文献情報
文献番号
202009012A
報告書区分
総括
研究課題名
特定給食施設等における適切な栄養管理業務の運営に関する研究
課題番号
19FA2002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
市川 陽子(静岡県公立大学法人 静岡県立大学 食品栄養科学部 栄養生命科学科)
研究分担者(所属機関)
- 赤尾 正(大阪樟蔭女子大学 健康栄養学部)
- 宇田 淳(滋慶医療科学大学院大学 医療管理学研究科)
- 桑原 晶子(大阪府立大学 総合リハビリテーション学研究科)
- 神田 知子(同志社女子大学 生活科学部 )
- 高橋 孝子(神戸女子大学 家政学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
12,895,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
健康増進法に基づく特定給食施設には、利用者に応じた適切な栄養管理が期待されており、提供される食事が栄養計画の品質通りに提供されることが重要である。食事の品質を担保するものとして、深刻な労働力不足等に対応でき、効率的で調理、衛生、環境等に十分配慮した給食(生産)・調理システムが求められる。本研究の目的は、特定給食施設の適切かつ持続可能な栄養管理の推進と、そのための効率的・効果的な給食管理業務の推進に向けて調査を行い、栄養管理の主体である給食管理の状況に合わせた効率的・効果的な業務推進にとって障害となる因子、有用な因子を抽出し、課題を整理すること、施設の機能や規模等に応じた新たな給食管理手法を検討することである。
研究方法
令和2年度は、1) 介護老人保健施設(老健)の給食の運営業務について全国規模の質問紙調査を実施し、実態の把握と合理化、効率化のための課題を抽出した。2) セントラルキッチン(CK)、新調理システムを導入している先進的な施設の見学およびヒアリングを行い、効率的・効果的な給食管理手法としての可能性を検討した。3) 新調理システムのクックフリーズ/クックサーブによる揚げ物調理、冷凍食材/生食材かつチル/サーブによる料理の栄養成分分析を行ってエネルギー、栄養素の変化を調べ、栄養管理上の留意点について検討した。4) 中小病院、老健がパッケージ化された栄養・給食管理システムをカスタマイズせず導入する際にシステムが具備すべき機能を標準的仕様としてまとめた。
結果と考察
分担研究報告において、繰り返し課題として挙げられたのが、栄養・食事管理のIT化(システム連携)と人的資源の確保である。老健向け介護ソフトの普及率(35.7%)は医療施設と比べて低く、オーダー連携をしている施設は17.0%とさらに低い。ソフトウェアの情報連携が活用できていないこと、栄養管理や献立作成ソフトウェアの活用が表計算ソフトの補完にとどまり、いずれも業務の効率化に直結していないことが問題である。
人的資源の確保についても深刻な状況であり、管理栄養士・栄養士では13~17%、調理師・調理員では4~5割の高率で「募集しても応募がない」と回答されていた。給食受託会社側の従事者は入れ替りが多いことが課題であった。調理従事者は給食の生産管理の要であるが、食種や食事形態の種類が多く煩雑な作業が多いこと、それに見合った賃金体系ではないことにより、特に調理師に敬遠されると考えられる。持続可能な給食運営のあり方をさらに検討するとともに、調理師の養成施設等における医療・福祉現場での専門家の必要性や労働価値に関する教育が望まれる。
医療施設の調査(昨年度)では、業務の合理化、効率化のためには労働生産性の高い生産システム、食種・食数を減らすこと、調理作業工程を減らすことが有効と考えられた。老健の生産システムはコンベンショナルが86%と高く、システムによる労働生産性の違いはなかった。調理システムも同様であった。一方、食種は「病態別」「個人に対応したエネルギー」「個人に対応した食形態」が掛け合わされることで増え、副食の食形態数が7種類以上になると労働生産性が低くなることが明らかとなり、6種類以下に集約することが望ましいと考えられた。既製品の活用は利点になると考えられた。
入所定員は、施設側の管理栄養士が複数配置施設で1人配置施設より有意に多く、給食管理業務の現状から、入所者100人当たりに管理栄養士が2人以上いることが望ましいと考えられ、令和3年度の介護報酬改定を支持する結果であった。
カミサリー/CK(C/C)システム、新調理システムに関するヒアリング対象施設では、CKで複数の調理システムを組み合わせたハイブリット方式で効率化を図っていた。システムに合ったメニュー研究や作業の標準化など、ソフト面の充実や工夫も重要であることが示された。
レディフードシステム(RF)による調理物の栄養的評価として、クックフリーズの揚げ魚、冷凍魚使用の魚料理(クックサーブとクックチルで調理した2種類の魚料理)の栄養成分分析を行い、魚料理に関して、栄養成分値は調理システムの影響は少ないが、冷凍食材の影響を受ける場合があることが明らかになった。栄養管理上の留意点として周知する必要がある。
人的資源の確保についても深刻な状況であり、管理栄養士・栄養士では13~17%、調理師・調理員では4~5割の高率で「募集しても応募がない」と回答されていた。給食受託会社側の従事者は入れ替りが多いことが課題であった。調理従事者は給食の生産管理の要であるが、食種や食事形態の種類が多く煩雑な作業が多いこと、それに見合った賃金体系ではないことにより、特に調理師に敬遠されると考えられる。持続可能な給食運営のあり方をさらに検討するとともに、調理師の養成施設等における医療・福祉現場での専門家の必要性や労働価値に関する教育が望まれる。
医療施設の調査(昨年度)では、業務の合理化、効率化のためには労働生産性の高い生産システム、食種・食数を減らすこと、調理作業工程を減らすことが有効と考えられた。老健の生産システムはコンベンショナルが86%と高く、システムによる労働生産性の違いはなかった。調理システムも同様であった。一方、食種は「病態別」「個人に対応したエネルギー」「個人に対応した食形態」が掛け合わされることで増え、副食の食形態数が7種類以上になると労働生産性が低くなることが明らかとなり、6種類以下に集約することが望ましいと考えられた。既製品の活用は利点になると考えられた。
入所定員は、施設側の管理栄養士が複数配置施設で1人配置施設より有意に多く、給食管理業務の現状から、入所者100人当たりに管理栄養士が2人以上いることが望ましいと考えられ、令和3年度の介護報酬改定を支持する結果であった。
カミサリー/CK(C/C)システム、新調理システムに関するヒアリング対象施設では、CKで複数の調理システムを組み合わせたハイブリット方式で効率化を図っていた。システムに合ったメニュー研究や作業の標準化など、ソフト面の充実や工夫も重要であることが示された。
レディフードシステム(RF)による調理物の栄養的評価として、クックフリーズの揚げ魚、冷凍魚使用の魚料理(クックサーブとクックチルで調理した2種類の魚料理)の栄養成分分析を行い、魚料理に関して、栄養成分値は調理システムの影響は少ないが、冷凍食材の影響を受ける場合があることが明らかになった。栄養管理上の留意点として周知する必要がある。
結論
介護老人保健施設の給食運営における最も重要な課題として、①栄養・食事管理のIT化(システム連携)、②人的資源の確保が挙げられた。地域包括ケアシステムによるサービス提供に向けて、施設対施設、施設対在宅間で情報共有ができる体制づくりは必須であり、用語の整理、情報の標準化が重要である。また、持続可能な給食運営に必要な調理従事者の確保のためには、調理師養成において医療・福祉現場での専門家の必要性や労働価値に関する教育が求められる。
公開日・更新日
公開日
2022-03-25
更新日
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