文献情報
文献番号
202009006A
報告書区分
総括
研究課題名
地域における循環器疾患発症及び重症化予防に対する取組の推進のための研究
課題番号
H30-循環器等-一般-005
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
宮本 恵宏(国立研究開発法人国立循環器病研究センター オープンイノベーションセンター)
研究分担者(所属機関)
- 豊田 一則(国立循環器病研究センター 脳血管内科)
- 泉 知里(国立循環器病研究センター 心臓血管内科)
- 岡村 智教(慶應義塾大学 医学部 衛生学公衆衛生学教室)
- 西 信雄(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 国際栄養情報センター)
- 由田 克士(大阪市立大学大学院 生活科学研究科 食・健康科学講座)
- 山岸 良匡(国立大学法人筑波大学 医学医療系 社会健康医学)
- 尾形 宗士郎(国立循環器病研究センター 予防医学・疫学情報部)
- 小久保 喜弘(国立循環器病センター 健診部)
- 中尾 葉子(国立循環器病研究センター OIC 循環器病統合情報センター レジストリ推進室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
7,616,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関移動
分担研究者 尾形宗士郎
藤田医科大学(平成30年9月1日~令和2年4月30日)→ 国立循環器病研究センター(令和2年5月1日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国では、高齢化に伴い脳卒中と心臓病による死亡数が増加し、65歳以上の高齢者では悪性新生物に肩を並べ、75歳以上の後期高齢者では上回っている。脳卒中と心臓病は介護の主たる原因の4分の1を占め、また総医療費の20%を費やしている。超高齢社会に向けた医療を考えるとき、脳卒中と心臓病対策は緊急に取り組まなければならない最も重要な課題である。本研究では、脳卒中と心臓病のリスク評価や保健指導に十分な実績のある研究者でチームを作り、循環器疾患のリスク・病態を最新のエビデンスやコホートデータを用いて評価し、科学的な知見に基づいて循環器疾患が重症化しやすい高い未受診者・ 受診中断者について、関係機関からの適切な受診勧奨を行うことによって治療に結びつけるとともに、循環器疾患で通院する患者のうち重症化するリスクの高い者に対して主治医の判断により保健指導対象者を選定し、心不全、脳卒中への移行を防止することを目的とするプログラムを作成する。
研究方法
脳卒中と心不全の発症予防及び重症化予防プログラムを作成するため以下の過程を実施した。まず、心不全および脳卒中の発症及び重症化リスクの検証を、CIRCS研究にて行った。また、吹田研究にて高血圧の心不全発症リスクを明らかにし、脳卒中と心筋梗塞のリスク予測スコアを作成した。さらに、循環器疾患のリスクの推移が心筋梗塞死亡に与えた影響について分析した。そして、脳卒中および心不全の発症の重要なリスクとなる高血圧と塩分摂取、カリウム摂取と肥満との関連を分析した。そして、プログラムに基づく心不全重症化予防のための新しい保健指導を自治体との共同事業として開始した。また、急性冠症候群および急性心不全の発症率を推定し、心不全と脳卒中の発症および重症化リスク予防のプログラムのPDCAで活用できるシミュレーションモデルを開発した。
結果と考察
住民コホート研究で、血圧、血清総コレステロール、BMI、飲酒、喫煙、糖尿病における潜在性心不全の多変量調整オッズ比は、BMIが21-22.9kg/m2の群に対する27 kg/m2以上の群の多変量調整オッズ比は5.21 (2.53-10.7)、非喫煙群に対する20本/日以上喫煙群では2.85 (1.13-7.15)、正常に対する糖尿病では5.01 (2.09-12.0)であった。また至適血圧群に対するⅡ-Ⅲ度高血圧群は2.36 (0.91-6.13)、降圧薬服薬治療群では1.90 (0.86-4.22)であった。リスク因子の個数に関しては、リスク因子が0個の群に対する2個または3個の群の多変量調整オッズ比は5.45 (2.52-11.8)であった。血清総コレステロール値および飲酒と潜在性心不全に関連は認めなかった。また、Na/K比のカットオフ値と食習慣等の関連をみると、Na/K比の低い群において望ましい習慣を有する者の割合が高い傾向が認められた。Simulateによると対象者のうち50%が生活習慣改善に参加した場合、CHDハイリスク割合は効果的に減少(10-30%程度)し、CHD発症割合は4%減少した。
我が国における心不全入院数および心不全入院中の死亡率は、年々増加の一途をたどっており 、日本医療データセンターの2009〜2010年のデータによると、我が国の心不全症例は390万人と推定され、日本循環器学会の平成26年度診療実態調査(JROAD)では年間に23万人ののべ入院が報告されている。また、脳卒中の患者数は現在米国の約2倍といわれており、平成26年度の脳血管疾患の医療費は1兆7,821億円で 、その8割は65歳以上の高齢者に費やされている。高齢者人口の増加や生活習慣病の増加により、心不全および脳卒中患者は急激に増加すると予想されている。CIRCS研究による潜在的心不全のリスク因子の分析より、血圧や喫煙、糖尿病など、従来のリスク因子が重要であることが明らかとなった。また、血圧や血管の動脈硬化とNa/Kが関連し、栄養指導が効果的である可能性が示唆された。心不全と脳卒中の発症および重症化リスク予防のプログラムで活用できるシミュレーションモデル、急性冠症候群および急性心不全の発症率を推定したが、これらは今後の予防プログラムの有用なツールとなる。
我が国における心不全入院数および心不全入院中の死亡率は、年々増加の一途をたどっており 、日本医療データセンターの2009〜2010年のデータによると、我が国の心不全症例は390万人と推定され、日本循環器学会の平成26年度診療実態調査(JROAD)では年間に23万人ののべ入院が報告されている。また、脳卒中の患者数は現在米国の約2倍といわれており、平成26年度の脳血管疾患の医療費は1兆7,821億円で 、その8割は65歳以上の高齢者に費やされている。高齢者人口の増加や生活習慣病の増加により、心不全および脳卒中患者は急激に増加すると予想されている。CIRCS研究による潜在的心不全のリスク因子の分析より、血圧や喫煙、糖尿病など、従来のリスク因子が重要であることが明らかとなった。また、血圧や血管の動脈硬化とNa/Kが関連し、栄養指導が効果的である可能性が示唆された。心不全と脳卒中の発症および重症化リスク予防のプログラムで活用できるシミュレーションモデル、急性冠症候群および急性心不全の発症率を推定したが、これらは今後の予防プログラムの有用なツールとなる。
結論
心不全と脳卒中の発症と重症化リスクを軽減させるスクリーニング項目と判定基準を提示し、その介入プログラムを作成することは、社会の重要な役割を担うこととなる高齢者の健康寿命延長および早期介入による循環器疾患の予防により、保健事業を運営する保険者および事業主・自治体などの予算(財政)の最適化に資すると考えられる。本事業により開始された心不全重症化予防のための自治体との共同事業との成果が期待される。
公開日・更新日
公開日
2022-04-12
更新日
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