喫煙、飲酒等生活習慣の実態把握及び生活習慣の改善に向けた研究

文献情報

文献番号
202009031A
報告書区分
総括
研究課題名
喫煙、飲酒等生活習慣の実態把握及び生活習慣の改善に向けた研究
課題番号
20FA1003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
尾崎 米厚(鳥取大学 医学部 社会医学講座 環境予防医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 兼板 佳孝(日本大学 医学部 社会医学系公衆衛生学分野)
  • 神田 秀幸(岡山大学 学術研究院医歯薬学域)
  • 樋口 進(独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター )
  • 井谷 修(日本大学医学部 社会医学系公衆衛生学分野)
  • 地家 真紀(池田 真紀)(昭和女子大学生活科学部食安全マネジメント学科)
  • 大塚 雄一郎(日本大学医学部社会医学系公衆衛生学)
  • 吉本 尚(筑波大学 医学医療系)
  • 金城 文(田原 文)(鳥取大学 医学部 社会医学講座 環境予防医学分野)
  • 真栄里 仁(独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター教育情報部)
  • 美濃部 るり子(独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター)
  • 桑原 祐樹(鳥取大学医学部環境予防医学分野)
  • 春日 秀朗(福島県立医科大学 衛生学・予防医学講座)
  • 伊藤 央奈(高橋 央奈)(郡山女子大学 家政学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康日本21(第2次)計画の評価のために、わが国の中高生の喫煙及び飲酒行動の実態を明らかにすることが必須である。新型たばこ(加熱式たばこや電子たばこ)、ノンアルコール飲料、ビンジ(機会大量)飲酒、アルコールをエナジードリンクで割って飲むこと等の新たな実態を把握するために、全国から中学校、高等学校を無作為抽出して調査を実施した。コロナ禍で学校休校が続いたため学校での紙の調査票の記入は困難と考え、調査方法を検討することも目的に加えた。今までの全国調査の結果と今回の結果を比較し、わが国の未成年者の喫煙、飲酒行動の課題を明らかにすることを目的とした。また、昨年までの研究班で実施した成人の労働者の問題飲酒者に対する減酒支援介入の効果を評価するための無作為化比較試験の介入1年後の評価調査を実施した。 
研究方法
中高生の喫煙及び飲酒行動に関する全国調査の調査方法を検討した。従来の学校での紙調査票の回答の時間をとってもらうことが困難だと判断し、予算をかけず、全国調査を実施する方法についての班会議を重ねて検討した。その結果、Web調査の回答サイトを構築し、対象学校に保護者への説明文書を配布し、その文書を生徒に自宅へ持って帰ってもらい、親の承諾を得た中高生が自宅等からWebアンケートに回答する手法をとった。
減酒支援介入の効果判定調査では、2019年度に職場の従業員でAUDIT得点が8点以上の者で、介入研究参加の同意が取得できた351人に対して、介入後半年および1年後に調査票を送付し、回答してもらった。回答に不備のある者、回答がない者には催促を行った。半年後、1年度のアンケートのデータを入力し、データクリーニングを行い、統計解析を実施し介入効果を判定した。
結果と考察
全国の中学校10,222校、高等学校4,248校のうち中学校48校、高等学校21校を抽出して、中高生の飲酒行動、喫煙行動、生活習慣等に関する全国調査を自宅で実施するWeb調査方式で実施した。調査時期は2020年11月~2021年2月末であった。生徒へ調査票依頼書を配布した学校は、中学校25校(52.1%)、高等学校10校(47.6%)であった。回答した生徒数は、中学校159人(0.8%)、高等学校114人(0.6%)であり、解析を行うに値する十分な回答結果を得ることができなかった。
減酒支援の効果の評価研究については、2019年1月から12月の期間に351名から研究参加の同意が得られた。研究参加者は3群に無作為に割り付けられた。半年後の1週間当たりの飲酒量の変化では、通常版介入群で平均35.4 g/週の飲酒量の減少がみられた。一元配置分散分析において3群の平均値の差は有意であったが、多重検定を考慮すると介入効果に統計学的な有意差は示されなかった。1年後の1週間当たりの飲酒量の変化は、通常版介入群で平均29.2 g/週の減少がみられたが、3群の差は統計学的に有意ではなかった。飲酒量の変化を従属変数とした重回帰分析やロジスティック回帰分析でも半年後の減酒に通常版介入が有意な関連を示した。他に減酒と有意な関連のある説明要因は認められなかった。また、1年後の評価時期の違いによって1年後の介入効果に差が認められ、評価時期が前半であった方で減少量が多かった。コロナ禍が効果の大きさに影響を与えた可能性がある。
結論
今回新型コロナウイルス感染症の流行下で、中高生の飲酒行動、喫煙行動、生活習慣等に関する全国調査を、自宅で実施するインターネット回答方式で実施したが、解析を行うに値する十分な回答結果を得ることができなかった。今後はインターネット回答方式と紙調査回答方式を授業内で実施し、健康日本21(第二次)の最終評価指標算出をおこなう。
今回の研究結果では、サンプルサイズの不足により有意差は示せなかったが、産業保健現場での保健師によるスクリーニングの後の減酒支援が医療現場と遜色のない一定の効果を示すという可能性を強く示唆している。また、今回効果が実証されたのは15分程度の従来通りの介入方法であった。1年後の評価には新型コロナウイルス流行の影響も考えられ、十分な介入効果が示されなかったが、1年後においても一定の効果が持続している可能性が示された。
産業保健現場でのスクリーニングの後の減酒支援の実施は、プライマリケアなどの医療現場よりも若年の集団に対して予防効果が期待され、企業や地域の健康指標を改善し、アルコールによる害を減らす重要な戦略の一つとなる可能性がある。将来的には、介入方法の改善、現場での実現可能性の検証、健診結果を介入の評価項目とした介入効果の根拠を示すことで、減酒介入実践の場を広げ、アルコールによる疾病負荷の軽減に貢献したいと考える。

公開日・更新日

公開日
2022-04-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-04-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202009031Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,000,000円
(2)補助金確定額
10,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 539,290円
人件費・謝金 1,460,808円
旅費 0円
その他 6,999,902円
間接経費 1,000,000円
合計 10,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-04-12
更新日
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