個人輸入による未承認薬の医療機関における安全対策に関する研究

文献情報

文献番号
200735021A
報告書区分
総括
研究課題名
個人輸入による未承認薬の医療機関における安全対策に関する研究
課題番号
H18-医薬-一般-009
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
久保田 潔(東京大学医学部 薬剤疫学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 木内 貴弘(東京大学大学院医学系研究科、医療コミュニケーション分野)
  • 服部 豊(慶應義塾大学医学部 内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
4,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
個人輸入による未承認薬の医療機関における安全対策のあり方を明らかにすることを目的とする。具体的には、サリドマイドを例にとり、未承認薬の使用登録・管理システム(Safety Management system for Unapproved Drugs, SMUD)のあり方について検討する。SMUDは、平成18年度に大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)のWeb上に作成されたが、その本格稼動をめぐる関係者間の協議の結果、SMUDはUMIN上ではなくSMUDを永続的に運用可能な機関(以下、新運用センター)に移転する方向で検討することで研究班員の合意を得た。そこで平成19年度は、厚生労働省の了解の下、新運用センターにおけるSMUDの運用のあり方について検討した。
研究方法
①試験運用の評価、②重篤有害事象と妊娠の報告の取り扱い、③SMUDの移転に伴う変更事項、④新運用センターの要件、⑤システムの評価・検証について検討し、その結果を班会議の議事録と本研究の成果物である「サリドマイド使用登録システム(SMUD)の導入管理及び運用に係る調達仕様書(草案)」などをもとに記述した。
結果と考察
試験運用の結果、UMIN上で運用する限り、SMUDは本格稼動可能な状態となった。SMUDに報告された重篤有害事象等は、厚生労働省及び日本臨床血液学会がプライバシー保護の観点等からチェックした後に別途SMUD利用者に限定して公開する。SMUDの移転に伴い、ユーザ認証方式を変更し、またSMUDの登録管理は、医師個人輸入の実態に合わせ、当面は医療機関ではなく診療科を単位として実施する。SMUDの運用にあたっては、①関係者による運営会議を開催し関係者の理解を得る、②ユーザ登録における「成りすまし」などの問題を防止する手段を講じる、③利用者が薬監証明の発給申請を支障なく行えるようサポートする、④集計データ等の公表を行う、ことが重要である。SMUD稼動後は、システムの評価・検証と必要な改善を行うとともに、サリドマイド承認後も個人輸入が一部継続されSMUDによる安全管理がなされる場合には、SMUDを承認薬のシステムのレベルに引き上げることが望まれる。
結論
SMUDの本格稼動の実現は、未承認薬のリスク管理の先駆けとなる事例であり、大きな意義を有すると思われる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-07
更新日
-

