中小建設業者の安全意識向上に資する労働災害損失の計測手法の開発に係る研究

文献情報

文献番号
200733008A
報告書区分
総括
研究課題名
中小建設業者の安全意識向上に資する労働災害損失の計測手法の開発に係る研究
課題番号
H17-労働-一般-009
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
高木 元也(独立行政法人労働安全衛生総合研究所 産業安全研究所人間工学・リスク管理研究グループ)
研究分担者(所属機関)
  • 嘉納成男(早稲田大学理工学術院創造理工学部建築学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
4,680,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 わが国の基幹産業である建設業は労働災害が多く、厚生労働省第11次労働災害防止計画では重点対策業種に指定されている。また、同計画では中小企業の安全衛生確保が重点課題に掲げられ、業者数の殆どを中小業者が占める建設業においては「中小建設業者」の労働災害防止は喫緊の課題である。これまで、中小建設業者の安全活動促進のため各種施策が講じられてきたが、厳しい経営状況にある中小建設業者の多くは目先の利益を優先させ、自主的な安全活動は困難な状況にある。自主的な安全活動促進には企業経営者の安全意識向上が不可欠であり、企業経営者に対し労働災害損失が企業経営に及ぼす影響の大きさを示すことが有効である。
 そこで、昨年度までに構築した労働災害損失額計測手法に基づき、実用的な労働災害損失額計測システムの開発等を行った。
 
研究方法
1.実用的な労働災害損失額計測システムの構築
2.実務者等で構成する「労働災害損失額計測システム実用化研究会」設置による実用化の検討
3.労働災害損失事例調査(3件)の実施
4.労働災害に関する新聞報道内容の調査、一般市民を対象としたアンケート調査等
結果と考察
 労働災害損失額計測システムで対象とする損失は、元請会社及び災害発生時に関係した下請会社の損失とし、労働災害損失事例調査の調査票をベースに計測システムの試作版を作成した。これを「労働災害損失額計測システム実用化研究会」の場において検証し、改良を加えて計測システムを完成させた。
 一方、新聞の報道の調査・分析及びアンケート結果から、建設現場での労働災害の多発は、社会の人々に建設産業や建設現場に対する災害への対応の悪さを印象付け、それらに対する好意度を低下させる結果となることが明らかとなった。
結論
 今後、この計測ソフトウェアを実用化して、中小建設業者の安全意識の向上に役立てるためには、中小建設業界団体等との連携を図って普及に努めることが重要となる。具体策は次のとおりである。今年度、労働安全衛生総合研究所は、中小建設業者を中心に会員企業約2.5万業者で構成される(社)全国建設業協会と連携し、中小建設業者の自主的な安全活動を促進させることを目的に、中小・中堅建設業者を対象としたリスクマネジメント推進のためのアクションプログラム(仮称)を策定した。 その中において、具体的方策の一つに、中小企業経営者の安全意識向上に資する労働災害損失額計測手法の普及を盛り込んだ。次年度以降、各都道府県の建設業協会において、本計測ソフトウェアの説明会・研修会等を検討・実施していく。このことにより、本研究成果の普及が大きく期待できる。
 

公開日・更新日

公開日
2008-06-02
更新日
-

文献情報

文献番号
200733008B
報告書区分
総合
研究課題名
中小建設業者の安全意識向上に資する労働災害損失の計測手法の開発に係る研究
課題番号
H17-労働-一般-009
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
高木 元也(独立行政法人労働安全衛生総合研究所 産業安全研究所人間工学・リスク管理研究グループ)
研究分担者(所属機関)
  • 嘉納 成男(早稲田大学理工学術院創造理工学部建築学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
重要な政策課題である中小建設業者の安全活動推進には企業経営者の安全意識向上が不可欠であり、このためには労働災害損失が企業、産業、社会に及ぼす影響の大きさを示すことが有効である。
本研究は建設労働災害損失について、事業者レベル等から見た経済的損失の計測及び労働災害がもたらす建設産業のイメージ低下等の社会的損失の計測手法の構築等を試みる。
研究方法
1.事業者レベルでみた直接的な経済的損失について
①建設会社ヒアリング調査等に基づく労働災害損失計測項目等の設定
②建設会社対象の労働災害損失計測項目の検証等を目的としたアンケート調査
③仮想価値評価法に基づき社会的信用力の低下等に伴う間接的な経済的損失額の計測試行
④大手総合建設会社の研究協力の下、労働災害損失事例調査の実施
⑤建設業を対象とした労働災害損失額計測システムの開発
⑥労働災害損失額計測システム実用化研究会設置による実用化の検討
2.国民経済レベルでみた経済的損失について
①国民経済レベルの労働災害損失について概念整理、既存関連データの収集・整理
②マクロ的な労働災害損失を産業別 経年別等算出等による計測手法の構築、課題の抽出
3.社会レベルから見た社会的影響に関する要因分析
①社会的影響要因の因果連鎖図の作成
②建設業者及び一般市民の意識をアンケート調査し、労働災害の発生が建設産業の停滞、優秀な人 材の確保の難しさに及ぼす影響等の現状分析
③新聞報道の調査等に基づく社会的損失の分析
結果と考察
最終年度に実用的な労働災害損失額計測システムを開発し、労働災害損失額計測システム実用化研究会において、実用化の検討を行い、一部を修正し計測システムが完成した。
結論
今後は、この計測ソフトウェアを中小建設業者の安全意識の向上にどのように役立てていくかが課題であり、そのためには、中小建設業界団体等との連携を図って普及に努めることが重要となる。
具体策は次のとおりである。今年度、労働安全衛生総合研究所は、中小建設業者を中心に会員企業約2.5万業者で構成される(社)全国建設業協会と連携し、中小建設業者の自主的な安全活動を促進させることを目的に、中小・中堅建設業者を対象としたリスクマネジメント推進のためのアクションプログラム(仮称)を策定した。その中において、具体的方策の一つに、中小企業経営者の安全意識向上に資する労働災害損失額計測手法の普及を盛り込んだ。次年度以降、各都道府県建設業協会において、本計測ソフトウェアの説明会・研修会等を検討・実施していく。

公開日・更新日

公開日
2008-06-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-02-04
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200733008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
建設業における労働災害損失額計測システムを開発した。これまで、建設業の労働災害損失の計測に関する研究は多くは見受けられず、既往研究においては殆どが試算レベルのものであることから、成果は大きいといえる。
臨床的観点からの成果
労働災害損失事例調査を15事例実施し損失項目等の検証等を行うとともに実務者で構成される研究会を設置し計測システムの実用化の検討を行った。
ガイドライン等の開発
建設業における労働災害損失額計測システムの開発。
その他行政的観点からの成果
この計測システムの活用により、中小建設業者の安全意識向上を図り自主的な安全活動を促進させ、より効果的な労働災害防止対策の実施が期待される。
その他のインパクト
次の講演会において、本研究成果を発表した。
①高木元也、日本電気技術者協会四国支部・四国地区電力需用者協会主催、電気関係災障害防止対策講習会、平成18年9月
②高木元也、新宿労働監督署・(社)新宿労働安全基準協会主催、新宿・中野・杉並地区安全衛生大会、平成18年10月
③高木元也、(独)労働安全衛生総合研究所、労働安全衛生重点研究推進協議会シンポジウム、平成19年12月

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
10件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
高木元也、嘉納成男
建設業における中小企業の安全意識向上に資する労働災害損失額の計測手法の構築に関する研究
(独)労働安全衛生総合研究所「労働安全衛生研究」 , 1 (1) , 9-16  (2008)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-