科大学 血管外科)
  • 折本 有貴(愛知医科大学 血管外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,240,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者 佐々木秀行 和歌山県立医科大学( 令和2年4月1日~令和3年3月31日) → 関西医療大学保健医療学部(令和3年4月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
 糖尿病は、細小血管障害(網膜症・腎症・神経障害)や大血管障害(脳卒中・冠動脈疾患)等のさまざまな合併症を引き起こす。これらのうち細小血管障害は厳格な血糖管理によって、一定程度の発症予防・重症化予防が可能であることが報告されているものの十分とはいえず、新たな予防法の開発が求められている。中でも糖尿病神経障害(DPN)は早期発症と高い有病率が特徴であり、また下肢切断等に至る糖尿病足病変(DF)の重要なリスクである。
 DPNの診断におけるゴールドスタンダードは標準的神経伝導検査(NCS)であるが、NCSにおいて90%以上の糖尿病患者が何らかの神経機能異常を呈することが知られており(馬場ら, 医学のあゆみ 244, 2013)、高頻度な疾患であることが推察される。しかしながら、現在、発症・進展を阻止するための成因に基づいた治療法は未確立であり、弥縫策として糖尿病患者の数%~約10%に認められる明らかなしびれ・痛み等に対する疼痛管理療法が主たる治療法として施行されている。その結果、DPNおよびDPNを背景とするDFは依然として解決すべき臨床課題として残されている。
 DPNの成因にアプローチする治療法の開発が遅れている要因として、DPNの評価方法(診断基準ならびに重症度判定法)が未確立であることが挙げられる。これまでにDPNの診断基準として、自他覚所見を網羅する複雑なスコアリングシステムから、自覚症状と2、3の身体所見の組み合わせによる簡易的な基準まで、さまざまな評価法が国内外で提唱されてきたが、国際的に検証された評価法は確立されていない。その結果、近年の糖尿病領域での大規模臨床研究の多くにおいて、主要および副次的評価項目からDPNの発症・進展は除外される事態となっている。そのため、DPNの合併が糖尿病患者の心血管イベントの発症および生命予後に如何なるインパクトをもたらすかが十分に認識されず、これがより一層、治療法開発の気勢をそぐという負の循環に陥っている。
 そこで本研究では、2020年度にDPN・DFの諸評価法を用いて、各評価法の信頼性・有用性を検討した。次年度以降には得られた知見を基に診断ガイドライン・管理法案を作成し、その妥当性を検証する。また診断ガイドライン・管理法を策定後、2年間の縦断的研究により心血管イベントの予後調査を行い、DPN・DFの心血管イベントのリスク因子としての重要性を検証する。
研究方法
 全国多施設において糖尿病症例を集積し、横断的研究と縦断的研究を行う。第一段階として2020年度に横断的研究すなわちDPN・DFの実態調査を開始し現在進行中である。実態調査の際には、DPN・DFに関する検査・評価法を網羅的に実施し、各検査・評価法の診断精度を含めた妥当性を検証する。第二段階として2年目以降に前記の検証作業により妥当性が確立された検査・評価法からなる診断ガイドライン・管理法を策定し、同じ症例集団を用いて縦断的研究を行う。すなわち、DPNが心血管イベントに及ぼす影響を主要評価項目とした観察研究を実施する。
結果と考察
 角膜共焦点顕微鏡(CCM)によるDPNの診断率については、簡易診断基準あるいは馬場分類を基準として解析した結果、ROC解析ではAUC>0.7の比較的優良な結果であり、CCMをDPNの診断に用いることの妥当性は概ね検証されたと考えられる。
 DPNの診断に用いうる簡易的で新たな評価項目として心電図におけるQTcの可能性を評価したところ、適切なQTc補正式を用いることでNCSの各項目と有意な相関を有する傾向を認めた。
 網膜が容易に観察しうる感覚神経組織であることに注目した検討を行った結果、フリッカー網膜電図によって得られる潜時・振幅はともに、DPNのパラメーターと相関を有した。潜時および振幅、また両者を用いた重回帰式により算出されたAUCは0.6以上を示しており、DPNについて一定程度の診断精度が示唆された。
 同じく網膜の構造的変化に着目した検討では、光干渉断層画像(OCT)の解析によって、DPN患者において特徴的な網膜各層の増加或いは減少を検出した。
 簡易NCS機器の適正な使用方法を検討した結果、機器に付属する重症度チャートは馬場分類と良好な相関を示したものの、診断精度は特異度に優れるものの感度は不十分であった。
結論
 CCM、網膜電図、OCT、簡易NCS機器はいずれもDPNの診断に有用である可能性が示唆された。特に、神経網膜は糖尿病性合併症における神経系の病理変化の評価に応用できる可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2023-08-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-08-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202009045Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,500,000円
(2)補助金確定額
5,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,240,000円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 0円
間接経費 1,260,000円
合計 5,500,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2022-05-10
更新日
-