文献情報

文献番号
200735021B
報告書区分
総合
研究課題名
個人輸入による未承認薬の医療機関における安全対策に関する研究
課題番号
H18-医薬-一般-009
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
久保田 潔(東京大学医学部 薬剤疫学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 木内 貴弘(東京大学大学院医学系研究科、医療コミュニケーション分野)
  • 服部 豊(慶應義塾大学 医学部内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
個人輸入による未承認薬の医療機関における安全対策のあり方を明らかにすることを目的とする。具体的には、サリドマイドを例にとり、未承認薬の使用登録・管理システム(Safety Management system for Unapproved Drugs, SMUD)のあり方について検討する。
研究方法
平成18年度は、SMUDを大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)上に作成し、また関係者に受け容れ可能なマニュアル等について検討した。その後、SMUDの本格稼動をめぐる関係者間の協議の結果、SMUDはUMIN上ではなくSMUDを永続的に運用可能な機関(新運用センター)に移転する方向で検討することとなったため、平成19年度は新運用センターにおけるSMUDの運用のあり方について検討した。
結果と考察
SMUDは、薬監証明申請時添付文書発行機能の追加に伴うシステムの見直しを終え、平成18年度にほぼ完成した。利用者向けマニュアルにもとづいたSMUDの試験運用の結果は概ね好評であり、SMUDをUMIN上で運用する限りは本格稼動可能な状態となった。平成19年度は、新運用センターにおける運用のあり方に関する検討結果を「サリドマイド使用登録システム(SMUD)の導入管理及び運用に係る調達仕様書(草案)」としてまとめた。SMUDは、未承認薬の重篤有害事象等の報告をユーザ間で共有する機能をもつ点が強みである。SMUDをサリドマイドの「リスク最小化ツール」の一つとして評価した場合、情報収集システムが「注意喚起システム」として機能することに加え、SMUDからダウンロードされる書類が薬監証明添付文書発給の条件であることから、一部「条件付使用許可」の側面もあわせもつ。「条件付使用許可」は使用者に大きな負荷をかけることから、負荷を最小限にするとともに、SMUDが未承認薬の安全管理にどの程度寄与するかを本格稼動後に検証することが重要である。一方、SMUDは、サリドマイドの安全管理に必要な「リスク最小化計画」全般に対応することを意図しておらず、サリドマイド承認後も個人輸入が一部継続されSMUDによる安全管理がなされる場合には、SMUDを承認薬のシステムのレベルに引き上げることが望まれる。
結論
SMUDの本格稼動の実現は、未承認薬のリスク管理の先例として大きな意義を有すると思われる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200735021C

成果

専門的・学術的観点からの成果
サリドマイドを例にとり、未承認薬の使用登録・管理システムであるSMUD(Safety Management system for Unapproved Drugs)をWeb上に作成して試験運用を行い、SMUDをサリドマイドの「リスク最小化ツール」の一つとして評価した。
臨床的観点からの成果
SMUDを稼動させた結果をもとに未承認薬の医療機関における安全対策のあり方を明らかにしようとした本研究は、世界的にもほとんど例がない。医療機関における安全対策実施の確認についてはSMUD稼動後の課題となったが、SMUDは、薬剤の使用状況を医師等に確認する注意喚起システムの機能をもつ点、薬監証明発給申請時の添付文書発行機能が一部条件付使用許可の側面をもつ点、及び重篤有害事象報告に関する情報を共有するしくみを医師等に提供する点で、診療現場でのサリドマイドの安全使用体制の構築に貢献すると思われる。
ガイドライン等の開発
本研究は新たなガイドライン等の開発には関与していないが、SMUDは、サリドマイドを処方する医師が、わが国に存在する未承認薬に関する唯一の公式のガイドラインである「多発性骨髄腫に対するサリドマイドの適正使用ガイドライン」(日本臨床血液学会作成)に従い、薬剤を適正に使用していることを確認するとともに、薬剤の使用状況等を登録することを目的として作成された。
その他行政的観点からの成果
SMUDは、サリドマイドの薬監証明発給申請に必要な添付文書の発行機能をもつ点で、薬事行政に直接貢献し得る。また、SMUDの本格稼動は、SMUDを永続的に運用可能な機関(新運用センター)に移転して行う方向で検討することとなったため、本研究班は新運用センターの要件について検討し、その結果を「サリドマイド使用登録システム(SMUD)の導入管理及び運用に係る調達仕様書(草案)」としてまとめた。この仕様書案は、厚生労働省によるSMUDの導入管理と運用に係る調達に関する予算要求の基礎資料となった。
その他のインパクト
SMUDに関する報道が、日本経済新聞(2006年6月12日朝刊)、Medical Tribune(2006年9月21日)、朝日新聞(2007年1月4日夕刊)、読売新聞(2007年2月26日夕刊)等でなされた。本研究の成果の一部が第13回日本薬剤疫学会シンポジウム(東京、2007年10月21日)で発表され、その内容がMedical Tribune(2008年1月24日)に掲載された。SMUDを医療従事者および一般に広く周知するため、ホームページにSMUDの概要と研究成果の一部を公表している。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
10件
その他論文(英文等)
4件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
その他成果(普及・啓発活動)
4件
SMUDホームページhttp://square.umin.ac.jp/pe/smud/smud.htm

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-