DNA塩基配列変化を直接検出する遺伝毒性試験法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200734028A
報告書区分
総括
研究課題名
DNA塩基配列変化を直接検出する遺伝毒性試験法の開発に関する研究
課題番号
H18-食品-若手-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
増村 健一(国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部)
研究分担者(所属機関)
  • ぴーたー ぐるーず(国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
内因性、外因性の遺伝毒性物質による突然変異の誘発を定量的に解析する場合、従来の方法では標的遺伝子の表現型の変化に基づいて突然変異を検出しているが、表現型の変化をもたらす遺伝子は限られており、個体を用いる場合は検出可能な対象臓器が限定されるという問題もある。本研究では、制限酵素処理と定量的PCR法を組み合わせて遺伝子の表現型に依存せずにDNA中の突然変異を直接検出する方法の開発を目的とした。
研究方法
ヒトゲノムDNAのP53遺伝子第6イントロン内、マウスゲノムDNAのP53遺伝子第1イントロン内、マウスmtDNAのCYTB遺伝子内にある制限酵素TaqIの認識配列(5’-TCGA-3’)を標的とした。標的配列を含む約1 kbの領域をdUTP存在下でPCR法により増幅し、磁気ビーズと結合させてプローブとした。DNAを5種類の制限酵素で断片化し、プローブとハイブリダイズさせて標的DNAを選択的に回収した。標的/プローブ二本鎖DNAを制限酵素TaqIで処理すると、変異した標的配列を含むDNAだけがTaqIによる切断を免れる。TaqIによる変異DNAの選択の後にuracil DNA glycosylaseによりプローブDNAを分解した。TaqIで分解されなかった標的DNAの数を、定量的PCR法により求めた。
結果と考察
昨年度はヒト培養細胞を用いて変異DNAの検出を試みたが、標的DNAの回収効率が0.1%以下と低かった。今年度はヒトゲノムDNAについてプローブデザイン変更とハイブリダイゼーションの条件検討を行い、数%?10%の回収率が得られた。がん組織では高頻度でランダムなDNA変異が誘発されることから、ヒト大腸がん由来のゲノムDNAから標的DNAを回収してTaqI処理による選択を行った結果、変異DNAが検出された。マウス肝臓から抽出したゲノムDNAおよびmtDNAを標的として直接検出法の検討を行った。検出感度を改善するためには、不完全なTaqI処理に起因する擬陽性反応の克服が重要な課題と考える。
結論
塩基当たり10^-8と予想されるゲノムDNA中の突線変異を直接検出するためには、(1)標的DNA断片の回収効率の向上、(2)定量的PCRの検出効率に影響を与える非特異的増幅産物の低減、および(3)制限酵素処理段階で生じる擬陽性の克服が重要である。

公開日・更新日

公開日
2008-03-14
更新日
-

文献情報

文献番号
200734028B
報告書区分
総合
研究課題名
DNA塩基配列変化を直接検出する遺伝毒性試験法の開発に関する研究
課題番号
H18-食品-若手-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
増村 健一(国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部)
研究分担者(所属機関)
  • ぴーたー ぐるーず(国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
内因性、外因性の遺伝毒性物質による突然変異の誘発を定量的に解析する場合、従来の方法では標的遺伝子の表現型の変化に基づいて突然変異を検出しているが、表現型の変化をもたらす遺伝子の種類が限られ、検出可能な対象臓器等が限定されるという問題がある。そのような理由から、遺伝子の表現型に依存せずに突然変異を高感度かつ簡便に検出する手法の確立が望まれている。本研究では、制限酵素処理と定量的PCR法を組み合わせてDNA中の突然変異を直接検出する方法の開発を目的とした。
研究方法
ヒトゲノムのP53遺伝子第6イントロン内、マウスゲノムのP53遺伝子第1イントロン内、マウスミトコンドリアのCYTB遺伝子内にある制限酵素TaqIの認識配列(5’-TCGA-3’)を標的とした。標的配列を含む約1 kbの領域をdUTP存在下でPCR法により増幅し、磁気ビーズと結合させてプローブとした。DNAを5種類の制限酵素で断片化し、プローブとハイブリダイズさせて標的DNAを選択的に回収した。標的/プローブ二本鎖DNAをTaqIで処理すると、変異した標的配列を含むDNAだけが切断を免れる。TaqIによる変異DNAの選択の後にuracil DNA glycosylaseによりプローブDNAを分解した。TaqIで分解されなかった標的DNAの数を定量的PCR法により求めた。
結果と考察
ヒトゲノムDNAについてプローブデザイン変更とハイブリダイゼーションの条件検討を行った。高頻度でランダムなDNA変異が誘発されるヒトがん由来のゲノムDNAから標的DNA断片を回収して制限酵素TaqI処理による選択を行った結果、変異DNAが検出された。マウスゲノムDNAおよびmtDNAを標的として直接検出法の検討を行った。現時点ではmtDNAを標的とした際の検出感度は約3 x 10^-5/塩基であり、従来のレポーター遺伝子を用いた変異検出法に及ばない。不完全なTaqI処理に起因する擬陽性反応の克服が重要な課題と考える。
結論
ゲノムDNA中の低頻度の突線変異(塩基あたり10^-8)を検出するためには、標的DNA断片の回収効率の向上、定量的PCRの検出効率に影響を与える非特異的増幅産物の低減、および制限酵素処理段階で生じる擬陽性の克服が重要である。今後は検出感度と特異性の改善を目指し、直接検出法の有効性ならびに汎用性を検討する。

公開日・更新日

公開日
2008-03-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200734028C

成果

専門的・学術的観点からの成果
制限酵素処理と定量的PCR法を組み合わせてDNA中の突然変異を直接検出する方法の開発を行った。検出感度の向上と効率的なアッセイ法が実現すれば、表現型に依存せずDNA中の任意の部位で直接突然変異を検出する次世代の遺伝毒性試験として応用できることが期待される。
臨床的観点からの成果
特記事項なし
ガイドライン等の開発
特記事項なし
その他行政的観点からの成果
特記事項なし
その他のインパクト
特記事項なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-