脳卒中の急性期診療提供体制の変革に係る実態把握及び有効性等の検証のための研究

文献情報

文献番号
202009040A
報告書区分
総括
研究課題名
脳卒中の急性期診療提供体制の変革に係る実態把握及び有効性等の検証のための研究
課題番号
20FA1012
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
坂井 信幸(神戸市立医療センター中央市民病院 脳神経外科)
研究分担者(所属機関)
  • 岩間 亨(岐阜大学 脳神経外科)
  • 小笠原 邦昭(学校法人岩手医科大学 医学部 脳神経外科学講座)
  • 岡田 靖(国立病院機構 九州医療センター 脳血管センター臨床研究部 脳血管内科)
  • 木村 和美(日本医科大学 脳神経内科)
  • 黒田 敏(富山大学 大学院医学薬学研究部(医学))
  • 後藤 励(慶應義塾大学 経営管理研究科)
  • 塩川 芳昭(杏林大学医学部脳神経外科)
  • 高木 康志(京都大学医学研究科)
  • 冨永 悌二(東北大学大学院医学系研究科神経・感覚器病態学講座神経外科学分野)
  • 豊田 一則(国立循環器病研究センター 脳血管内科)
  • 橋本 洋一郎(熊本市立熊本市民病院 神経内科)
  • 松丸 祐司(虎の門病院 脳神経血管内治療科)
  • 宮本 享(国立大学法人京都大学 附属病院)
  • 吉村 紳一(兵庫医科大学 医学部 脳神経外科)
  • 宇野 昌明(川崎医科大学 医学部脳神経外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本脳卒中学会(以下JSS)が組織プラスミノーゲン活性化薬静注療法(以下IV r-tPA)を常時提供する一次脳卒中センター(以下PSC)の認定を2020年に開始することにより、 脳卒中急性期の診療実態がどう変化したかを明らかにすることが主目的である。先行研究で明らかになった脳卒中の急性期診療を担う医療機関を対象に、急性期脳卒中医療の実施体制および治療に関する各種指標を収集し、今後の急性期脳卒中医療の充実に資する指針を検討し、その安全性、有効性、効率性等の検証を行う。また、研究班発足の直前に突然拡散が始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が脳卒中急性期の診療体制と診療実績に与えた影響を本研究班で調査する。
研究方法
974のPSCは日本脳卒中学会の年次報告、それ以外の施設で脳卒中診療実績のある300施設に直接回答を依頼した。
機械的血栓回収療法の対象となる脳卒中救急搬送の指標を確立するため、救急搬送症例の調査研究を行い、分析結果に基づいて指標の試案を作成した。
PSC974施設に対し、 COVID-19が脳卒中急性期の診療体制と診療実績に与えた影響を調査した。
MTの医療経済的側面を得られた資料を基に評価した。
結果と考察
PSC は 974 施設認定され、東京都島嶼を除く全国 334の 2 次医療圏を常時カバーしているが、地域差はまだ存在している。2020 年の IV rt-PA 実施数は 16,331 件で、PSC 以外の回答率は 20%であるが実施件数は 67 件に留まっている。引き続き対象施設の実績を調査しこれまでと同様の悉皆率を確保するとともに、MT の実績を合わせて明らかにし、全国 334 の 2 次医療圏における変化を確認する。
6施設から 1,147 件の登録を得て、7項目(脈不整、共同偏視、半側空間無視、失語、構音障害、顔面麻痺、上肢麻痺)の観察結果と MT の対象となる大血管閉塞の有無の関係を評価した。ROC 曲線の AUC は 0.84 と比較的良好で、7項目に重み付けした指標とこれまで使われてきたいくつかの指標を得られたデータで再評価し、脳卒中救急搬
送の指標試案を作成する。
2020年11月、2021年2月にCOVID-19 が脳卒中急性期の診療体制に与えた影響と三大病型(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)および IV rt-PA、MT の診療実績を調査した。576(59.1%)から延べ 983 回の回答を得た。2019 年の同月と比較して 2020 年の月別の医療機能(一般外来、脳卒中救急、予定手術、緊急手術、予定血管撮影、緊急血管内治療)の制限を、A 通常通り、B 軽度(70-99%)、C 中等度(30-69%)、D 重度(1-29%)、E 停止に分けて調査した。2020 年 4-5 月に一般外来が通常通り維持できたのは 26.0-28.4%、予定手術は 42.8-44.5%しかなく、脳卒中救急も 52.8-53.8%、救急手術 64.9-65.2%、救急血管内治療66.6-68.7%制限されていた。6 月以降徐々に回復してきたが、12 月になっても一般外来は 52.9%、予定手術は 37.1%、脳卒中救急は35.6%制限されており、1年経っても脳卒中医療提供は大きな制限を受けていることが明らかとなった。診療実績は530(54.4%)施設から得られ、全脳卒中は 2019 年に 178,893 件、2020 年に 174,385 件と 2.5%減少していた。全体の推移は COVID-19 の波と逆相関しており、感染拡大期に脳卒中診療は 4.3%減少し、安定期に 5.0%増加していた。感染者が多い(人口10 万人対感染者 230 人以上)の都道府県(北海道、東京、神奈川、大阪、沖縄)では 1.6-5.4%減少し、それ以外の府県の平均は 0.05%の減少と大きく異なっていた。その原因として脳卒中発生そのものが減っているのか、受診控えや受診遅れが要因なのかは不明であり、転帰や死亡に与える影響を総合的に分析する必要がある。
MT のみを評価すると1つの専用室または共用室では年間 120 件、待期的治療との総数が 50 件に満たない場合は損益分岐が得られない。
結論
1. PSC は全国の2次医療圏をほぼカバーするように配置された。 PSC の医療提供体制、 IVrt-PA と MT の年次推移を評価する体制が整った。
2. PSC 以外の医療機関でも少ないながら急性期脳卒中医療を提供している。引き続き調査を継続する必要がある。
3. MT の搬送と医療向上に資する LVO Scale の標準化の取り組みが順調に進んでいる。
4. 脳卒中医療提供体制に大きな影響を与えたCOVID-19 に関する重要な知見を得た。

公開日・更新日

公開日
2024-04-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-04-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202009040Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,980,000円
(2)補助金確定額
5,980,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,680,853円
人件費・謝金 1,795,488円
旅費 139,700円
その他 40,016円
間接経費 1,380,000円
合計 6,036,057円

備考

備考
自己資金:56,057円

公開日・更新日

公開日
2023-07-11
更新日
-