ナノマテリアルのヒト健康影響の評価手法の開発のための有害性評価および体内動態評価に関する基盤研究

文献情報

文献番号
200736021A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノマテリアルのヒト健康影響の評価手法の開発のための有害性評価および体内動態評価に関する基盤研究
課題番号
H18-化学-一般-007
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター総合評価研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 菅野 純(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 津田 洋幸(名古屋市立大学大学院医学研究科)
  • 西村 哲治(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 西沢 共司(中央労働災害防止協会 日本バイオアッセイ研究センター)
  • 屋形 直明((財)化学物質評価研究機構・久留米事業所)
  • 新井 洋由(東京大学大学院薬学系研究科)
  • 本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 中澤 憲一(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 最上 知子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 涌生 聖((株)三菱化学安全科学研究所・鹿島研究所)
  • 高月 峰夫((財)化学物質評価研究機構・安全性評価技術研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
72,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
産業用ナノマテリアルは新用途への展開が期待されている一方で、未知の生体影響も予測され、その物理化学的特性を考慮した有害性評価手法の開発が急務であり、評価法の確立のための総合的な基盤研究を行うことを目的としている。
研究方法
高生産量のナノマテリアルを検証物質として選び、in vivo生体影響評価手法の開発、ナノ粒子の吸入毒性評価手法の開発、暴露測定法および動態解析法の開発、in vitro試験系の開発および、国際動向調査の5部門による研究を行っている。
結果と考察
in vivo試験法では、p53(+/-)マウスに多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を腹腔内投与することにより、中皮腫が発生することを確認すると共に、経気管肺内噴霧法を用いた酸化チタンによるc-Ha-rasラットとフラーレン(C60)による通常ラットへの発がんプロモーション作用を見いだした。吸入試験法では、MWCNTのTween20を用いたミスト状態での安定した暴露実験が可能なことを確認した。測定法および動態解析では、C60のラットへの強制単回経口投与と、MWCNTの気管内投与による生体試料での検出が可能であることを確認した。一方、C60水分散液では微生物による分解は認められなかった。in vitro試験法の研究においては、リポソーム懸濁C60の暴露により、CHL細胞での小核誘発性、アフリカツメガエル卵母細胞発現系および培養アストロサイト神経細胞機能蛋白質に対する影響、Caco-2細胞単層膜の安定性や蛍光デキストランのトランスサイトーシス、マクロファージ細胞からのサイトカイン放出に関して、特に影響が見られなかった。一方、長期曝露を想定したHepG2細胞のコロニー形成率に対して、わずかではあるがC60を長期暴露した場合にコロニー形成率が低下することが示唆された。国際動向調査においては、米国EPAやEUにおいて、科学的情報収集に加えてリスク評価や管理に対しする議論の枠組み等の検討を始めていることが示された。
結論
MWCNT腹腔内投与での繊維状粒子として観察された事象や気管内投与による発がんプロモーション作用の結果は、in vivo長期暴露研究の必要性を示すと共に、MWCNTの吸入暴露システムと生体内検出法の基礎的技術を確立することができた。in vitro研究では、リポソーム法での有用性を示すと共に長期暴露を想定した評価法の必要性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2008-05-26
更新日
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