外国人患者の受入環境整備に関する研究

文献情報

文献番号
202001001A
報告書区分
総括
研究課題名
外国人患者の受入環境整備に関する研究
課題番号
H30-政策-指定-002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
北川 雄光(慶應義塾大学医学部 外科学(一般・消化器外科))
研究分担者(所属機関)
  • 柴沼 晃(東京大学大学院医学系研究科 国際地域保健学教室)
  • 田倉 智之(東京大学 大学院医学系研究科 医療経済政策学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
9,897,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
在留外国人・訪日外国人観光客の急増を背景とし、政府は、2015年「健康・医療戦略」において「在留外国人等が安心して日本の医療サービスを受けられる環境の整備」を掲げ、具体的には「日本再興戦略2016」に基づき、外国人が多い地域を中心に「外国人患者受入れ体制が整備された医療機関」を2020年までに100箇所整備する事を目標に整備を進めてきた。最近では、「未来投資戦略2017」において、地域の実情を踏まえながら、外国人患者の受入れ体制の裾野拡大に着手し、受入れ環境の更なる充実を目指している。
しかし、これまでの事業から、受入れ体制の裾野拡大を図っていく為には、外国人患者受入数が多くなく、受入れ体制整備の為の情報や社会資源が乏しい地域の医療機関への支援や、それぞれの地域の実情に応じた外国人患者受入れ体制整備構築(国や地方自治体の役割の明確化)等の課題へ対処していく必要があることが明らかとなっており、本研究では、これらの諸課題への解決策や今後の施策の方向性を決める根拠や基礎資料を得ることを目的とする。
研究方法
1年目、2年目では、医療機関における外国人患者受入れに関する既存の研究成果や調査等を収集・分析、マニュアルの枠組み案を設定。その上で、その項目や盛り込むべき内容について3~5都道府県、10医療機関、3名~5名程度の専門家を対象に聞き取り調査を行い、厚生労働省と調整・検討を行い、マニュアルを完成させ、最終年度にあたる3年目は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けたものの、既存マニュアルの分析、新型コロナウイルス感染症に関する動向施策を含めた文献調査を継続し、厚生労働省と調整・検討を行った。
結果と考察
<北川班>
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けながらも、医療機関における感染症対策の観点も含めた文献調査や国際学会での情報収集を遂行した。調査結果は「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル」に反映し、特に、新型コロナウイルス関連の施策動向についての言及や、現場対応の一助となる外国人患者受入れ持の簡易手順書やチェックリスト、そのほか有用な情報サイト一覧を追記するなど、本研究成果物となる医療機関向けマニュアルをより実用的な内容へと更新した。
<柴沼班>
新型コロナウイルス感染症に関する対応も含め、地方自治体及び保健所等における外国人患者受入環境整備に関する情報収集を行った。特に、47都道府県における外国人向け保健医療のオンライン情報提供状況に関する調査を実施した。それらを踏まえ、「地方自治体のための外国人患者受入環境整備に関するマニュアル」を更新した。
<田倉班>
医療費用と外国価格を市場原理の観点から分析し、費用と利益から価格を決定する手法を選択した。この研究は、予備調査と拡張調査の2つから構成され、国際調査で補足された。臨床研究として、比較的頻度の高い疾患を選択し、3つの病院で24人の外来患者と4人の入院患者を登録し、統計学的検定と一元感度分析も実施しつつ、FVの治療にかかる原価と報酬を観察し日本人のそれと比較した。さらに、咽頭炎の日本人観光客に対する海外医療機関のサービス提供について、保険会社3社から収集した18人の支払額を分析した。
結論
本研究で得られた研究結果は「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル」「地方自治体のための外国人患者受入環境整備に関するマニュアル」「訪日外国人の診療価格算定方法マニュアル」の成果物として厚生労働省のホームページで公開すると同時に、関連自治体への通知として周知された。同マニュアルの利用状況を確認しつつ、国内の外国人患者受入体制整備状況を評価するとともに内容を随時見直すことが求められる。特に近年の新型コロナウイルス感染症拡大による影響を受け、感染症予防や各方面での対策についてもさらなる検討と情報の更新を続けていく。
診療価格算定研究において得られた知見は、「診療価格の算定マニュアル」に加えて算定ソフトウェアに反映され、厚生労働省のホームページで公表されるとともに、研修セミナーの開催や自治体などの関係団体への通知が行われた。これらの情報提供および関連するセミナーは、訪日外国人を受け入れる病院の体制強化および関連する連携機能の基盤整備(医療政策への基礎資料の提供)に貢献することが期待される。結果として、医療機関の安定経営、ひいては訪日外国人に対する安心感の醸成や観光政策への間接的な支援になると推察される。

