成人眼科検診による眼科疾患の重症化予防効果及び医療経済学的評価のための研究

文献情報

文献番号
202009019A
報告書区分
総括
研究課題
成人眼科検診による眼科疾患の重症化予防効果及び医療経済学的評価のための研究
課題番号
19FA1010
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
山田 昌和(杏林大学 医学部眼科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 平塚 義宗(順天堂大学 医学部眼科学)
  • 川崎 良(大阪大学 医学系研究科脳神経感覚器外科学(眼科学))
  • 田村 寛(京都大学 国際高等教育院附属データ科学イノベーション教育研究センター)
  • 中野 匡(東京慈恵会医科大学 医学部眼科学講座)
  • 横山 徹爾(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 高野 繁(公益社団法人 日本眼科医会)
  • 後藤 励(慶應義塾大学 大学院経営管理研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
6,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 視覚障害の原因疾患として、緑内障、糖尿病網膜症、黄斑変性、白内障が主要なものであるが、これらは年齢と共に有病率と重症度が増加する慢性変性疾患である。健康寿命の延伸のために視覚の維持は必須であり、視覚障害の予防、減少のためには緑内障を中心とした慢性眼疾患を早期に発見するための成人眼科検診プログラムが重要と考えられるが、成人眼科検診及びその後の医療介入によってどの程度眼科疾患の重症化が抑制され、失明者の減少に繋がるかは明らかでなく、医療経済学的な検討も十分になされていない。
 本研究では成人眼科検診の医学的効果(失明抑制効果)と費用対効果(ICER, Incremental Cost Effectiveness Ratio)をマルコフモデルにより評価することを目的とした。
研究方法
 成人眼科検診の医療経済的効果と医学的効果(失明者を減少する効果)を明らかにするために、決断分析マルコフモデルを作成して評価を行った。モデル作成、分析にはTreeAge Pro 2017を用い、使用したパラメータは可能な限り日本人を対象とした臨床研究データを利用した。
 視覚障害の主要原因疾患である緑内障、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、白内障について個別にマルコフモデルを作成し、分析を行った。更に4疾患の検診モデルを統合し、眼底検査によるスクリーニングで複数の疾患を発見する統合モデルを作成した。ベースケース分析では成人眼科検診のスケジュールを40歳から5年に1度の頻度で70歳まで行うとした。眼科検診による失明減少効果をより高めるためには、検診方法の精度の向上と検診スケジュールの設定の2つが考えられる。最適な検診スケジュールを得るために、検診開始年齢、検診終了年齢、検診間隔を変化させて、検診スケジュール毎のICERと失明抑制率を算出した。また検査内容として眼底写真に光干渉断層計(OCT)を加えた場合についてもICERと失明抑制率の評価を行った。
結果と考察
 ベースケース分析(40歳から5年に1度の頻度で70歳まで)での各疾患別のICERと失明抑制率は、緑内障ではICER 3,257,215円/QALY、失明抑制率は12.3%、加齢黄斑変性で9,276,666円/QALY、失明抑制率40.7%、糖尿病網膜症で49,124,214円/QALY、失明抑制率1.4%、白内障で472,533円/QALY、失明抑制率は76.9%となった。費用対効果の閾値を500万円/QALYとすると成人眼科検診は緑内障と白内障に関しては費用対効果的である一方、加齢黄斑変性と糖尿病網膜症では閾値を超え、感度分析でもICERが500万円/QALY以下になることはなかった。
このようにベースケース分析において、4疾患を個別に対象とした場合には費用対効果の評価が大きく分かれたが、眼底検査による眼科検診ではこれら4疾患をすべて同時にスクリーニングすることが可能である。4疾患を併せた統合モデルでは、ベースケースのICERは1,883,516円/QALY、失明抑制率は16.2%であり、ICERは費用対効果の閾値内であった。
検診開始年齢や間隔、検診終了年齢を変化させ、検診プログラムを検討したところ、統合モデルの結果でみると、40歳から70歳まで毎年検診を行う場合、ICERは約192万円/QALYとベースケースよりわずかに増加するが、失明抑制率が54.4%と大きく上昇し、高い失明抑制効果が得られることが分かった。可能であれば1年に1回の眼科検診の機会が望ましいと考えられた。
 検診方法として眼底写真に光干渉断層計(OCT)検査を加えた場合を検討した結果、眼底写真だけの検診に比べて失明抑制率を15.8%増大させる医学的効果があり、ICERは大きく増大しなかった。OCTによる追加検査費用を考慮しても、眼底検査にOCTを付加する方式の費用対効果は良好であり、失明予防の観点からはOCTを加えた眼科検診が望ましいと考えられた。このことは感度の高い検診方法(OCTの導入など)によって検診の間隔が長くても、高い失明抑制率が期待できることを示している。
結論
 成人眼科検診の医療経済学的評価を行った。40歳から70歳まで5年に1回の眼底検査というベースケースでは、主要4疾患(緑内障、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性、白内障)に関して費用対効果の評価が大きく分かれたが、4疾患を併せた統合モデルでは、ICERは1,883,516円/QALYと費用対効果の閾値内であり、16.2%の失明抑制効果が予測された。検診間隔を1年に1回にするか、眼底検査にOCT検査を付加することでICERを大きく変えずに更に高い失明減少効果を見込むことができる。成人眼科検診全体では十分な視覚障害予防効果があり、医療経済学的にも許容されると考えられた。

