新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえた医師の働き方改革が大学病院勤務医師の働き方に与える影響の検証とその対策に資する研究

文献情報

文献番号
202006067A
報告書区分
総括
研究課題名
新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえた医師の働き方改革が大学病院勤務医師の働き方に与える影響の検証とその対策に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20CA2070
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
裴 英洙(ハイ エイシュ)(慶應義塾大学 健康マネジメント研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 武林 亨(慶應義塾大学 医学部 衛生学公衆衛生学教室)
  • 田中 利樹(慶應義塾大学 健康マネジメント研究科)
  • 山本 修一(国立大学法人 千葉大学 大学院医学研究院)
  • 鈴木 幸雄(横浜市立大学 医学部 産婦人科)
  • 村田 英俊(横浜市立大学 医学部 脳神経外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
8,064,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2024年4月から勤務医の時間外労働上限規制が適用されるが、時間外労働上限規制や労務管理の適正化が地域医療提供体制に与える影響の大きさについて懸念が高まったことを受け、昨年度の厚生労働科学特別研究事業(医療機関の医師の労働時間短縮の取組状況の評価に関する研究)において、医師の働き方改革の地域医療提供体制への影響について分析を行った。しかし、今般の新型コロナウイルス感染症への対応において、一部の診療科の医師に過大な負担が強いられたことや関連病院への医師派遣が困難な状況になったことなどの問題が発生したため、これらの影響を加味した上で、地域医療提供体制への影響の再分析が必要となった。本研究では、2024年に医師の時間外上限規制が適用された場合の大学病院の医局員について、主に①大学医局から関連病院への医師派遣等に影響があるか、②副業・兼業に該当する関連病院における勤務に影響があるのか、新型コロナウイルス感染症の影響も踏まえ、働き方改革の地域医療提供体制への影響についての考察を行う。また、昨年度の研究において、診療科によって医師数や勤務状況が異なるため、講じうる効果的な労働時間短縮計画は異なり、まず診療科毎に詳細な勤務実態を把握し、実態に即した計画を立案することが重要であることが示されたことから、各医療機関で勤務実態の把握に取り組むためのマニュアル作成も行う。
研究方法
10の大学病院において、各病院が選定した2、3診療科(計26診療科)に協力を得て、大学病院を主たる勤務先とする医師を対象に、副業・兼業先での勤務を含めた1週間の勤務状況についてタイムスタディを実施した。また、各医局の勤務体制および関連病院への医師派遣状況(勤務先や経験年数、職位、性別、年齢、医局が把握している副業・兼業の状況、新型コロナウイルス感染症への対応状況等)について、各医局の教授あるいは医局長に紙面調査を行った。タイムスタディ及び紙面調査結果をもとに、各医局の教授や医局長、大学病院事務(総務・人事担当部門)等から、医局の運営方法や地域医療提供体制の状況、新型コロナウイルス感染症の影響、調査結果を踏まえた具体的対応策等についてヒアリングを実施した。
結果と考察
対象医師531名から有効回答を得られ、大学病院、副業・兼業先ともに宿日直の待機時間を労働時間として取り扱う場合、A水準相当は213名(40.1%)、連携B水準相当は145名(27.3%)、BまたはC水準相当は50名(9.4%)、連携B、BまたはC水準を超過する医師は123名(23.2%)であった。また、大学病院は宿日直の待機時間を労働時間として取り扱い、副業・兼業先での宿日直の待機時間を労働時間として取り扱わない場合、A水準相当は304名(57.3%)、連携B水準相当は99名(18.6%)、BまたはC水準相当は73名(13.7%)、連携B、BまたはC水準を超過する医師は55名(10.4%)であった。時間外労働時間短縮のための第一選択として医師派遣体制の縮小を挙げられることはなかったが、医療機関は各々の取組みだけではなく、医療機能の集約や患者および家族の意識変容の推進が必要と考えていた。今年度、社会的に新型コロナウイルス感染症の影響が大きく、医師の業務量についても影響が懸念されたが、今回調査を行った大学病院と診療科においては、新型コロナウイルス感染症の影響による業務量の増加はなかった。
結論
厚生労働省より発表された平成28年度、令和元年度の「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」による連携B、BまたはC水準の超過に該当するであろう医師数が上位10%程度であるという内容について、本研究でも大学病院は待機を含み、兼業先で待機を除いた場合の連携B、BまたはC水準を超過する医師の割合は同様の10%程度となった。既に、チーム制の導入や土日の出勤は当直医のみに制限する等の取組を行い、労働時間が短縮された結果が出ている診療科もある。医師の労働時間短縮を達成するためには、医療を受ける側も認識を変えてもらう必要があり、救急医療提供体制の集約化や各医療機関の役割の明確化等、地域の医療提供体制についてもあわせて検討する必要がある。やはり医師の働き方改革、地域医療構想、医師偏在対策を「三位一体」で検討せざるを得ない状況であることが今回の研究でも明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2023-05-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-05-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202006067C

収支報告書

文献番号
202006067Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,483,000円
(2)補助金確定額
10,483,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,078,725円
人件費・謝金 5,327,850円
旅費 343,340円
その他 1,314,085円
間接経費 2,419,000円
合計 10,483,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-