公衆衛生領域を中心とした自治体栄養士育成プログラム開発のための研究

文献情報

文献番号
202009036A
報告書区分
総括
研究課題名
公衆衛生領域を中心とした自治体栄養士育成プログラム開発のための研究
課題番号
20FA1008
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
由田 克士(大阪市立大学大学院 生活科学研究科 食・健康科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 澁谷 いづみ(愛知県一宮保健所)
  • 岡本 理恵(長沼 理恵)(金沢大学 医薬保健研究域保健学系)
  • 田中 和美(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 栄養学科)
  • 荒井 裕介(千葉県立保健医療大学 健康科学部)
  • 串田 修(静岡県立大学 食品栄養科学部)
  • 小山 達也(青森県立保健大学 健康科学部 栄養学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 都道府県や市町村に勤務する公衆衛生領域を中心に担当する自治体栄養士は、地域における健康・栄養課題を適切に把握しながら、それらの解決や改善に求められる施策の立案、実施、評価、改善が求められる。一方で配置数は少ないため、個の能力やスキルが、地域や組織における公衆栄養活動の質に対して、強く影響を及ぼすことになる。また、自治体栄養士に求められる役割は、時間の経過とともに発生・変化するさまざまな課題に対して最善の対応ができるよう、勤務年数や職位に応じ、常に十分な知識や技術を身につけておかなければならない。本研究では現状を詳細に把握し、これを考慮しつつ、新たな自治体栄養士育成プログラムの開発を目的とする。
研究方法
 新たな自治体栄養士の育成プログラム開発の前段階として、本件に関わる多職種における人材育成についての文献検索や各種資料の収集・レビューを行った。また、自治体栄養士の人材育成に関する自治体主管部局に対する組織調査を実施した。さらに、自治体に勤務する栄養士個人を対象に実施した各種人材育成プログラムに対する参加状況、今後のニーズ、自身における現在の立ち位置や将来の職位や求める業務内容の方向性等に関するアンケート調査も実施した。
結果と考察
 薬剤師・歯科衛生士・自治体栄養士のキャリアラダー等に基づく人材育成プログラムに関する文献や各種資料のレビューを試みたが、何れも該当する論文は見当たらなかった。しかし、関連する団体、自治体のホームページを確認したところ、日本薬剤師会は薬剤師会生涯学習支援システムを、日本薬剤師研修センターは、研修認定薬剤師制度を実施していた。日本歯科衛生士会は生涯研修制度と認定歯科衛生士制度を設けていた。また、ホームページ上で確認できた現在行われている自治体栄養士向けの研修プログラムは6自治体(5県、1市)であった。
 一方、保健師・看護師のキャリアラダー等に基づく人材育成プログラムに関する文献や各種資料のレビューによると、保健師のラダーは、学術論文以外を検索しても3件のみで、単一市のキャリアラダーに関する連載、「自治体保健師の標準的なキャリアラダー」の作成に関する講演、「自治体保健師の標準的なキャリアラダー」を用いて関連要因を検討した原著の文献があった。看護師のラダーは、学術論文以外を含めて14件認められた。保健師のラダーの検索結果とは異なり、看護師は全国レベルのラダーだけではなく、病院や地域レベルでのラダー開発も行われていた。保健師・看護師ともに、ラダーに基づく人材育成プログラムの文献は見当たらなかった。ハンドサーチでは、保健師・看護師向けのキャリアラダーや人材育成プログラムの内容が確認できた。
 また、都道府県・保健所設置市・特別区の主管部局を対象として実施した行政栄養士人材育成に関する実態調査(組織調査)を実施し、115自治体から回答が得られた。人材育成のためのマニュアルやガイドラインを策定済み、もしくは、策定に向け作業中の自治体は41自治体であった。このうち、マニュアルを活用・運用するための体制整備もできているのは27自治体であった。また、マニュアルの内容については、厚生労働省が示す「行政栄養士業務指針」に沿っていると回答したのは35自治体であった。また、人材育成に関する研修会を実施しているのは61自治体、また、派遣研修を定期的もしくは不定期に実施しているのは88自治体であった。
 都道府県、保健所設置市、特別区に勤務する行政栄養士を対象とした調査結果(インターネットによる調査を実施し、775名から回答を得た。)によると、自身の将来は、昇任して施策の展開や組織定員の増加を目指したいという積極的な意見が上位にあがる一方で、「自身に昇任するだけの学力や能力は備わっていないと思う」、「育児や介護を優先したい」という意見も上位にあがっていた。
市町村(保健所設置市を除く)に勤務する行政栄養士を対象とした調査結果(インターネットによる調査を実施し、1,031名から回答を得た。)では、自身の将来の方向は、「栄養のスペシャリストとして、今後も業務を続けたい」と回答する者が最も多く、自身の将来にとってスキルアップしておかなければならないことは、「専門能力」と回答した者が多かった。
結論
 一連の調査・検討により、検討した何れの職種においても、キャリアラダーに基づく系統的且つ明確に整理された人材育成プログラムは多くは存在しないことが解った。また、自治体栄養士の養成プログラムや研修体制の現状と課題、都道府県、保健所設置市、市町村、特別区に勤務する行政栄養士個人の考え方や要望等の概要が把握できた。
 現状を踏まえ、自治体栄養士の資質向上に必要なスキルやニーズを加味しつつ、各種団体・機関等との連携・分担も視野に入れた人材育成プログラムの開発に着手する。

公開日・更新日

公開日
2022-03-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-03-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202009036Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,000,000円
(2)補助金確定額
5,314,000円
差引額 [(1)-(2)]
686,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,220,284円
人件費・謝金 222,232円
旅費 0円
その他 1,488,049円
間接経費 1,384,000円
合計 5,314,565円

備考

備考
収入「(2)補助金確定額」と支出「合計」の差異565円は、自己資金を用いた。

公開日・更新日

公開日
2022-05-06
更新日
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