高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施推進に係る検証のための研究

文献情報

文献番号
202001017A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施推進に係る検証のための研究
課題番号
20AA2006
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
津下 一代(丹羽 一代)(女子栄養大学)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 隆雄(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 理事長特任補佐室)
  • 岡村 智教(慶應義塾大学 医学部 衛生学公衆衛生学教室)
  • 小嶋 雅代(国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター フレイル研究部)
  • 渡邊 裕(北海道大学 大学院歯学研究院 口腔健康科学分野 高齢者歯科学教室)
  • 田中 和美(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 栄養学科)
  • 樺山 舞(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻)
  • 石崎 達郎(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 飯島 勝矢(国立大学法人 東京大学 高齢社会総合研究機構/未来ビジョン研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
10,578,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究代表者 津下 一代  愛知県健康づくり振興事業団(令和2年4月1月~8月31日)   女子栄養大学(令和2年9月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
厚生労働省は「高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施」について、令和元年にガイドライン発表、2年4月より制度開始となった。本事業では、高齢者施策にかかわる庁内連携、広域連合や関係機関との連携調整、「後期高齢者の質問票」の実施、ハイリスク・アプローチ、ポピュレーション・アプローチ事業等の企画・運営、研修、KDB等による健康課題分析と評価などを効果的かつ効率よく進めていく必要がある。本事業が実効性を挙げるため、また、さらに多くの自治体の実施を促すためには、効果的な実施方法や事業評価法の研究が必要である。本事業で活用される「後期高齢者の質問票」について妥当性の検証や活用法についての知見も求められている。
研究方法
①後期高齢者の質問票の検証:北海道、群馬県、東京都、千葉県、愛知県、大阪府、兵庫県の自治体の協力を得て、通いの場や健診、コホート研究において「後期高齢者の質問票」を実施し、断面調査での指標間の関連、追跡調査、要介護状態との関連、有疾患者における質問票の妥当性の検討を行う。
②自治体を対象とした、高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施の事業検証:研究対象自治体の状況を把握し支援方法について検討する。新型コロナ感染症の影響や新たな取り組みについても聞き取り調査を行う。
③高齢者の保健事業プログラムの進捗に向けた進捗チェックリストの開発:一体的実施では、事業全体の進捗を俯瞰し、関係者との協力体制を円滑に進めるためのツールが必要であるため、進捗チェックリストを開発する。研究班会議にて作成方針を検討→既存の進捗チェックリストを確認→素案作成→研究班会議での意見交換・修正→自治体での試行実施と意見聴取→修正および解説書の作成→発出方法の検討の順に、作業を進める。
④保健事業対象者の抽出方法の検討および⑤高齢者の保健事業をサポートとするKDB活用ツールの開発:④、⑤については関連性を持たせて実施する。準備段階としてKDBについて情報収集をおこなう。③のチェックリスト作成時に各事業とKDB帳票の関連を整理する。
結果と考察
①後期高齢者の質問票の検証:7つの分担研究において横断的、縦断的、探索的研究が実施された。質問票は15項目ではあるが、高齢者の保健事業のスクリーニングやフレイルの啓発における有用性が示唆された。慢性疾患を保有する患者層でもその有用性について確認している。今年度9月末時点、全国の市町村の81.7%が本質問票を活用していることから、効果的な活用法について更なる研究が必要である。
②自治体を対象とした、高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施の事業検証:今年度はコロナ対策、緊急事態宣言のため、保健事業の低迷が心配されたが、自粛生活におけるフレイルの進展を防止するため、質問票の郵送への切り替え、個別アプローチ、コロナ禍での生活の仕方の啓発等が実施されていた。また、レセプト(医療・介護)・健診ともにKDB上に情報がない高齢者に対するアウトリーチ支援により住民とのつながりがりが構築された事例が報告された。
③進捗チェックリストの開発:ガイドライン、保健事業の実践プロセスに沿った進捗管理チェックリストを開発、冊子ならびにWebにて公開した。Web版はエクセル版で自治体の実情に合わせた改変が可能である。自治体から本事業の推進には必須であるとの意見があった。
④保健事業対象者の抽出方法の検討、および⑤KDB活用ツール開発:KDBの仕様に関する情報収集をおこない、研究班・関係者でのディスカッションを進めている。KDBからの保健事業対象者抽出法について、帳票との関連を整理、次年度のツール開発につなげていく予定である。
結論
高齢者質問票は15問ではあるが、高齢者の生活習慣や食習慣、身体状況について、再現性を持って把握でき、多面的なフレイルをとらえうるツールであることが示唆された。研究で得られた知見を保健事業に活用していくことが肝要である。
進捗チェックリスト開発にあたっては、ガイドライン、既存保健事業チェックリスト、研究者の知見、現場の意見を参考に令和3年度版を作成した。施策編については良好な感触である。今後さらに広く市町村に活用いただき、ブラッシュアップに努めたい。
コロナ禍において高齢者のフレイル予防、重症化予防はますます重要な課題として認識されている。自治体の行う保健事業に資する研究を加速すべきと考えている。

公開日・更新日

公開日
2022-06-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-06-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202001017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,360,000円
(2)補助金確定額
13,360,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,443,107円
人件費・謝金 2,739,734円
旅費 246,696円
その他 5,042,585円
間接経費 2,922,000円
合計 13,394,122円

備考

備考
自己資金 34,122円。令和2年度は新型コロナ感染症により、班会議やヒアリングのオンライン化、調査のための出張が減少し、旅費の支出が大幅に減少した。一方、地域における健診・通いの場での調査において、感染対策を徹底するための物品費が増加、また集合型ワークショップに代えて「一体的実施のためのチェックリストガイド」を作成し、自治体に配布し評価を受けることにするなど、研究方法を変更したため「その他」経費が増加したが、旅費の減少分が大きく確定額と支出の差が発生した。

公開日・更新日

公開日
2022-03-14
更新日
-