文献情報
文献番号
202007017A
報告書区分
総括
研究課題名
わが国における父親の子育て支援を推進するための科学的根拠の提示と支援プログラムの提案に関する研究
課題番号
20DA1002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
竹原 健二(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 研究所 政策科学研究部 研究開発研究室)
研究分担者(所属機関)
- 小崎 恭弘(大阪教育大学 健康安全教育系教育学部教員養成課程家政教育部門)
- 立花 良之(国立研究開発法人国立成育医療研究センター こころの診療部乳幼児メンタルヘルス診療科)
- 髙木 悦子(帝京科学大学 医療科学部看護学科)
- 可知 悠子(北里大学 医学部)
- 加藤 承彦(国立成育医療研究センター 社会医学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
17,679,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者 髙木悦子
日本保健医療大学 保健医療学部看護学科(2020年4月1日~2020年9月30日)→帝京科学大学 医療科学部看護学科(2020年10月1日~2021年3月31日)
研究報告書(概要版)
概要版(繰越課題)
研究目的:わが国では、妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援を提供する仕組みの全国展開が進められ、その支援の対象に父親も含められた。自治体は父親支援の必要性を認めているが、計画・実施段階で困難を抱えており、父親支援のモデルの開発や効果の検証、普及支援が課題とされている。本研究では、わが国の父親の健康状態や生活の実態の解明、地域における父親支援の方法や評価について情報の整理と発信に取り組み、父親支援の活性化に向けて様々な調査・研究をおこなっている。
研究方法:研究班の活動として、以下の4つを立ち上げた。
①政府統計などを用いた二次データ解析では、国民生活基礎調査および21世紀出生児縦断調査、社会生活基本調査の計3つの政府統計のデータを取得した。その上で、父親の生活の実態や、育児参加の関連要因、育児ストレスの関連要因などに関する解析をおこなった。
②自治体や企業への現行の父親支援の取り組みについての情報収集として、全国1,741の基礎自治体および、イクボス企業同盟に加盟する232社を対象とする質問票調査を実施した。
③諸外国における父親支援の実態把握として、カナダ、イギリス、フランス、オーストラリア、フィンランド、スウェーデン、韓国の計7か国において、父親を対象とした支援制度・法制度について情報収集をおこなった。また、職域における父親を対象とする介入研究について、系統的レビューをおこなった。
④自治体における介入プログラムの検討および評価ツールの開発として、東京都多摩市および山梨県甲斐市の担当者と協議をおこなった。また、多摩市が主催するイベントで参加者にアンケート調査を実施した。
結果と考察:
①の政府統計を用いたデータ解析によって、1歳未満の子どもがいる世帯において、夫婦が同時期に精神的な不調のリスクありと判定された割合は3.4%であった。またそのリスク要因として父親の長時間労働や母親の睡眠時間が短いことなどが挙げられた。シングルファザー世帯において、重度な精神的な不調のリスクありと判定された世帯は8.5%であり、そのリスク要因として雇用状況や睡眠時間が影響していることがうかがわれた。父親の育児参加を阻害する要因としては、長時間労働、通勤時間の長さなどが関連していることが示された。父親の育児ストレスのリスク要因としては、育児経験が乏しいこと、精神科既往歴があることなどがあることが示唆された。未就学児を持つ父親において、「仕事関連時間」が長くなると、「家事・育児関連時間」が短縮される傾向が示された。
これら父親に関する生活や健康の実態について複数の解析をおこなっていく中で、父親が家事・育児に取り組むためにも、長時間労働の是正が急務であることと、シングルファザーや夫婦が同時に精神的な不調になるなどのリスクの高い子育て世帯があり、支援がより必要であることが示唆された。
②の現行の父親支援の取り組みに関する調査では、全国1,741自治体のうち、837自治体(回収率48.1%)から回答を得た。2019年度の取り組みでは、自治体の多くが母子保健事業の中に父親の参加、父親支援を採り入れて実施していた。父親を主な対象とする支援事業を実施した自治体は54(6.5%)にとどまったが、事業を実施していない70%を越える自治体が、父親支援事業の実施の必要性を感じていることが明らかになった。そして、父親支援事業の実施に向けて「ニーズが不明」という理由を挙げた自治体が半数を占めた。イクボス企業同盟への調査では、82社から回答を得た。実施されている父親支援の取り組みとしては「出産祝金制度」、「休暇取得の促進」が上位を占めた。企業として父親支援に取り組むメリットを感じる一方で、「他の社員の負担が増える」などの課題も示された。