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202009019B
報告書区分
総合
研究課題
成人眼科検診による眼科疾患の重症化予防効果及び医療経済学的評価のための研究
課題番号
19FA1010
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
山田 昌和(杏林大学 医学部眼科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 平塚 義宗(順天堂大学 医学部眼科学)
  • 川崎 良(大阪大学 医学系研究科脳神経感覚器外科学(眼科学))
  • 田村 寛(京都大学 国際高等教育院附属データ科学イノベーション教育研究センター)
  • 中野 匡(東京慈恵会医科大学 眼科学講座)
  • 横山 徹爾(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 高野 繁(公益社団法人 日本眼科医会)
  • 後藤 励(慶應義塾大学 大学院経営管理研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 視覚障害の原因疾患として、緑内障、糖尿病網膜症、黄斑変性、白内障が主要なものであるが、これらは年齢と共に有病率と重症度が増加する慢性変性疾患である。健康寿命の延伸のために視覚の維持は必須であり、視覚障害の予防、減少のためには緑内障を中心とした慢性眼疾患を早期に発見するための成人眼科検診プログラムが重要と考えられるが、成人眼科検診及びその後の医療介入によってどの程度眼科疾患の重症化が抑制され、失明者の減少に繋がるかは明らかでなく、医療経済学的な検討も十分になされていない。
 本研究では成人眼科検診の医学的効果(失明抑制効果)と費用対効果(ICER, Incremental Cost Effectiveness Ratio)をマルコフモデルにより評価することを目的とした。
研究方法
 成人眼科検診の医療経済的効果と医学的効果(失明者を減少する効果)を明らかにするために、決断分析マルコフモデルを作成して評価を行った。モデル作成、分析にはTreeAge Pro 2017を用い、使用したパラメータは可能な限り日本人を対象とした臨床研究データを利用した。
 視覚障害の主要原因疾患である緑内障、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、白内障について個別にマルコフモデルを作成し、分析を行った。更に4疾患の検診モデルを統合し、眼底検査によるスクリーニングで複数の疾患を発見する統合モデルを作成した。ベースケース分析では成人眼科検診のスケジュールを40歳から5年に1度の頻度で70歳まで行うとした。眼科検診による失明減少効果をより高めるためには、検診方法の精度の向上と検診スケジュールの設定の2つが考えられる。最適な検診スケジュールを得るために、検診開始年齢、検診終了年齢、検診間隔を変化させて、検診スケジュール毎のICERと失明抑制率を算出した。また検査内容として眼底写真に光干渉断層計(OCT)を加えた場合についてもICERと失明抑制率の評価を行った。
結果と考察
 ベースケース分析(40歳から5年に1度の頻度で70歳まで)での各疾患別のICERと失明抑制率は、緑内障ではICER 3,257,215円/QALY、失明抑制率は12.3%、加齢黄斑変性で9,276,666円/QALY、失明抑制率40.7%、糖尿病網膜症で49,124,214円/QALY、失明抑制率1.4%、白内障で472,533円/QALY、失明抑制率は76.9%となった。費用対効果の閾値を500万円/QALYとすると成人眼科検診は緑内障と白内障に関しては費用対効果的である一方、加齢黄斑変性と糖尿病網膜症では閾値を超え、感度分析でもICERが500万円/QALY以下になることはなかった。
このようにベースケース分析において、4疾患を個別に対象とした場合には費用対効果の評価が大きく分かれたが、眼底検査による眼科検診ではこれら4疾患をすべて同時にスクリーニングすることが可能である。4疾患を併せた統合モデルでは、ベースケースのICERは1,883,516円/QALY、失明抑制率は16.2%であり、ICERは費用対効果の閾値内であった。
検診開始年齢や間隔、検診終了年齢を変化させ、検診プログラムを検討したところ、統合モデルの結果でみると、40歳から70歳まで毎年検診を行う場合、ICERは約192万円/QALYとベースケースよりわずかに増加するが、失明抑制率が54.4%と大きく上昇し、高い失明抑制効果が得られることが分かった。可能であれば1年に1回の眼科検診の機会が望ましいと考えられた。
 検診方法として眼底写真に光干渉断層計(OCT)検査を加えた場合を検討した結果、眼底写真だけの検診に比べて失明抑制率を15.8%増大させる医学的効果があり、ICERは大きく増大しなかった。OCTによる追加検査費用を考慮しても、眼底検査にOCTを付加する方式の費用対効果は良好であり、失明予防の観点からはOCTを加えた眼科検診が望ましいと考えられた。このことは感度の高い検診方法(OCTの導入など)によって検診の間隔が長くても、高い失明抑制率が期待できることを示している。
結論
 成人眼科検診の医療経済学的評価を行った。40歳から70歳まで5年に1回の眼底検査というベースケースでは、主要4疾患(緑内障、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性、白内障)に関して費用対効果の評価が大きく分かれたが、4疾患を併せた統合モデルでは、ICERは1,883,516円/QALYと費用対効果の閾値内であり、16.2%の失明抑制効果が予測された。検診間隔を1年に1回にするか、眼底検査にOCT検査を付加することでICERを大きく変えずに更に高い失明減少効果を見込むことができる。成人眼科検診全体では十分な視覚障害予防効果があり、医療経済学的にも許容されると考えられた。

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202009019C

収支報告書

文献番号
202009019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,930,000円
(2)補助金確定額
7,930,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,502,316円
人件費・謝金 1,115,581円
旅費 20,120円
その他 2,480,615円
間接経費 1,830,000円
合計 7,948,632円

備考

備考
 支出の合計額が18,632円超過したため、自己資金で支払いを行った。