患者・家族の意思決定能力に応じた適切な意思決定支援の実践に資する簡便で効果的な支援プログラムの開発に関する研究

文献情報

文献番号
202008039A
報告書区分
総括
研究課題名
患者・家族の意思決定能力に応じた適切な意思決定支援の実践に資する簡便で効果的な支援プログラムの開発に関する研究
課題番号
20EA1011
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
小川 朝生(国立研究開発法人国立がん研究センター 先端医療開発センター精神腫瘍学開発分野)
研究分担者(所属機関)
  • 長島 文夫(杏林大学 医学部内科学腫瘍科)
  • 濱口 哲弥(埼玉医科大学 医学部)
  • 海堀 昌樹(関西医科大学 外科学講座)
  • 平井 啓(大阪大学大学院 人間科学研究科)
  • 渡邉 眞理(横浜市立大学 医学部 看護学科)
  • 稲葉 一人(中京大学 法務総合教育研究機構)
  • 松井 礼子(国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院 薬剤部)
  • 五十嵐 隆志(国立がん研究センター東病院 薬剤部)
  • 奥山 絢子(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターがん登録センター院内がん登録分析室)
  • 水谷 友紀(杏林大学医学部 総合医療学)
  • 中山 健夫(京都大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
9,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、治療方針決定や療養場所の選定などの重要な意思決定場面において、意思決定能力に基づく適切な支援の提供を、がん診療連携拠点病院において実現するための介入プログラムを開発し検証すると共に、その普及を図ることである。
研究方法
1. 看護師、相談員を対象とした意思決定支援教育プログラムの開発
本年度は「高齢者のがん医療の質の向上に資する簡便で効果的な意思決定支援プログラムの開発に関する研究」(平成29年度~令和元年度)で得た知見を基に作成した教育プログラム案を実施した。
2. オンラインによる多職種向けの研修の試行
医療従事者を対象に,意思決定支援に関する制度や考え方,認知・身体・アセスメント方法の理解と獲得を目的とした研修プログラムを実施し,その効果を検討した。
スライドを使用した講義と演習(個人・グループ)から構成し,約4時間の研修プログラム(全編オンライン)として実施した。
3. 適切な意思決定支援の実践に資する簡便で効果的な支援プログラムの開発
実態調査ならびに教育プログラムの試行を踏まえ、教育プログラムの修正ならびに、施設向けの支援プログラムの構成を検討した。
4.高齢がん患者における治療に伴う負担の検討
がん診療連携拠点病院等を中心とするがん診療病院の院内がん登録とDPC導入の影響評価に係る調査データを用いて、高齢のがん患者における治療負担を検討した。
5. 日常診療で使用する場合に推奨されるGAツールの選定
どのGAツールが日本のがん診療現場で正しく利用できるのか、どのGAツールを用いるべきなのかについて意思決定支援をする前段階の情報の整理することを目的として、日常診療で使用する際に推奨されるGAツールを策定した。
結果と考察
1. 看護師、相談員を対象とした意思決定支援教育プログラムの開発
高齢がん患者の意思決定を支援している看護師(その内,専門看護師・認定看護師85%)の傾向として、高齢がん患者の意思決定支援の指針となる「認知症の人の日常生活・社愛生活における意思決定支援ガイドライン」を知っているが、その活用は限定的であることが明らかとなった。
2. オンラインによる多職種向けの研修の試行
研修プログラムの一定の効果は確認された。過年度までに実施した対面式のプログラムに比べ,知識項目については変化する項目が少なく,効力感項目での変化は多数見られた。オンラインでの研修となり,システムや形態に慣れたころに展開したスキルやグループワークなどが,効力感向上に影響を及ぼしていることが考えられる。
3. 適切な意思決定支援の実践に資する簡便で効果的な支援プログラムの開発
高齢がん患者の意思決定支援の現状を質的に検討し、その結果から、わが国の意思決定支援の質の向上に資する支援技術の開発を行った。
4.高齢がん患者における治療に伴う負担の検討
がん診療連携拠点病院を中心とするがん診療病院431施設のリアルワールドデータを用いて、胃癌、大腸癌、膵臓癌における治療に伴うADL等への影響について明らかにした。
5. 日常診療で使用する場合に推奨されるGAツールの選定
修正Delphi法を用いたエキスパートコンセンサスにより推奨をまとめた。
日常診療で最低限行うべきGAツールとしては、従来のPS(Performance Status)に加えて、CCI(Charlson Comorbidity Index;併存症)、処方薬リスト、独居の有無と介護者の有無、そしてG8(スクリーニングツール)による評価を推奨することとなった。
結論
高齢がん患者を中心に、がん医療における意思決定支援の現状を質的量的に検討し、その結果から、わが国の意思決定支援の質の向上を目指して教育プログラム、支援プログラムの開発、意思決定支援に資する情報の収集・解析を進めた。その結果、わが国のがん治療の中核をなくがん診療連携拠点病院において、高齢者においてもがん治療は実施されていること、高齢者の場合10%以上にADLの低下が併存しつつ治療を行っていること、術後の補助化学療法の実施頻度が低くなることなど癌種ごとの実態が明らかとなった。これらの情報は、治療開始前の時点で、治療後の経過について予め十分に検討し、本人の価値観に沿う治療かを検討し、本人の希望に沿う治療を提供する上で重要である。
今後がん診療連携拠点病院での意思決定支援の質の向上を目的に、意思決定支援の教育プログラムを修正し、あわせて支援プログラムの実施可能性を検討する予定である。

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202008039Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,000,000円
(2)補助金確定額
12,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 693,448円
人件費・謝金 5,398,315円
旅費 32,080円
その他 3,107,815円
間接経費 2,769,000円
合計 12,000,658円

備考

備考
支出額には自己資金658円を含む。

公開日・更新日

公開日
2021-11-17
更新日
-