文献情報
文献番号
202005005A
報告書区分
総括
研究課題名
日中韓における少子高齢化の実態と対応に関する研究
課題番号
20BA2001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所)
研究分担者(所属機関)
- 小島 克久(国立社会保障・人口問題研究所 情報調査分析部)
- 竹沢 純子(国立社会保障・人口問題研究所 企画部)
- 中川 雅貴(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
- 佐々井 司(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
- 佐藤 格(国立社会保障・人口問題研究所)
- 蓋 若エン(ガイ ジャクエン)(国立社会保障・人口問題研究所)
- 菅 桂太(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
- 守泉 理恵(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
全世界で人口少子高齢化が進行する中、日本、韓国、中国沿岸部は、その先端を行っているといっても過言ではない。しかしながら、日中韓の少子高齢化の進行状況は必ずしも同様ではなく、政策対応にも濃淡がある。本研究は、出生率・死亡率をはじめとした人口指標を用い、それらの変動をもたらす要因とそれに対する政策的対応について、少子化対策、家族政策、就学・就業と離家・パートナーシップの関係、医療・介護政策を軸に、日中韓における状況を分析し、その効果を比較することを目的としている。
研究方法
対象とする研究分野のうち、今年度は、少子化対策(日中韓台湾)、出産サービス(日中韓台湾欧米)、住宅政策(シンガポール・韓国)、UHC・国民皆保険体制(日中韓)、介護制度(日中韓台湾)、新型コロナウィルス感染症対策(台湾)、年金制度の制度(日中韓モンゴル)、外国人受け入れ(台湾)、人口統計制度(日中韓)について、資料収集、比較分析を進めた。
また、令和2年度は、新型コロナウィルス感染症により、予定していた海外出張がすべて中止となったため、中韓の少子高齢化専門家のオンライン講演会・ワークショップを行い、情報収集、意見交換を行った。
また、令和2年度は、新型コロナウィルス感染症により、予定していた海外出張がすべて中止となったため、中韓の少子高齢化専門家のオンライン講演会・ワークショップを行い、情報収集、意見交換を行った。
結果と考察
日韓では2020年に少子化に関する政府政策が刷新され、政策分野は拡大の一途である。日本の第4次少子化社会対策大綱においてはAIやICTなどの科学技術の活用のほか、働き方改革に伴う仕事と家庭の両立支援、保育サービスの拡充、男性の家事・育児参画促進、保育無償化、不妊治療の保険適用などが拡充されている。韓国の第4次低出産・高齢社会基本計画においては、男女平等や生活の質の向上が強く打ち出されている。一方中国では2016年に二人っ子政策の全面実施となり、第14次5カ年計画において、政府文書として初めて「適度生育水平」、つまり適度な出生率、という言葉が用いられた。日中韓の少子化対策は、出生率を低下させるための家族計画政策から反転して策定されたといえるが、その転換点は日本で1995年、韓国で2006年、中国で2016年とおおむね10年のずれがある。
出産サービスに注目すれば、中韓および欧米に比較して、著しく低い無痛分娩率、および長い入院期間、正常分娩に対する現金給付、と日本の特殊性が明らかになった。ただし、長い入院期間は、中韓における産後ケア施設との関連も考えられる。
若者の結婚・家族形成支援に住宅政策は重要な位置を占めると考えられ、住宅政策を人口政策としてとらえ、シンガポール、韓国、日本の比較分析を試みた。シンガポールにおいては、国家と将来について利害を共有してもらうための持ち家社会の実現、という独自の基本理念があり、寛大な支給が実施されているが、韓国、日本でも新婚者、若者を対象とした住宅政策が始まっている。
医療・介護制度は、高齢化に応じて制度創設、改革と、対応を進めている。いずれの国も、UHCを達成しており、公的介護制度も全国で、もしくはモデル地区で実施されている。それぞれの制度の類似点・相違点を整理したうえで、それら制度を構築する要素を細かく分類し、選択肢とその選択の検討ポイントを提示することで、他地域にも有用な政策リストが作成できるだろう。
公的年金制度のあり方を検討するには高齢化のスピードが非常に重要なポイントとなる。急速な高齢化に対応するためには、年金財政の長期的な見通しを、いくつかのシナリオを元に計算し、政策に反映させることが重要である。
少子高齢化に応じて東アジアの外国人受け入れも活発化してきている。その中でいち早く政策を整備した台湾では、外国人労働者の受け入れが産業構造や人口動向を反映した労働需要に応じて変化している。一方、1980 年代後半以降、労働力不足に起因した不法就労外国人問題が顕在化したこと、外国人の増加による出生への影響は限定的であることなどは日本と同様である。外国人受入れにも、東アジア特有の共通点があることが想定される。
出産サービスに注目すれば、中韓および欧米に比較して、著しく低い無痛分娩率、および長い入院期間、正常分娩に対する現金給付、と日本の特殊性が明らかになった。ただし、長い入院期間は、中韓における産後ケア施設との関連も考えられる。
若者の結婚・家族形成支援に住宅政策は重要な位置を占めると考えられ、住宅政策を人口政策としてとらえ、シンガポール、韓国、日本の比較分析を試みた。シンガポールにおいては、国家と将来について利害を共有してもらうための持ち家社会の実現、という独自の基本理念があり、寛大な支給が実施されているが、韓国、日本でも新婚者、若者を対象とした住宅政策が始まっている。
医療・介護制度は、高齢化に応じて制度創設、改革と、対応を進めている。いずれの国も、UHCを達成しており、公的介護制度も全国で、もしくはモデル地区で実施されている。それぞれの制度の類似点・相違点を整理したうえで、それら制度を構築する要素を細かく分類し、選択肢とその選択の検討ポイントを提示することで、他地域にも有用な政策リストが作成できるだろう。
公的年金制度のあり方を検討するには高齢化のスピードが非常に重要なポイントとなる。急速な高齢化に対応するためには、年金財政の長期的な見通しを、いくつかのシナリオを元に計算し、政策に反映させることが重要である。
少子高齢化に応じて東アジアの外国人受け入れも活発化してきている。その中でいち早く政策を整備した台湾では、外国人労働者の受け入れが産業構造や人口動向を反映した労働需要に応じて変化している。一方、1980 年代後半以降、労働力不足に起因した不法就労外国人問題が顕在化したこと、外国人の増加による出生への影響は限定的であることなどは日本と同様である。外国人受入れにも、東アジア特有の共通点があることが想定される。
結論
少子高齢化は現在では日中韓に共通した課題であるが、その開始時点が異なっていることから、これまでの施策の経緯も異なっている。このような、少子高齢化のフェーズにより異なる政策を整理すれば、日中韓相互において、また今後少子高齢化が進むと思われる他地域の中・低所得国に応用可能な要素が抽出されるのではないかと考えられる。
公開日・更新日
公開日
2021-07-06
更新日
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