精神科医療機関における新型コロナウイルス感染症に対する感染対策の現状と課題把握、及び今後の方策に向けた研究

文献情報

文献番号
202006035A
報告書区分
総括
研究課題名
精神科医療機関における新型コロナウイルス感染症に対する感染対策の現状と課題把握、及び今後の方策に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20CA2037
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
上野 修一(国立大学法人 愛媛大学 大学院医学系研究科 精神神経科学)
研究分担者(所属機関)
  • 田内 久道(愛媛大学医学部附属病院)
  • 糠信 憲明(広島国際大学 看護学部看護学科)
  • 森兼 啓太(山形大学医学部附属病院 検査部)
  • 黒須 一見(東京都保健医療公社荏原病院 感染対策室)
  • 藤田 烈(国際医療福祉大学 未来研究支援センター)
  • 小林 大輝(聖路加国際大学 公衆衛生大学院 疫学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
7,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療機関の中でも精神科医療機関は、閉鎖的環境が多く、施設構造上も飛沫・接触感染等による感染症のクラスター発生のリスクが高い。また、感染制御に関わるスタッフが少なく、感染防止対策に慣れておらず、検査設備や診療体制が十分でない。さらに、疾病の性質上、基本的な感染予防の協力が得にくいといった特殊性があり、高齢者の患者が多いことから重症化する可能性も高い。今後、精神科医療機関における感染症の中長期的対策整備が求められており、以上から今回の研究を行った。
研究方法
1.国内外の精神科医療機関の院内感染対策を調べた。
2.新型コロナウイルス感染症対策の実態調査については、愛媛県と石川県の事例について対策状況を整理した。
3.精神科医療機関における感染管理担当者を対象とした質問紙調査を行った。
4.精神科医療従事者に対する意識調査を行った。
結果と考察
1.国内外の精神科医療機関の感染予防に関する研究は、世界的にもかなり限られており、加えて、臨床情報に基づく臨床研究ではなく、多くは専門家の提言によるものがほとんどであった。今後は臨床データの蓄積による、エビデンスの構築が望まれる。
2.新型コロナウイルス感染症対策の実態調査については、愛媛県と石川県の精神科病院にて起こったCOVID-19のクラスターについてまとめた。支援体制では感染制御チームを派遣し、ゾーニング、感染管理指導、感染管理マニュアルの改定、収束後の感染制御の評価等を行った。いずれも自治体が主体となり、様々な協力を得て対応に当たっていた。
3.精神科医療機関の感染対策チームの活動実態調査では、感染制御活動を行っている施設は、総合病院では97.5%だが、精神科病院では57.6%であり、感染制御チームを持たない病院も40%近くに上った。感染制御のために、「マニュアルの作成」し、「職員研修の企画・実施」、「院内感染発生時の対応」をしている病院は総合病院、単科精神科病院とも80%を超えていた。一方、総合病院と比較し、精神科病院では「ファシリティマネジメント」、「感染症の観点からの病棟回診」、「感染症治療の指導」などの項目が低く、精神科病院では、感染管理の専従や専任となれる職員自体がいない施設が多かった。また、精神科では感染対策は一般科よりも”難しい“との回答が8割を占めていた。
4.精神科医療従事者に対する意識調査では、COVID-19感染疑い患者が来院することへの不安は「かなり不安」または「とても不安」との回答が70.6%と高かった。
考察として、精神科医療機関の院内感染対策については、まだ十分なエビデンスが集まっていないようであった。精神科病院でのクラスター事例を提示したが、やはり精神科病院では、閉鎖的な環境が多く、一般病床よりも感染制御が難しいことが改めて示された。クラスターの早期の鎮静化のためには、まず、感染の具体的状況をできるだけ早く確認し、感染制御のためのチームを早急に立ち上げることが重要である。精神科医療機関の感染対策の実態調査では、多くの病院で感染症対策マニュアルを作成していた。ただ、総合病院と精神科病院を比較すると、総合病院では、感染症対策が精神科病院に比較して進んではいるものの、総合病院の精神科病棟で本当に感染制御部門が充実しているかは慎重に考えるべきであると思われた。また、感染症対策管理者と医療従事者で質問の回答に差がある場合を認めた。これらの点を踏まえ、より詳細な調査により、精神科施設での実態を明らかにし、精神科病院への十分な診療報酬の設定や病院内外での感染症対策についても効率化を進めていく必要があると思われた。
結論
COVID-19感染症が精神科医療機関に与える影響及び対策については、まだ十分なエビデンスが集まっていない。
クラスターの早期収束のためには、感染状況をできるだけ早急に把握し、病院内外の感染対策チームを立ち上げ、最大限の物資・人的資源を集めることが大事である。
感染制御部門および医療者に対する調査から、精神科施設の感染対策チームがまだ十分に機能していない現状が明らかになった。国への経済的援助の要望とともに、より具体的な感染マニュアルの作成、研修会などにより感染対策の経験値を上げていくことが重要であると思われた。

