文献情報
文献番号
202009010A
報告書区分
総括
研究課題名
健康日本21(第二次)の総合的評価と次期健康づくり運動に向けた研究
課題番号
19FA2001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
辻 一郎(東北大学 大学院医学系研究科 公衆衛生学専攻)
研究分担者(所属機関)
- 相田 潤(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
- 岡村 智教(慶應義塾大学 医学部 衛生学公衆衛生学教室)
- 近藤 克則(千葉大学 予防医学センター)
- 近藤 尚己(京都大学 大学院医学系研究科)
- 田淵 貴大(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター)
- 津下 一代(丹羽 一代)(女子栄養大学 栄養学部)
- 橋本 修二(藤田医科大学 医学部衛生学講座)
- 村上 義孝(東邦大学 医学部 社会医学講座医療統計学分野)
- 村山 伸子(新潟県立大学 人間生活学部)
- 西 大輔(東京大学 大学院医学系研究科 精神保健学分野)
- 横山 徹爾(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
15,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
第1に、健康日本21(第二次)の進捗状況を評価し、各指標の地域格差や達成・未達成の要因を分析すること。第2に、健康寿命の延伸可能性を定量的に示すこと。そのために、健康寿命の延伸・短縮に関わる要因や格差の要因を分析し、生活習慣改善などによる健康寿命延伸効果の予測法を構築する。第3に、次期国民健康づくり運動策定に向けての提言を行うこと。そのため、健康寿命の延伸及び地域格差の縮小に向けて国と自治体が取り組むべき健康増進施策を示すとともに、次期国民健康づくり運動で盛り込むべき健康課題とその目標値・健康指標を提案する。以上の目的を達成し、健康日本21(第二次)の最終評価と次期国民健康づくり運動の策定を学術面からサポートすることを目指す。これにより、国民における健康寿命のさらなる延伸と健康格差の縮小に資するものである。
研究方法
健康日本21(第二次)の進捗評価及び各指標の格差要因に関する研究=各種の統計データや研究データを用いて、健康日本21(第二次)の目標指標について達成状況を評価し、地域格差の要因を分析する。保健事業等実施状況と健康指標・医療費等との関連に関する研究=全国都道府県の第二次計画における目標設定の状況と保健事業や健康指標等との関連を調査する。健康寿命の延伸可能性に関する研究=国民生活基礎調査などの統計データ、コホート研究データ(大崎コホート2006、NIPPON DATA)などを用いて、健康寿命の地域格差の要因を検討し、健康寿命の延伸・短縮要因(生活習慣・社会経済要因・健診成績等)の影響を解明する。健康寿命延伸効果の予測法を構築する。次期国民健康づくり運動策定に向けての提言に関する研究=次期国民健康づくり運動で盛り込むべき目標項目を選定し、目標項目間の相互関係・階層性、さらに目標達成に向けた戦略を提言する。すべての研究は「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を遵守しており、所属施設の倫理委員会の承認を受けている。
結果と考察
健康日本21(第二次)の進捗評価及び各指標の格差要因に関する研究=無歯顎者の社会経済的不平等の日英格差は歯科医療の公的保険への適用範囲の違いと関連があった。社会参加や社会的孤立、建造環境(周囲の緑地や学校環境など)が高齢者の健康レベルに関連があった。近年、加熱式タバコの受動喫煙の曝露経験割合が増加している。食環境整備制度(ヘルシーメニューの提供に取り組む店舗の登録の実態)の実態と関連要因が明らかになった。悩み・ストレスや相談に関する地域格差とその関連要因が明らかとなった。今後さらに多くの健康指標について地域格差の要因を解明するとともに、2021年度には健康格差の縮小に向けた提言を検討する保健事業等実施状況と健康指標・医療費等との関連に関する研究=都道府県計画における糖尿病分野の目標設定の状況を見ると、国の目標とは指標構造が異なるところが12都県であった。透析新規導入の減少については、目標設定との関連は見られなかった。健康寿命の延伸可能性に関する研究=健康寿命の延伸可能性に関する評価手法を確立した。社会参加している者ほど健康寿命が長く、参加していない者と3つ全てに参加している者との間で健康寿命に約5年の格差があった。正常血圧・非喫煙・糖尿病なし・過体重(男性)、肥満(女性)群とⅡ・Ⅲ度高血圧・喫煙・糖尿病あり・やせ群との間で、健康寿命には男性11.98歳、女性15.07歳の差があった。健康寿命の都道府県格差の要因(こころの状態・悩み・ストレス、睡眠時間、健康のために実行している事柄、検診・健診受診率)を解明した。次期国民健康づくり運動策定に向けての提言に関する研究=10領域(身体活動・運動、栄養・食生活、喫煙、飲酒、歯・口腔、高齢者の健康、循環器疾患、こころの健康、糖尿病、がん)で、主目標59項目、副目標39項目、開発中の目標48項目、研究途上の目標18項目を提案した。さらに、目標項目の詳細(データの情報源、評価レベル、第二次との関係など)に関する目標提案シート、目標項目間の相互関係・階層性に関するロジックモデルを作成した。
結論
本研究課題は当初の計画通り順調に進捗し、2年目の研究計画が概ね達成されたと考えられる。本研究事業での成果は、国際的学術誌に多く掲載されるなど、学術面の価値も高かった。さらに、「次期国民健康づくり運動策定に向けての提言に関する研究」に関する班会議には厚生労働省の行政官も多数出席して議論に参加していただくなど、行政上の価値も十分に高かったと思われる。来年度は本研究班の最終年度となるので、計画通りに研究事業を進捗させ、国民における健康寿命のさらなる延伸と健康格差の縮小に資するものである。
公開日・更新日
公開日
2023-03-27
更新日
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