③の海外の実態調査からは、産前・産後の各時点における支援事例や、父親支援の担い手の人材育成に関する事例が収集された。いずれの国においても、保健医療従事者・専門家が父親にアウトリーチできるようになることが一つの課題として位置づけられていることがうかがわれた。職域における介入研究の系統的レビューからは、労働時間の削減や研修、カウンセリングなどは対象者やその家族の健康や労働パフォーマンスに良い影響を与えることが示唆された。
④の自治体の父親支援モデルの構築については、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、現地視察や自治体担当者との綿密な連携が難しい状況にあった。その中で、東京都多摩市などと連携をして検討を重ねた。
結論:これまで父親の生活や健康の実態が十分に明らかにされていなかった中で、既存資料の活用や自治体、企業への調査を通じて様々な知見を得ることができた。引き続き、情報の整理と還元が必要だと考えられた。
研究方法:研究班の活動として、以下の4つを立ち上げた。
①政府統計などを用いた二次データ解析では、国民生活基礎調査および21世紀出生児縦断調査、社会生活基本調査の計3つの政府統計のデータを取得した。その上で、父親の生活の実態や、育児参加の関連要因、育児ストレスの関連要因などに関する解析をおこなった。
②自治体や企業への現行の父親支援の取り組みについての情報収集として、全国1,741の基礎自治体および、イクボス企業同盟に加盟する232社を対象とする質問票調査を実施した。
③諸外国における父親支援の実態把握として、カナダ、イギリス、フランス、オーストラリア、フィンランド、スウェーデン、韓国の計7か国において、父親を対象とした支援制度・法制度について情報収集をおこなった。また、職域における父親を対象とする介入研究について、系統的レビューをおこなった。
④自治体における介入プログラムの検討および評価ツールの開発として、東京都多摩市および山梨県甲斐市の担当者と協議をおこなった。また、多摩市が主催するイベントで参加者にアンケート調査を実施した。
結果と考察:
①の政府統計を用いたデータ解析によって、1歳未満の子どもがいる世帯において、夫婦が同時期に精神的な不調のリスクありと判定された割合は3.4%であった。またそのリスク要因として父親の長時間労働や母親の睡眠時間が短いことなどが挙げられた。シングルファザー世帯において、重度な精神的な不調のリスクありと判定された世帯は8.5%であり、そのリスク要因として雇用状況や睡眠時間が影響していることがうかがわれた。父親の育児参加を阻害する要因としては、長時間労働、通勤時間の長さなどが関連していることが示された。父親の育児ストレスのリスク要因としては、育児経験が乏しいこと、精神科既往歴があることなどがあることが示唆された。未就学児を持つ父親において、「仕事関連時間」が長くなると、「家事・育児関連時間」が短縮される傾向が示された。
これら父親に関する生活や健康の実態について複数の解析をおこなっていく中で、父親が家事・育児に取り組むためにも、長時間労働の是正が急務であることと、シングルファザーや夫婦が同時に精神的な不調になるなどのリスクの高い子育て世帯があり、支援がより必要であることが示唆された。
②の現行の父親支援の取り組みに関する調査では、全国1,741自治体のうち、837自治体(回収率48.1%)から回答を得た。2019年度の取り組みでは、自治体の多くが母子保健事業の中に父親の参加、父親支援を採り入れて実施していた。父親を主な対象とする支援事業を実施した自治体は54(6.5%)にとどまったが、事業を実施していない70%を越える自治体が、父親支援事業の実施の必要性を感じていることが明らかになった。そして、父親支援事業の実施に向けて「ニーズが不明」という理由を挙げた自治体が半数を占めた。イクボス企業同盟への調査では、82社から回答を得た。実施されている父親支援の取り組みとしては「出産祝金制度」、「休暇取得の促進」が上位を占めた。企業として父親支援に取り組むメリットを感じる一方で、「他の社員の負担が増える」などの課題も示された。
③の海外の実態調査からは、産前・産後の各時点における支援事例や、父親支援の担い手の人材育成に関する事例が収集された。いずれの国においても、保健医療従事者・専門家が父親にアウトリーチできるようになることが一つの課題として位置づけられていることがうかがわれた。職域における介入研究の系統的レビューからは、労働時間の削減や研修、カウンセリングなどは対象者やその家族の健康や労働パフォーマンスに良い影響を与えることが示唆された。
④の自治体の父親支援モデルの構築については、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、現地視察や自治体担当者との綿密な連携が難しい状況にあった。その中で、東京都多摩市などと連携をして検討を重ねた。
結論:これまで父親の生活や健康の実態が十分に明らかにされていなかった中で、既存資料の活用や自治体、企業への調査を通じて様々な知見を得ることができた。引き続き、情報の整理と還元が必要だと考えられた。
公開日・更新日
公開日
2021-07-12
更新日
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