輸血用血液の細菌感染防止と血小板製剤の有効性期限延長に関する研究

文献情報

文献番号
200735008A
報告書区分
総括
研究課題名
輸血用血液の細菌感染防止と血小板製剤の有効性期限延長に関する研究
課題番号
H17-医薬-一般-051
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
大戸 斉(福島県立医科大学医学部 輸血・移植免疫部)
研究分担者(所属機関)
  • 高松 純樹(名古屋大学医学部附属病院輸血部)
  • 浅井 隆善(静岡県赤十字血液センター)
  • 佐竹 正博(東京都西赤十字血液センター)
  • 宮田 茂樹(国立循環器病センター)
  • 山口 一成(国立感染症研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
2,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血小板製剤の有効期限は国際的には現在5日間であったが、欧米では細菌混入スクリーニング検査を併用することで7日に延長されつつある。とくに、日本における急速な高齢人口の増加と若年人口の減少によって、輸血用血液製剤の需要バランスの良好な維持は困難になりつつある。
日本においても2007年11月からこれまでの有効期間72時間から最終有効日の夜24時に延長され,
実質80~84時間になった。
しかし、血小板製剤の有効期限を単純に5日あるいは7日間に延長することに対しては細菌感染症や血小板機能低下が懸念される。特に、前者については諸外国から多くの感染による敗血症や死亡例が報告され、日本においても例数は少ないが報告例がある。
研究方法
今年度は血小板製剤の7日間保存延長の可能性を検証するために以下の3点を中心に研究計画を立てた。
1)血液製剤(血小板)の細菌混入実態の把握、2)細菌混入防止消毒法と採血手技の確立、3)最適な細菌検出技術・方法の確立、4)輸血時の細菌汚染防止と細菌汚染副作用発生時の対応指針の作成究である。細菌混入した場合の細菌増殖の動態と細菌混入を克服するための方策を、血小板機能を有効に維持しつつ、7日間に延長可能であるかを検討し、問題を克服する研究をすすめた。
結果と考察
1.初流血除去と高性能保存バッグの導入に伴い、2007年11月から日本の血小板製剤の有効期限は4日間(採血日を含む)に延長された。血小板製剤の8%が、本来ならば有効期限切れで廃棄になっていたが使用可能となった。有効期限延長は、出血に対して緊急性をもって対応しなければならない医療機関において効果的、効率的な血小板輸血療法に貢献していることが示唆された。
血液センターにおける血小板製剤有効期限延長の効果は鮮明である。有効期限切れ率がこれまでの62%減少した。
2.血小板をPO-80バッグにて7日間保存した後、新鮮血小板とともに返血し、生体内の回収率と血小板寿命を比較測定した。保存血小板の回収率は新鮮血小板の82%、生体内寿命が81%と良好であった。PO-80保存血小板製剤の7日間期限延長は十分可能であると考えられる。
結論
1.欧州が先行して血液安全監視体制(ヘモビジランス)が国主導で世界的に構築されてきている。これまで日本赤十字社が行ってきた輸血副作用サーベイランスを補完する形で、血液製剤一連の流れ全体リスクを正確に評価・把握する新たな体制の構築が期待される。
2.今回の有効期限延長によって製造する赤十字血液センターと使用病院の両者に恩恵をもたらしている。

