文献情報
文献番号
202006002A
報告書区分
総括
研究課題名
厚生労働省所管の機関における動物実験関連基本指針の遵守徹底および適正な動物実験等の方法の確立に向けた研究
課題番号
20CA2002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
山海 直(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 霊長類医科学研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 牛山 明(国立保健医療科学院 生活環境部)
- 岡村 匡史(独立行政法人国立国際医療研究センター 感染症制御研究部ヒト型動物開発研究室)
- 高木 篤也(国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター毒性部)
- 小木曽 昇(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 実験動物管理室)
- 津村 秀樹(国立成育医療研究センター研究所実験動物管理室)
- 塩谷 恭子(国立研究開発法人 国立循環器病研究センター 研究所 動物実験管理室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
5,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
「厚生労働省の所管する実施機関における動物実験等の実施に関する基本指針」(以下、基本指針とする。)の前文には「動物実験等は、動物の生命又は身体の犠牲を強いる手段であり、動物実験等を実施する者はこのことを念頭におき、適正な動物実験等の実施に努める必要がある」と明記されている。この基本指針に関連する「動物の愛護及び管理に関する法律」(以下、動物愛護管理法とする。)の一部が改正され(令和元年6月19日公布、令和2年6月1日施行)、動物の不適切な取扱いへの対応等について強化されている。同法附則には、代替法の利用、使用動物数の削減等の動物の適正な利用の在り方について検討することと示されている。また、統合イノベーション戦略2019や第二期の健康・医療戦略に基づく医療分野研究開発推進計画においても、基本指針等に則り適正な動物実験等の実施について示されており、政府としても重要な位置づけとされている。そこで、動物実験の適正な実施を推進していくために、「代替法の利用」、「使用動物数の削減」に対する考え方を整理して基本指針の遵守徹底に向けた調査研究を実施することとした。
研究方法
1)動愛法と基本指針の遵守について
1-1.アンケートによる現状把握
基本指針に明記されている動物実験に関する「自己点検」「外部検証」「情報公開」と「使用動物数の削減」や「代替法の利用」に関して調査し、平成28年度の特別研究の結果と比較して状況の変化を解析した。
1-2.自己点検、自己評価を促すツールの開発
点検項目は、平成28年度特別研究の成果である「自己点検自己評価表の内容」を基本とし、国際動向にも対応できる内容とした。PDFファイルに自動変換されるなど、情報公開等に活用できるような配慮もなされた。
2)「代替法の利用」「使用動物数の削減」の対応について
2-1.「代替法の利用」のための考え方の整理、提案
論文調査やアンケートにより情報を収集した。さらに、ヒアリングを実施して日本動物実験代替法評価センター、日本実験動物代替法学会、ICATMの取り組みやOECDガイドライン、ICH等の情報を収集し国内外の状況を分析、整理して代替法利用の考え方をまとめた。
2-2.「使用動物数の削減」のための考え方の整理、提案
論文調査やアンケートにより状況を把握することに努め、ヒアリングを実施して動物実験計画の立案、再現性ある実験方法、結果の解析等について理解を深め使用動物数削減の考え方をまとめた。
1-1.アンケートによる現状把握
基本指針に明記されている動物実験に関する「自己点検」「外部検証」「情報公開」と「使用動物数の削減」や「代替法の利用」に関して調査し、平成28年度の特別研究の結果と比較して状況の変化を解析した。
1-2.自己点検、自己評価を促すツールの開発
点検項目は、平成28年度特別研究の成果である「自己点検自己評価表の内容」を基本とし、国際動向にも対応できる内容とした。PDFファイルに自動変換されるなど、情報公開等に活用できるような配慮もなされた。
2)「代替法の利用」「使用動物数の削減」の対応について
2-1.「代替法の利用」のための考え方の整理、提案
論文調査やアンケートにより情報を収集した。さらに、ヒアリングを実施して日本動物実験代替法評価センター、日本実験動物代替法学会、ICATMの取り組みやOECDガイドライン、ICH等の情報を収集し国内外の状況を分析、整理して代替法利用の考え方をまとめた。
2-2.「使用動物数の削減」のための考え方の整理、提案
論文調査やアンケートにより状況を把握することに努め、ヒアリングを実施して動物実験計画の立案、再現性ある実験方法、結果の解析等について理解を深め使用動物数削減の考え方をまとめた。
結果と考察
アンケートにおいて598機関から回答を得た。動物実験施設を有し、かつ動物実験を実施しているのは200機関であり、135が民間の機関であった。また、226機関が動物実験を委託していることがわかった。平成28年度の調査結果と比較したところ、動物実験を実施している機関が減少し、外部委託する機関が増加していた。基本指針を遵守する機関が増えていることも示された。
自己点検・評価シートは、記載された項目にチェックを入れることで必須と考えられる項目を点検できるなど、機能性に優れており、シートの活用により基本指針の遵守状況の向上が期待できる。
代替法の利用の実現には、情報収集のみならずそれを活用、応用する知識と開発力が必要となる。新規代替法の開発、既存の代替法の改良、国際的なバリデーションの実施など、ステップを踏んで取り組むことの重要性について確認し、代替法の利用を意識することの意義が大きいことを示した。
使用動物数の削減は、様々な事項に配慮し熟考して動物実験に取り組むことで実現できることを確認した。立案時の検討が極めて重要であり、実験方法、得られた結果の解析方法などを十分に考えて実施する必要あることを示した。健全な環境での実験やデータベースなどの活用も有用であることを示した。
自己点検・評価シートは、記載された項目にチェックを入れることで必須と考えられる項目を点検できるなど、機能性に優れており、シートの活用により基本指針の遵守状況の向上が期待できる。
代替法の利用の実現には、情報収集のみならずそれを活用、応用する知識と開発力が必要となる。新規代替法の開発、既存の代替法の改良、国際的なバリデーションの実施など、ステップを踏んで取り組むことの重要性について確認し、代替法の利用を意識することの意義が大きいことを示した。
使用動物数の削減は、様々な事項に配慮し熟考して動物実験に取り組むことで実現できることを確認した。立案時の検討が極めて重要であり、実験方法、得られた結果の解析方法などを十分に考えて実施する必要あることを示した。健全な環境での実験やデータベースなどの活用も有用であることを示した。
結論
基本指針の遵守状況について平成28年度の特別研究と今回の調査結果を比較したところ、すべての項目で改善されていることが判ったが、厚生労働省や主導すべき立場にある者は決して満足することなく継続した啓蒙が必要である。
自己点検、自己評価することは意識の向上に繋がる。作成した点検・評価シートが広く活用されることで遵守状況向上が期待できる。
3Rsのうちの「代替法の適用」と「使用動物数の削減」は、理解していても具体的にどのように取り組んで良いかわかりづらいところがある。結果的には、基本指針を遵守し、論文やガイドラインからの情報収集を怠らず、計画から解析までを正しい手法で実施することが適正な動物実験の在り方であり、「代替法の適用」や「使用動物数の削減」の実現に繋がることになる。
自己点検、自己評価することは意識の向上に繋がる。作成した点検・評価シートが広く活用されることで遵守状況向上が期待できる。
3Rsのうちの「代替法の適用」と「使用動物数の削減」は、理解していても具体的にどのように取り組んで良いかわかりづらいところがある。結果的には、基本指針を遵守し、論文やガイドラインからの情報収集を怠らず、計画から解析までを正しい手法で実施することが適正な動物実験の在り方であり、「代替法の適用」や「使用動物数の削減」の実現に繋がることになる。
公開日・更新日
公開日
2021-05-31
更新日
-