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-09-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202006035C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では精神科医療機関におけるCOVID-19感染対策を対象としたシステマティックレビューを行い、合計10編の文献が該当した。そのいずれも臨床情報に基づく臨床研究ではなく、権威者からの提言や各医療機関で実際に行われていることの紹介であった。この事からエビデンスに基づいた感染対策に関しては、まだ、不十分であることがわかった。
臨床的観点からの成果
精神科病院で発生したクラスターに対しての実際の対策について報告した。クラスターの早期収束のためには、現状をできるだけ早急に把握し、病院内外の感染対策チームを立ち上げ、最大限の物的・人的資源を集めることが大事であることが示された。また、感染制御部門および精神科医療従事者のアンケートを行いその内容をまとめた。
ガイドライン等の開発
現時点ではなし。
その他行政的観点からの成果
全国的な精神科病院などの閉鎖的環境でのクラスター対策については、十分なマニュアルの作成に加え、具体的な感染対策研修会を自治体主導で開催すること、緊急時の物資の蓄えを事前から行っておくこと、万一の感染症発生時の実地訓練を行うこと、第三者によるメンタルヘルスケアについてシステムを構築するなど、精神科病院の感染支援システムの構築について提言した。
その他のインパクト
実際に行った感染対策についての報告及び感染対策の実際の手技についてDVDにまとめて報告し、厚生労働省ホームページにも動画のアドレスを掲載した。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
youtubeにて動画を作成

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
K. Kawabe, R. Hosokawa, K. Nakachi et al.
Making a brochure about coronavirus disease (COVID-19) for children with autism spectrum disorder and their family members.
Psychiatry Clin Neurosci. , 74 (9) , 498-499  (2020)
10.1111/pcn.13090
原著論文2
R. Hosokawa, K. Kawabe, K. Nakachi et al.
Behavioral Affect in Children with Autism Spectrum Disorder during School Closures Due to the COVID-19 Pandemic in Japan: A Case-Controlled Study.
Dev Neuropsychol , 46 (4) , 288-297  (2021)
10.1080/87565641.2021.1939350
原著論文3
137. K. Nakachi, K. Kawabe, R. Hosokawa et al.
Differences in Psychological and Behavioral Changes between Children following School Closure due to COVID-19.
Psychiatry J. , 2021 , 5567732-  (2021)
10.1155/2021/5567732
原著論文4
D. Kobayashi, K. Mami, S. Fujishiro et al.
Online training of Covid-19 infection prevention and control for healthcare workers in psychiatric institutes.
BMC Psychiatry , 23 (1) , 325-  (2023)
10.1186/s12888-023-04826-5
原著論文5
K. Kawabe, R. Hosokawa, K. Nakachi et al.
Excessive and Problematic Internet Use During the Coronavirus Disease 2019 School Closure: Comparison Between Japanese Youth With and Without Autism Spectrum Disorder.
Front Public Health , 8 , 609347-  (2020)
10.3389/fpubh.2020.609347

公開日・更新日

公開日
2022-05-26
更新日
2025-06-04

収支報告書

文献番号
202006035Z