文献情報
文献番号
202007009A
報告書区分
総括
研究課題名
母子保健情報と学校保健情報を連係した情報の活用に向けた研究
課題番号
19DA1001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
栗山 進一(国立大学法人東北大学 災害科学国際研究所)
研究分担者(所属機関)
- 菅原 準一(東北大学 大学院医学系研究科)
- 目時 弘仁(東北医科薬科大学 医学部)
- 黒川 修行(宮城教育大学 教育学部)
- 小原 拓(東北大学 東北メディカル・メガバンク機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
5,160,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
母子保健情報と学校保健情報を含む胎児期から小児期までのあらゆるパーソナルヘルスレコードの現実的な連係・利活用のための基盤構築に向けた検討を行う。
研究方法
開始時期の異なる複数の既存出生コホート(三世代コホート調査、BOSHI研究)および産科医療機関の連携基盤(センダードネット)の利用等を通して、(1)母子保健情報と学校保健情報の連係・活用による有用性の明確化に向けた解析と(2)現実的なインフラ整備に向けた調査を行う。
結果と考察
(1)母子保健情報と学校保健情報の連係・活用による有用性の明確化に向けた解析
東北大学東北メディカル・メガバンク計画三世代コホート調査においては、35の自治体母子保健関連部署および27の教育委員会より、乳幼児健診情報8,232名分、就学時健診情報396名分、学校定期健診情報139名分を収集した。また、自治体や教育委員会と連携して、地域への結果還元・情報提供を行った。三世代コホートで戦略的に収集した情報を連係の上で解析した結果、乳幼児期に過体重であった児は、学童期および思春期にも過体重である割合が高い傾向が認められた。また、出生時から10歳時までの体格と10歳時の骨量との関連解析の結果、6歳時、10歳時に肥満であった女子は、標準体重の女子と比べ10歳時調査時の骨密度が有意に低値であることや、6歳時に肥満であった男子は、標準体重の男子と比べ10歳時調査時の骨密度が有意に高値であることなどが明らかとなった。三世代コホート調査で接点のある教育委員会担当者18名および小・中学校担当教諭111名から、母子保健情報と学校保健情報の連係の必要性・効果・期待に関して情報収集した結果、教育現場から提供した情報の解析から見えてきたことの報告・還元を希望する回答が最も多く、一方で、学校健診情報が電子化されていないとの回答が過半数から得られた。その上で、「パーソナルヘルスレコードとしての様々な個人情報集約システムを構築していくにあたってのご意見・ご要望」として、電子化を望む声やデータの利活用を望む声が多かった。BOSHI研究参加者における認識・希望調査の結果、母子保健情報と学校健診情報のリンケージを必要と感じている者は75%以上と高い割合であったのに対し、情報の利活用の度に同意確認が必要と感じている者も50%程度と多く、特に大学や企業などの外部研究者が情報を活用する際に同意確認を必要と感じている割合は65%以上と高いことが明らかとなった。
(2)現実的なインフラ整備に向けた調査
今年度は、海外の既存のインフラに関する情報収集を実施し、デンマークで運用されている個人識別番号を用いたシステムは、健康情報に限らず様々な公的データベースと連携可能なシステムであり、社会福祉のみならず研究にも利活用されてきたことや、小児における健診情報の利活用の事例として、出生時から学童期および学童期から思春期にかけてのBMI zスコアの増加が、I型糖尿病の発症と関連しているとの報告を抽出した。また、公的な個人識別番号を用いずに母子保健情報および学校保健情報を連係・活用している国内の事例として、自治体主導の市民PHRシステムである「MY CONDITION KOBE」や一般社団法人健康・医療・教育情報評価推進機構(HCEI)の事例も注視していくべき事例として抽出した。
東北大学東北メディカル・メガバンク計画三世代コホート調査においては、35の自治体母子保健関連部署および27の教育委員会より、乳幼児健診情報8,232名分、就学時健診情報396名分、学校定期健診情報139名分を収集した。また、自治体や教育委員会と連携して、地域への結果還元・情報提供を行った。三世代コホートで戦略的に収集した情報を連係の上で解析した結果、乳幼児期に過体重であった児は、学童期および思春期にも過体重である割合が高い傾向が認められた。また、出生時から10歳時までの体格と10歳時の骨量との関連解析の結果、6歳時、10歳時に肥満であった女子は、標準体重の女子と比べ10歳時調査時の骨密度が有意に低値であることや、6歳時に肥満であった男子は、標準体重の男子と比べ10歳時調査時の骨密度が有意に高値であることなどが明らかとなった。三世代コホート調査で接点のある教育委員会担当者18名および小・中学校担当教諭111名から、母子保健情報と学校保健情報の連係の必要性・効果・期待に関して情報収集した結果、教育現場から提供した情報の解析から見えてきたことの報告・還元を希望する回答が最も多く、一方で、学校健診情報が電子化されていないとの回答が過半数から得られた。その上で、「パーソナルヘルスレコードとしての様々な個人情報集約システムを構築していくにあたってのご意見・ご要望」として、電子化を望む声やデータの利活用を望む声が多かった。BOSHI研究参加者における認識・希望調査の結果、母子保健情報と学校健診情報のリンケージを必要と感じている者は75%以上と高い割合であったのに対し、情報の利活用の度に同意確認が必要と感じている者も50%程度と多く、特に大学や企業などの外部研究者が情報を活用する際に同意確認を必要と感じている割合は65%以上と高いことが明らかとなった。
(2)現実的なインフラ整備に向けた調査
今年度は、海外の既存のインフラに関する情報収集を実施し、デンマークで運用されている個人識別番号を用いたシステムは、健康情報に限らず様々な公的データベースと連携可能なシステムであり、社会福祉のみならず研究にも利活用されてきたことや、小児における健診情報の利活用の事例として、出生時から学童期および学童期から思春期にかけてのBMI zスコアの増加が、I型糖尿病の発症と関連しているとの報告を抽出した。また、公的な個人識別番号を用いずに母子保健情報および学校保健情報を連係・活用している国内の事例として、自治体主導の市民PHRシステムである「MY CONDITION KOBE」や一般社団法人健康・医療・教育情報評価推進機構(HCEI)の事例も注視していくべき事例として抽出した。
結論
東北大学東北メディカル・メガバンク計画三世代コホート調査においては、関係省庁との連携に基づいて、自治体母子保健関連部署や教育委員会・学校から乳幼児健診情報および学校健診情報の収集することができている。本研究班においては、母子保健情報と学校保健情報の連係のため戦略的な情報収集を支援し、収集された乳幼児健診情報・学校健診情報等の連係によって、乳幼児期の過体重と学童期・思春期の過体重との関連や、児の体格と骨密度との関連の検討を進められている。自治体・教育委員会・学校関係者からの情報収集結果に基づき、独自の成果創出に加えて、自治体や教育現場からのニーズの高いテーマに関して解析を進め、利活用案も含めて関係者に還元することが重要である。さらに、電子的連係の有用性を示すことによって、学校健診情報の電子化につながることも期待される。母子保健情報および学校保健情報の連係のためのシステムとしては、海外・国内の事例を参考に、保護者等の不安に対して配慮可能なシステムを、現在政府が進めているPHRの更なる利活用に関する政策とリンクさせた形で検討していく必要があると考えられる。最終年度である次年度は、既存出生コホートのデータの戦略的な解析と関連部署との情報共有・意見交換を進め、実効性の高い情報連係システムの構築に向けた検討を推進する。
公開日・更新日
公開日
2021-07-15
更新日
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