文献情報
文献番号
202009005A
報告書区分
総括
研究課題名
社会経済格差による生活習慣課題への対応方策立案に向けた社会福祉・疫学的研究
課題番号
H30-循環器等-一般-004
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 克則(国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター 老年学評価研究部)
研究分担者(所属機関)
- 斉藤 雅茂(日本福祉大学 社会福祉学部)
- 佐々木 一郎(同志社大学商学部)
- 小嶋 雅代(国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター フレイル研究部)
- 山口 知香枝(名古屋市立大学 大学院看護学研究科)
- 辻 大士(筑波大学 体育系)
- 細川 陸也(京都大学大学院 医学研究科)
- 安福 祐一(千葉大学 予防医学センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
11,530,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
今年度2020(令和2)年度の本研究では、a)神戸市の20歳以上の者を対象に、社会経済格差による生活習慣課題への対応方策立案に向けた手がかりを得ること、b)神戸市が取り組んだ高齢者における健康格差の縮小を目指した地域介入の効果を検証すること、c)全国の高齢者の既存データを活用し社会経済格差による健康格差への対応方策立案に向けた手がかりを得ることを目的とした。
研究方法
以下の3つの方法で研究を進めた。
a)神戸市データを用いた観察研究:20-64歳の壮年期自記式郵送調査(5,630)、および65歳以上の要介護認定を受けていない者(11,508人)を対象とした2つのデータを用いて、市内の地域間や女性の就業状況別の健康格差や、壮年期の職域のソーシャル・キャピタルやサードプレイスなどに着目した分析を行った。
b)神戸市における地域介入研究:神戸市と共に2014年度から取り組んできた、地域診断によって要介護リスクを抱える高齢者が多い地域を選定した上で、住民主体の通いの場を増やすなどの地域づくりを重点的に推進する事業を導入した。その後の社会参加と健康指標の変化を個人と地域の両レベルで評価した。個人レベルの評価では、重点支援対象3地域で2016~2019年度に毎年実施した4度の悉皆郵送調査データを分析した。地域レベルの評価では、市が重点的な支援を行うモデル地区として設定した16圏域と、それ以外の非モデル地区62圏域との間で、計18指標の2011、13、16、19年度調査の経年推移を比較した。
c)全国の高齢者データを用いた研究:既存データとして、日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study,JAGES)の横断・縦断データを活用し、社会経済格差による健康格差への対応方策立案に向けた分析を行った。
a)神戸市データを用いた観察研究:20-64歳の壮年期自記式郵送調査(5,630)、および65歳以上の要介護認定を受けていない者(11,508人)を対象とした2つのデータを用いて、市内の地域間や女性の就業状況別の健康格差や、壮年期の職域のソーシャル・キャピタルやサードプレイスなどに着目した分析を行った。
b)神戸市における地域介入研究:神戸市と共に2014年度から取り組んできた、地域診断によって要介護リスクを抱える高齢者が多い地域を選定した上で、住民主体の通いの場を増やすなどの地域づくりを重点的に推進する事業を導入した。その後の社会参加と健康指標の変化を個人と地域の両レベルで評価した。個人レベルの評価では、重点支援対象3地域で2016~2019年度に毎年実施した4度の悉皆郵送調査データを分析した。地域レベルの評価では、市が重点的な支援を行うモデル地区として設定した16圏域と、それ以外の非モデル地区62圏域との間で、計18指標の2011、13、16、19年度調査の経年推移を比較した。
c)全国の高齢者データを用いた研究:既存データとして、日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study,JAGES)の横断・縦断データを活用し、社会経済格差による健康格差への対応方策立案に向けた分析を行った。
結果と考察
社会経済格差による生活習慣課題への対応方策立案に向けて、
a)神戸市データを用いた観察研究からは、1)低所得層に限らず、職域のソーシャル・キャピタル、女性の就業状況、地域など、多面的に社会経済格差を捉えて対策を考える必要性、2)ライフコースの視点の重要性、3)壮年期においては、職域のソーシャル・キャピタルやサードプレイスに着目したアプローチがあり得ることが示唆された。
b)神戸市における地域介入研究からは、計18指標の健康指標のうち、5指標で統計学的にも有意な健康格差の縮小が見られた。健康格差への対応方策の立案と評価における示唆としては、個人に着目したアプローチや評価だけでなく、地域や集団を対象にしたアプローチや評価の重要性であること、健康格差の縮小には、腰を据えた粘り強い取り組みと長期的で計画的なデータ収集と評価が必要であることが示された。
c)全国の高齢者データを用いた研究からは29編の原著論文に加え、公民館・市民館(16.1%が利用)以外にも、公園(17.7%),民間カラオケ施設なども、「通いの場」となりうることなどが明らかとなった。
a)神戸市データを用いた観察研究からは、1)低所得層に限らず、職域のソーシャル・キャピタル、女性の就業状況、地域など、多面的に社会経済格差を捉えて対策を考える必要性、2)ライフコースの視点の重要性、3)壮年期においては、職域のソーシャル・キャピタルやサードプレイスに着目したアプローチがあり得ることが示唆された。
b)神戸市における地域介入研究からは、計18指標の健康指標のうち、5指標で統計学的にも有意な健康格差の縮小が見られた。健康格差への対応方策の立案と評価における示唆としては、個人に着目したアプローチや評価だけでなく、地域や集団を対象にしたアプローチや評価の重要性であること、健康格差の縮小には、腰を据えた粘り強い取り組みと長期的で計画的なデータ収集と評価が必要であることが示された。
c)全国の高齢者データを用いた研究からは29編の原著論文に加え、公民館・市民館(16.1%が利用)以外にも、公園(17.7%),民間カラオケ施設なども、「通いの場」となりうることなどが明らかとなった。
結論
社会経済格差による健康格差への対応方策立案に向けて、以上のような手がかりを得て、神戸市における地域介入研究の結果、健康格差の縮小策の効果を検証できた。
公開日・更新日
公開日
2022-05-16
更新日
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