公開日・更新日

公開日
2008-11-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200735008B
報告書区分
総合
研究課題名
輸血用血液の細菌感染防止と血小板製剤の有効性期限延長に関する研究
課題番号
H17-医薬-一般-051
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
大戸 斉(福島県立医科大学医学部 輸血・移植免疫部)
研究分担者(所属機関)
  • 高松 純樹(名古屋大学医学部付属病院 輸血部)
  • 浅井 隆善(静岡県赤十字血液センター)
  • 佐竹 正博(東京都西赤十字血液センター)
  • 宮田 茂樹(国立循環器病センター)
  • 山口 一成(国立感染症研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血小板製剤の有効期限は国際的には5日間であったが、欧米では細菌混入試験を併用することで7日に延長されつつある。日本における急速な高齢人口の増加と若年人口の減少によって、輸血用血液の需給は破綻しつつある。血小板の有効期限延長が可能であるか、を研究してきた。
研究方法
血小板製剤の7日間保存延長の可能性を検証した。
1)血液製剤(血小板)の細菌混入実態の把握、2)細菌混入防止消毒法と採血手技の確立、3)最適な細菌検出技術・方法の確立、4)輸血時の細菌汚染防止と細菌汚染副作用発生時の対応指針の作成、5)血小板保存技術の向上。
結果と考察
1.初流血除去は多くの先進国で導入されている。当研究の報告を受けて、初流血除去は2007年3月から全国の赤十字血液センターに導入された。
2.初流血除去と高性能保存バッグの導入に伴い、2007年11月から日本の血小板製剤の有効期限は4日間に延長された。病院では血小板製剤の8%が、本来ならば有効期限切れで廃棄になっていたが使用可能となった。血液センターでは期限切血小板製剤が62%減少した。
3.日本で血液製剤から検出される菌種の半数以上をP. acnes が占める。P. acnesを接種した血小板製剤をマウスに静注し、病原性を評価した。菌の増殖はきわめて遅く、組織学と臓器コロニー数からは病原性は証明できなかった。
4.低温での、細菌増殖態度を検討した。グラム陽性菌は低温で増殖が抑制された。陰性菌は増殖が阻止できなかった。複数菌による菌相互の干渉について、S. aureus とS. Marcescensを血小板製剤に混合接種すると両菌とも干渉を受けることなく、本来の増殖パターンを呈した。
5.二種の培養式細菌検出装置、BacT/ALERTとeBDS、を用いて接種細菌検出比較をした。培養式の細菌検出システムは有用であるが、完璧ではなく、偽陰性もありうる。
6.細菌汚染を避けるために採用した2つの安全対策(外観試験と保存前白血球除去)を検証した。1) 外観変化で不適と判断された血小板製剤の8割はスワーリングの消失であった。2) 細菌増殖が原因でスワーリングが消失したものはなかった。
7.PO-80バッグにて7日間保存した後、新鮮血小板とともに返血した。保存血小板の回収率と生体内寿命は大変良好であった。血小板の7日間期限延長は可能である。
結論
血小板製剤には将来に亘って、有効期限を延長する必要性を内在している。優れた保存バッグが開発された現在、細菌試験を併用するなど、7日間への延長を視野に置いて、検討・研究を続けるべきである。

公開日・更新日

公開日
2008-11-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200735008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
献血の際、初流血除去は多くの先進国で導入されている。当研究班の初流血(30mL)除去についての報告を受けて、初流血除去は2007年3月から全国の赤十字血液センターに導入されることになった。
日本で開発されたPO-80バッグにて7日間保存した後、同人新鮮血小板とともに返血し、生体内の回収率と血小板寿命を比較測定した。保存血小板の回収率は新鮮血小板の82%、生体内寿命が81%と良好であった。PO-80保存血小板製剤の7日間期限延長は十分可能である。
臨床的観点からの成果
初流血除去と高性能保存バッグの導入に伴い、2007年11月から日本の血小板製剤の有効期限はこれまでの72時間から4日間(採血日を含む)に延長された。国立循環器病センターでは血小板製剤の8%が、本来ならば有効期限切れで廃棄になっていたが使用可能となった。有効期限延長は、大量出血、危機的出血に対応している医療機関において効率的な血小板輸血療法に貢献している。同時に、製造・供給に与る血液センターにおける有効期限延長の効果は鮮明である。東京都赤十字血液センター内の有効期限切れ数が62%減少した。
ガイドライン等の開発
血小板製剤による敗血症の予防と対応策に関する手引き(2008年1月20日)
その他行政的観点からの成果
欧州(英国、フランスなど)が先行して血液安全監視体制(ヘモビジランス)が国主導で世界的に構築されてきている。これまで日本赤十字社が行ってきた輸血副作用サーベイランスを補完する形で、血液製剤一連の流れ全体リスクを正確に評価・把握する新たな体制の構築が期待される。
血小板製剤は将来に亘って、有効期限を延長する必要性を内在している。優れた保存バッグが開発された現在、細菌試験を併用するなどして、7日間への延長を視野に置いて、検討を続けるべきである。
その他のインパクト
公開班会議を開催(2007年7月27日-28日、福島県立医科大学)

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
11件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
赤十字血液センターでの初流血除去、血小板有効期限の延長
その他成果(普及・啓発活動)
2件
公開班会議、血小板製剤の手引き作成

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ezuki S, Kawabata K, Ohto H, et al.
Culture-based bacterial detection systems for platelets: the effect of time prior to sampling and duration of incubation required for detection with aerobic culture.
Transfusion , 47 , 2044-2049  (2007)
原著論文2
Ezuki S, Kanno T, Ohto H, et al.
Survival and recovery of apheresis platelets stored in a polyolefin container with high oxygen permeability.
Vox Sanguinis , 94 , 292-298  (2008)
原著論文3
大坪寛子、山口一成、星順隆
溶存酸素消費量測定による血小板製剤内細菌検出感度についての検討
日本輸血・細胞治療学会雑誌 , 54 (3) , 372-377  (2008)
原著論文4
大戸 斉、高松純樹、浅井隆善、佐竹正博、宮田茂樹、山口一成、大坪寛子
血小板製剤による敗血症の予防と対応策に関する手引き
日本輸血・細胞治療学会雑誌 , 54 (3) , 419-421  (2008)

公開日・更新日

公開日
2017-05-22
更新日
-