タンパク質及び核酸含有製剤の高感度安定性評価法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200735046A
報告書区分
総括
研究課題名
タンパク質及び核酸含有製剤の高感度安定性評価法の確立に関する研究
課題番号
H19-医薬-一般-009
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
吉岡 澄江(国立医薬品食品衛生研究所 薬品部第二室)
研究分担者(所属機関)
  • 米谷芳枝(星薬科大学 医薬品化学研究所 創剤構築研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品の分解にともなうナノワットレベルの極微小な熱を検出することや、分解に必要な分子の運動を固体高分解能NMRや誘電緩和スペクトルなどによって高感度に検出することによって、保存安定性と関連する医薬品の物理化学的な特性を明らかにし、熱力学的に不安定なタンパク質や核酸などの高分子医薬に対し、高度な製剤学的工夫を施すことにより安定化した製剤に対しても適用可能な安定性予測法を開発することを目的とする。
研究方法
β-ガラクトシダーゼ凍結乾燥製剤の凝集速度、構造緩和時間やNMR緩和時間に反映される分子運動性を明らかにすることにより、凝集速度を支配する分子運動性のスケールを考察した。また、遺伝子導入ナノ粒子およびリポソーム製剤のin vitroおよびin vivoにおける遺伝子導入効率に及ぼす糖の影響を明らかにし、保存安定性に優れた非ウイルス性遺伝子導入製剤の製剤設計に関する基礎的検討を行った。
結果と考察
β-ガラクトシダーゼ凍結乾燥製剤の凝集速度はスクロース<トレハロース<スタキオースの順に大きかった。また、構造緩和時間で表されるスケールの大きな分子運動性はスクロース>トレハロース>スタキオースの順に高く、T1ρに反映されるスケールの小さな運動性スクロース<トレハロース<スタキオースの順に高かった。β-ガラクトシダーゼの凍結乾燥製剤の凝集速度は構造緩和を引き起こす分子運動性よりも、T1ρに反映されるスケールの小さな運動性と密接に関連していることがわかった。ナノ粒子/DNA複合体のPC-3細胞などに対する遺伝子導入効率はスクロースが共存すると高まり、マルトース、トレハロース、ラクトースを添加すると遺伝子発現の低下が見られた。マウス気管内に投与したリポソーム/DNA複合体凍結乾燥製剤は肺での十分な遺伝子発現がみられなかった。
結論
β-ガラクトシダーゼ凍結乾燥製剤や遺伝子導入リポソーム凍結乾燥製剤の保存安定性はスクロースよって著しく改善され、その作用は、タンパク質やDNA分子のスケールの小さな分子運動性を抑制する作用に起因することを明らかにした。また、遺伝子導入ナノ粒子製剤やリポソーム製剤のin vitroにおける遺伝子導入効率は共存する糖の影響を大きくうけること、さらに、in vivoにおける活性発現には、リポソーム/DNA複合体のサイズの制御が重要であることを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2010-05-24
更新日
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