公開日・更新日

公開日
2022-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-30
更新日
2023-01-20

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202001001B
報告書区分
総合
研究課題名
外国人患者の受入環境整備に関する研究
課題番号
H30-政策-指定-002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
北川 雄光(慶應義塾大学医学部 外科学(一般・消化器外科))
研究分担者(所属機関)
  • 柴沼 晃(東京大学大学院医学系研究科 国際地域保健学教室)
  • 田倉 智之(東京大学 大学院医学系研究科 医療経済政策学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
政府は、2015年「健康・医療戦略」において「在留外国人等が安心して日本の医療サービスを受けられる環境の整備」を掲げ、外国人が多い地域を中心に「外国人患者受入れ体制が整備された医療機関」を2020年までに100箇所整備する事を目標に整備を進めてきた。最近では、「未来投資戦略2017」において、地域の実情を踏まえながら、外国人患者の受入れ体制の裾野拡大に着手し、受入れ環境の更なる充実を目指している。
しかし、これまでの事業から、受入れ体制の裾野拡大を図っていく為には、外国人患者受入数が多くなく、受入れ体制整備の為の情報や社会資源が乏しい地域の医療機関への支援や、それぞれの地域の実情に応じた外国人患者受入れ体制整備構築(国や地方自治体の役割の明確化)等の課題へ対処していく必要があることが明らかとなっている。
本研究では、(1)医療機関における外国人患者受入れの体制整備に関する研究(2)都道府県における外国人患者受入れ体制整備に関する研究(3)インバウンド事業推進のための基礎的研究、(4)訪日外国人に対する適切な診療価格に関する研究、以上の 4 つの研究により、これらの諸課題への解決策や今後の施策の方向性を決める根拠や基礎資料を得ることを目的とする。
研究方法
厚生労働省が「地域における外国人患者受入体制のモデル構築事業」を行った5都道府県(北海道、東京都、三重県、大阪府、京都府)に伴走する形で、1年目に実施した調査に加え、外国人患者受入体制に関係する医療機関、医療通訳者、コールセンター運営事業者などへの聞き取り調査等を踏まえ、2年目に「地方自治体のための外国人患者受入環境整備に関するマニュアル」を作成した。さらに、3年目には、新型コロナウイルス感染症に関する対応も含め、地方自治体及び保健所等における外国人患者受入環境整備に関する情報収集を行った。また、47都道府県における外国人向け保健医療の英語でのオンライン情報提供状況に関する調査を実施した。それらを踏まえ、「地方自治体のための外国人患者受入環境整備に関するマニュアル」を更新した。
加えて、47都道府県における外国人向け保健医療の英語でのオンライン情報提供状況については、保健に関するオンライン情報提供のフレームワークであるQUality Evaluation Scoring Tool (QUEST) for online articles about healthをもとに、独自の評価フレームワークを作成した1。同票かフレームワークをもとに、2名の英語ネイティブ・スピーカーが、検索エンジンGoogle(www.google.co.jp)を用いて、都道府県名に加えて以下の6つのキーワードのいずれかに該当するウェブサイトを検索した。
結果と考察
①外国人患者の受入れを円滑に行いトラブルを防止するためには、既存の医療機関の体制では不十分であること、②一口に「外国人患者」といっても、「在留外国人患者」、「訪日外国人旅行者患者」、「医療目的の外国人患者」では、その受け入れを円滑に行うために留意すべき点には違いあること、③特に「訪日外国人旅行者患者」については、医療費が100%自己負担になり、医療文化・医療習慣の違いが大きく、言語の壁もあるためトラブルになりやすいこと、④医療機関において外国人患者の受け入れを円滑に行うためには、海外旅行保険や医療アシスタンスなどの知識のほか、これまで医療機関には経験のない連携関係や取り組みが必要であること、⑤外国人患者の受入れに関して先駆的な取り組みを行っている医療機関の取り組み内容には共通部分が多いこと、⑥在留外国人や外国人旅行者の多い国の中には、すでに医療機関や医療従事者向けの医療通訳や宗教・文化対応、未収金防止対策のガイドラインなどが発行され活用されていることなどが明らかとなった。これらの内容を整理して、厚生労働省と調整の上、医療機関が外国人患者の受け入れを円滑に行うために最低限知っておくべき知識や情報をマニュアルとしてまとめた。
結論
本研究の全期間を通じて、新型コロナウイルス感染症拡大の影響は多少あったものの、当初の目的であった外国人患者受入れに関する各方面への指標となるガイドラインに該当するマニュアル作成は達成できた。しかしながら、外国人患者の動向や医療機関の体制整備における課題は流動的である。外国人患者が日本で医療サービスにアクセスするには、様々な障壁や課題が存在し、日本における医療制度や医療提供体制、地域における外国人患者受入状況に関して情報が伝わっていないことが本邦での課題事項として明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2022-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-30
更新日
2023-06-01

