がん患者の家族・遺族に対する効果的な精神心理的支援法の開発研究

文献情報

文献番号
202008023A
報告書区分
総括
研究課題名
がん患者の家族・遺族に対する効果的な精神心理的支援法の開発研究
課題番号
19EA1013
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
明智 龍男(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 藤森 麻衣子(国立がん研究センター社会と健康研究センターコホート連携研究部)
  • 久保田 陽介(名古屋市立大学大学院医学研究科)
  • 加藤 雅志(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策情報センター がん医療支援部)
  • 浅井 真理子(帝京平成大学大学院 臨床心理学研究科)
  • 宮下 光令(東北大学 大学院医学系研究科保健学専攻緩和ケア看護学分野)
  • 山岸 暁美(慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室)
  • 鈴木 伸一(早稲田大学人間科学学術院)
  • 石田 真弓(埼玉医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
6,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、がん医療のより一層の充実を推進するために、がん患者・家族に対する効果的な精神心理的支援法を開発する。
研究方法
【研究Ⅰ:系統的レビューの実施と家族・遺族および医療従事者向け支援ガイドの作成】
(1年目)Mindsガイドライン作成マニュアルに基づき、エビデンスの抽出・整理を行う。
(2年目)がん患者・遺族を含めた専門家パネルを設け、インタビューを実施し、質的な解析・コンセンサス形成法により、一般医療従事者の遺族支援のあり方等に資する原案を作成する。
(3年目)遺族および一般医療従事者に向けたガイドブック、リーフレット等を作成する。作成された資材活用に関する研修会を開催し、普及をはかる。遺族ケアガイドラインを作成する。

【研究Ⅱ:つらさを抱える遺族に適切なこころのケアを届けるための体制構築】
(1-2年目)研究分担者が実施した多施設遺族調査を解析する。家族・遺族の精神心理的負担の代表である抑うつ(PHQ-9)と複雑性悲嘆(Brief Grief Questionnaire)のハイリスク群を同定する。
(2-3年目)同定されたリスク要因を活用した抑うつ等のスクリーニング法を開発する。地域の訪問看護師やケアマネージャーを含めた専門家パネルを設け、研究Iで設けた専門家パネルとともに、拠点病院、地域や精神保健の専門機関が連携を強化するための国内モデルの提案を行う。この際、遺族のアクセシビリティを高めるために、ホームページの開設を行う。

【研究Ⅲ:こころの病気予防および回復プログラムの開発】
・こころの病気予防プログラム
(1年目)行動活性化療法をがん患者遺族のうつ病予防に応用する。あわせて遺族に適したスマートフォンを用いた行動活性化療法を開発する。
(2〜3年目)がん患者遺族を対象にうつ病予防をアウトカムに、前後比較試験を行う。研究IIで構築されたホームページを利用し、研究Iで作成したガイドブック、リーフレットなどを掲載するとともに、ホームぺージを通してスマートフォンを用いた行動科活性化を提供できるような仕組みを構築する。

・こころの病気回復プログラム
(1年目)「遺族外来」を受診したがん患者遺族を対象に、心理教育を中心とした3回構成のプログラムを実施した結果を解析する。
(2〜3年目)無作為割付比較試験を行い、介入のうつ病に対する有用性を検討する。
結果と考察
令和2年度は、研究Ⅰとして、ガイドライン作成を継続した。遺族の精神心理的苦痛のケアに関する臨床疑問(CQ)が設定され、SCOPEとともに外部評価を受けた。CQに基づき、系統的レビューを実施中である。国内外の参考資料を収集するとともに、多職種の意見も踏まえ、がん患者の遺族支援に必要な方向性をまとめた。収集した国内外のパンフレットを参考にして支援ガイドを作成した。研修会開催のための構成及び内容案について作成した。一般病棟、緩和ケア病棟、在宅診療に勤務する一般医療従事者を対象にアンケート調査を実施した。収集したこれらの情報を統合し、エビデンスかつ医療現場の実態に対応した遺族ケアの方法を検討し、教育プログラムの開発を実施している。
研究Ⅱとして、家族・遺族の抑うつと複雑性悲嘆のハイリスク群の同定を目的に、人口統計学的要因等を統合的に解析し、簡便なリスク要因を同定し、多変量ロジスティック回帰分析に基づき、スコアリングモデルを作成した。遺族ケア・グリーフケアの実践団体、人材育成に携わる団体、遺族ケア・グリーフケアの学識者等31名を対象にインタビュー調査を実施し、コミュニティベースの遺族ケア・グリーフケアの実態を把握し、今後の当該ケア提供体制構築および実装に資する基礎的な知見を得た。保健所等を中心とするモデルなどを念頭に調査、検討を行う予定だったが、新型コロナウイルスの蔓延のために研究が実施できなかった。がん患者の遺族が、自ら入力することで精神心理的負担のスクリーニング(PHQ-9)が実施可能なホームページの開設・運用を開始した(https://grief-care.info/)。
研究Ⅲとして、遺族のうつ病予防を目的とした行動活性化療法の有用性を検証するための研究を開始した。また、遺族外来を受診した患者を対象とした心理教育を中心とした支援プログラムの有用性を検討するパイロット研究を実施し、支援プログラムの有用性を検証する無作為割付比較試験の実施計画を作成した。
本研究で得られた知見は、がん医療の質の向上のみならず、5大疾病の一つとして位置付けられている精神疾患対策にもなり、ひいては、がん患者の家族としてわが国で生活する多くの国民の生活の質改善に寄与することが期待される。
結論
研究を継続し、知見を重ね、がん患者・家族に対する効果的な精神心理的支援法を開発する。

公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202008023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,775,000円
(2)補助金確定額
8,281,000円
差引額 [(1)-(2)]
494,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,132,837円
人件費・謝金 1,343,144円
旅費 0円
その他 2,780,019円
間接経費 2,025,000円
合計 8,281,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-12-07
更新日
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