新しい標準減圧表作成に伴う実地調査および検証調査研究

文献情報

文献番号
200733024A
報告書区分
総括
研究課題名
新しい標準減圧表作成に伴う実地調査および検証調査研究
課題番号
H19-労働-一般-004
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
眞野 喜洋(東京医科歯科大学 大学院保健衛生学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 山見 信夫(東京医科歯科大学 大学院保健衛生学研究科)
  • 芝山 正治(駒沢女子大学 人文学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 当研究の目的は新しい標準減圧表が減圧症発症予防対策に十分満足し得るのかを検証し調査研究することである。高気圧作業領域で従来から注目されていた急性期の減圧症のみならず無菌性骨壊死を含む慢性減圧症対策でもあり、今まで無害とされていた無症候性気泡つまり silent bubbles といえども、この形成を少しでも減少させる必要性が叫ばれているからに他ならない。新しい減圧表は、減圧中に純酸素吸入を採用することで、身体内に形成される無数のsilent bubblesの更なる消失を計ることが期待され、国内はもとより国際的にも広く普及できうるものと期待される。
研究方法
新しい減圧表の検証作業
(1) 潜水及び圧気土木作業現場の検証調査(複数箇所の作業所に依頼)
(2) マルチレベル潜水作業用の不活性ガス分圧計算プログラムの一部改正
(3) 潜水及び圧気作業のプロファイル調査と減圧症危険性の評価
(4) 酸素毒性と活性酸素の係わりの更なる分析、文献検索
(5) 第 3 者の外部審査による検証(Dr.Nishi)
結果と考察
 現行標準減圧表の問題点・矛盾点は、作業深度(圧力)が高い、または作業時間が長い場合には減圧症の発症率が増大するのか、酸素減圧を禁止する理由は何か、空気での潜水可能水深が90mまであることが安全なのか等々である。日本では昭和36年以来改善改正は凍結されてしまい、諸外国の減圧表よりかなり遅れた古い概念による減圧表となっている。これらの矛盾点を修正し得る現行の減圧表別表第1、別表第2、別表第3(繰り返し潜水修正時間表)に代わる、諸外国の減圧表に勝るとも劣らない減圧表をほぼ完成させることができたので、そのモデル減圧表が我々の考えている通りに実用化された場合の安全性向上が十分に満足なものであると推論できるものかどうかについては欧米の最先端研究者(Dr.Nishi)に外部評価してもらったところ、一部に修正箇所を指摘されたので改正した「新しい減圧表」(空気作業用減圧表、混合ガス作業用減圧表)を完成させることができた。同時に「新しい減圧表」の実地検証を行ったところ、別表第1(圧気作業用)の減圧症発症率が0.72%(1980年~2007年6月)であったのに対して、「新しい減圧表」では0.087%(4作業所)と約1/10の発症率に抑えることができた。
結論
 種々の問題点と求められる課題が解決され、高気圧作業安全衛生規則、それに係わる労働安全衛生法ならびに労働安全衛生規則に改善改訂の資料を提言することが本研究の目的達成によってなされたと確信している。

公開日・更新日

公開日
2008-06-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200733024C

成果

専門的・学術的観点からの成果
現行法の減圧表別表第1、別表第2、別表第3に代わりうる新しい減圧表を考案した。高気圧作業安全衛生規則の減圧症予防のために作成された減圧表(別表第1、2、3)は、昭和36年以来改善改正されず、今日に至り、諸外国の減圧表よりかなり遅れた古い概念による減圧表となっているものを新しい理論式により減圧表を考案した。
臨床的観点からの成果
新しい減圧表が考案される経過で、国際的にも本分野で評価されている欧米の最先端研究者Dr.Nishiに外部評価してもらい完成させることができた。同時に「新しい減圧表」の実地検証を行ったところ、別表第1(圧気作業用)の減圧症発症率が0.72%(1980年~2007年6月)であったのに対して、「新しい減圧表」では0.087%(4作業所)と約1/10の発症率に抑える成果を得た。
ガイドライン等の開発
別表第2の水深90m(0.88MPa)までの空気減圧表は問題が多く、上限を設定すべきである。圧気作業あるいは潜水作業においては、水深35m(0.34MPa)以上においてはヘリウムによる混合ガス呼吸システムを使用することが望ましい。減圧表適応作業水深(圧力)は水深8m(0.08MPa)から始められるべきであろう。減圧を要する作業においては酸素減圧(潜水は船上減圧)が原則的に採用されるべきであろう。
その他行政的観点からの成果
半世紀にわたり現行の減圧表が手つかずで今日に至っているが、本研究により最新の理論に基ずく国際的に評価された労働衛生学的に安全な減圧表が完成されたと確信している。これは今後の法改正の重要な資料となり得る貢献が出来たと考えている。
その他のインパクト
現行減圧表の厳守だけでは、減圧症予防に対する安全意識が解消されず、圧気(潜水)作業者はより安全な減圧表を採用しているのが現状である。平成20年3月4日に「新しい減圧表の説明会」を関係者に集まっていただき(140名の参加)、説明と同時に新しい減圧表に対する質問、要望などをディスカッションするとともに、普及・啓発活動を行った。

発表件数

原著論文(和文)
5件
潜水作業に伴う体内窒素ガス溶解量と減圧症発症の危険性評価。潜水(圧気)作業後の高所移動の危険性。酸素毒性に関する生体反応の評価。
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
圧気(潜水)作業に伴う体内窒素ガス溶解量と減圧症発症の危険性評価。酸素毒性に関する生体反応の評価。
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
新しい減圧表説明会('08.3/4)開催(140名参加)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
芝山正治、山見信夫、眞野喜洋他
北海道と伊豆諸島の漁業潜水者の潜水プロフィールからみた減圧症予防対策
日本高気圧環境・潜水医学会誌 , 42 (1) , 109-113  (2007)
原著論文2
芝山正治
レジャーダイバーの減圧障害(DCI)発生件数を推移
駒沢女子大学研究紀要 , 14 , 103-109  (2007)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
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