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202001001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、医療機関における外国人患者受入れに関する既存の研究成果や調査等を収集・分析するとともに、外国人患者の受け入れについて先駆的な医療機関に対する国内の医療機関に対する聞き取り調査を行った結果、厚生労働省と調整の上、医療機関が外国人患者の受け入れを円滑に行うために最低限知っておくべき知識や情報をマニュアルとしてまとめた。
臨床的観点からの成果
本研究の結果、診療価格については、通常診療以外の追加費目を積分した「外国人診療の原価追加分」と通常診療に相当する範囲で外国人の診療単価が増加する「通常診療の原価増加分」を合算し、現行の診療報酬点数を倍数計算する方式が適当と思慮された。その理論・手法に基き7疾病の医療原価の試算を行ったところ、参考値であるものの、今回検証した病態は1.22~3.66倍であり、うち外来は1.31~2.21倍(咽頭炎、蕁麻疹、膀胱炎)、入院で1.22~3.66倍(重症肺炎、虫垂炎、胆管炎、大腿骨折)となった。
ガイドライン等の開発
本研究では、医療機関が自院の外国人患者の受け入れ状況や機能・役割に応じた外国人患者の受入れ体制整備の参考となる『外国人患者受入れのための医療機関向けマニュアル』を作成した。当該マニュアルは外国人患者の受け入れを円滑に行うため医療機関が知っておくべき基本的なポイントを紹介しているが、今後、わが国の在留外国人や訪日外国人旅行者、医療目的の外国人患者の増加や多様化が進めば、更なる情報を加える必要も生じてくるものと考えられる。
その他行政的観点からの成果
厚生労働省が「地域における外国人患者受入体制のモデル構築事業」を行った5都道府県に伴走する形で、①都道府県が地域固有の実情を把握する為の仮説構築、データ収集、データ分析を支援、②都道府県が体制整備を行う為の支援を行い、更に他の都道府県に取組みを横展開する為の支援を行った。その成果として、外国人患者が適切な保健医療サービスを受けられるような連携体制整備を進めるための「地方自治体のための外国人患者受入環境整備に関するマニュアル」を作成した。
その他のインパクト
・「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル」は第1回(2018.11.14)、第4回(2019.3.11)、第5回(2019.3.29)、第7回(2020.2.28)「訪日外国人旅行者等に対する医療の提供に関する検討会」で用いられ、医療機関における外国人患者受入整備のあり方が議論された。

発表件数

原著論文(和文)
3件
・ 田倉智之. 麻酔・手術の経営パフォーマンスや医療資源の生産性に関して. 日本臨床麻酔学会誌. Vol.39 No.3. pp.335-344. 2019
原著論文(英文等)
4件
・ Miller R, Ong KIC, Choi S, Shibanuma A, Jimba M. Seeking connection: a mixed methods study of ment
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
11件
第1回~第11回「訪日外国人旅行者等に対する医療の提供に関する検討会」
その他成果(普及・啓発活動)
2件
「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル」「地方自治体のための外国人患者受入環境整備に関するマニュアル」「訪日外国人の診療価格算定方法マニュアル」は厚生労働省のホームページで公開した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-05-27
更新日
2022-06-23

収支報告書

文献番号
202001001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,040,000円
(2)補助金確定額
12,036,000円
差引額 [(1)-(2)]
4,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,575,294円
人件費・謝金 4,813,934円
旅費 0円
その他 2,505,895円
間接経費 2,143,000円
合計 12,038,123円

備考

備考
収入の「(2)補助金確定額」と支出の「合計」の差額は、自己資金2,123円です。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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