文献情報
文献番号
200736008A
報告書区分
総括
研究課題名
環境ナノ粒子の動脈硬化促進メカニズムの解明
課題番号
H17-化学-一般-008
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
岩井 直温(国立循環器病センター研究所疫学部)
研究分担者(所属機関)
- 丹羽 保晴(国立循環器病センター研究所疫学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
13,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
1. ナノ粒子投与による生体内分布の解明及び生理機能への影響調査を行う。
2. 各臓器・組織障害を形態学的・生化学的・生理的に明らかにし、モデル動物でナノ粒子の経気道曝露が心血管系疾患を増悪させるメカニズムを解明する。
2. 各臓器・組織障害を形態学的・生化学的・生理的に明らかにし、モデル動物でナノ粒子の経気道曝露が心血管系疾患を増悪させるメカニズムを解明する。
研究方法
1. 蛍光ナノ粒子である,Quantum dot (Q-dot) (11.2 nmol/ml、粒子径: 20 nm)をラット気管内へ投与し、 6時間後にラットの脳、腎臓、脾臓を摘出し、臓器を固定後、パラフィン切片を作製し、Q-dotを蛍光顕微鏡下で観察した。
2. 動脈硬化発症モデルマウス;LDL receptor knockout mouseにカーボンブラック(CB)を長期間投与し、動脈硬化進展との関連性をCB処置後のHUVECの遺伝子発現プロファイリングと比較検討し、動脈硬化症の発症メカニズムを解明する。
2. 動脈硬化発症モデルマウス;LDL receptor knockout mouseにカーボンブラック(CB)を長期間投与し、動脈硬化進展との関連性をCB処置後のHUVECの遺伝子発現プロファイリングと比較検討し、動脈硬化症の発症メカニズムを解明する。
結果と考察
1. 今回の実験から、ナノ粒子の体内動態が想像以上に早く、ナノ粒子投与後6時間以内にそのほとんどが体外へ排泄されるものと考えられた。体内侵入の可否は、ナノ粒子の物理化学的性状と、ナノ粒子を取り込む細胞の機能(エンドサイトーシス、ファゴサイトーシス、ピノサイトーシス)に依存することが推察できた。
2. ラット、マウス曝露実験の条件は、平均粒子径サイズが116.4nmのCBを曝露した。ナノサイズのCBは肺胞を通過し循環血中へ侵入し、直接細胞や臓器障害を引き起こす可能性は低いと考えられた。メカニズムをインフォーマティクス的に考察すると、細胞(HUVEC)や個体(LDLR/KO mouse)レベルでの遺伝子発現パターンとそこから予測される蛋白質レベルの時空間的機能分類から、細胞増殖、炎症反応のマスター遺伝子、FOS, NFkBや細胞接着、炎症マーカー遺伝子、ICAM-1, CXCL2, CCL2がCB曝露により上昇した。従って、CB曝露による動脈硬化発症メカニズムはこれらの遺伝子群の発現上昇が病態発症へ繋がると考察した。
2. ラット、マウス曝露実験の条件は、平均粒子径サイズが116.4nmのCBを曝露した。ナノサイズのCBは肺胞を通過し循環血中へ侵入し、直接細胞や臓器障害を引き起こす可能性は低いと考えられた。メカニズムをインフォーマティクス的に考察すると、細胞(HUVEC)や個体(LDLR/KO mouse)レベルでの遺伝子発現パターンとそこから予測される蛋白質レベルの時空間的機能分類から、細胞増殖、炎症反応のマスター遺伝子、FOS, NFkBや細胞接着、炎症マーカー遺伝子、ICAM-1, CXCL2, CCL2がCB曝露により上昇した。従って、CB曝露による動脈硬化発症メカニズムはこれらの遺伝子群の発現上昇が病態発症へ繋がると考察した。
結論
大気中微粒子による曝露で心血管病の発症が増加する原因は、肺組織の炎症反応に起因し、それに引き続く血管内皮細胞障害から動脈硬化へと進展すると考えられる。
新しいナノ粒子の開発、応用に際しては、充分に生体レベルでの影響を精査する必要がある。また、既存の多くの環境因子は、低濃度で長期間の影響下ではじめて生体に影響を及ぼす可能性が考えられるため、例え、急性曝露実験で毒性が無いと評価され実用化、市場に流通されたとしても継続してその後の長期的な影響観察調査が必要不可欠と考える次第である。
新しいナノ粒子の開発、応用に際しては、充分に生体レベルでの影響を精査する必要がある。また、既存の多くの環境因子は、低濃度で長期間の影響下ではじめて生体に影響を及ぼす可能性が考えられるため、例え、急性曝露実験で毒性が無いと評価され実用化、市場に流通されたとしても継続してその後の長期的な影響観察調査が必要不可欠と考える次第である。
公開日・更新日
公開日
2008-03-31
更新日
-