交通労働災害防止のための安全衛生管理手法の高度化に関する研究

文献情報

文献番号
200733003A
報告書区分
総括
研究課題名
交通労働災害防止のための安全衛生管理手法の高度化に関する研究
課題番号
H17-労働-一般-004
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
中村 隆宏(独立行政法人労働安全衛生総合研究所人間工学・リスク管理研究グループ)
研究分担者(所属機関)
  • 篠原 一光(大阪大学大学院人間科学研究科)
  • 臼井 伸之介(大阪大学大学院人間科学研究科)
  • 小川 康恭(独立行政法人労働安全衛生総合研究所健康障害予防研究グループ)
  • 平田 衛(独立行政法人労働安全衛生総合研究所環境計測管理研究グループ)
  • 毛利 一平(独立行政法人労働安全衛生総合研究所人間工学・リスク管理研究グループ )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
7,537,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ハイヤー・タクシー運転手の労働と生活、健康、安全について追跡調査する機会を得た。調査の中心課題は、ハイヤー・タクシー運転労働のような不規則な労働が直接、あるいは生活習慣の修飾を介して健康リスクをもたらすメカニズムに接近することにあるが、労働条件とヒヤリ・ハット事象との関連や、SAS有病率の実態解明など、事故につながる要因についても注目しながら分析を進めた。二回目の追跡調査結果をもとに、労働と生活のあり方が健康に及ぼす影響について検討した。
 また、リアルタイム遠隔管理の実現は、運転者への効果的な支援を実現し、災害発生を未然に防止する効果を発揮するものと期待される。一方、新たな情報通信機器や車載情報機器の導入は、運転者に対して新たな認知的負荷を発生させる可能性がある。情報機器を使用した運転操作中の会話の影響に着目し、運転パフォーマンスに及ぼす影響について検討した。
研究方法
質問紙調査では、308名に対し第二回追跡調査票を送付した。回答が得られた224名(追跡率73%)について、集計・解析をおこなった。
運転パフォーマンスの変化については、夜間の長距離運転を対象にシミュレータを使用した模擬運転実験を行った。副次課題法を用いて運転者の注意パフォーマンス変化を測定し、車載情報機器等を利用して行われる運転操作中の会話の影響について検討した。
結果と考察
 第1回の追跡調査と同様に、労働内容の変化と健康・安全、生活習慣、睡眠と疲労、健康関連QOLとの関連を中心に解析をおこなった。その結果、仕事が増えても減っても安全や疲労、QOLに影響が及ぶ可能性が示唆された。
模擬運転実験では、会話によって主観的眠気が大幅に解消するとともに、注意パフォーマンスが大幅に低下するといったネガティブな影響は明確に把握されなかった。一方、会話中は一部の運転操作が不安定になる場合があることが確認された。
結論
IT技術の更なる進展と労働現場への導入・普及が交通労働災害の防止に及ぼす効果への期待は高く、新技術導入・新たな管理体制の構築推進を図るとともに、一方では、新たな取組みの副作用ともいえるネガティブな部分への対応を図る必要がある。また、タクシー運転労働に関しては、雇用形態が現状のままであれば、労働負担の軽減のためのはずの対策が、必ずしも安全衛生上の効果を生じない場合があると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2008-06-02
更新日
-

文献情報

文献番号
200733003B
報告書区分
総合
研究課題名
交通労働災害防止のための安全衛生管理手法の高度化に関する研究
課題番号
H17-労働-一般-004
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
中村 隆宏(独立行政法人労働安全衛生総合研究所人間工学・リスク管理研究グループ)
研究分担者(所属機関)
  • 篠原 一光(大阪大学大学院人間科学研究科)
  • 臼井 伸之介(大阪大学大学院人間科学研究科)
  • 小川 康恭(独立行政法人労働安全衛生総合研究所健康障害予防研究グループ)
  • 平田 衛(独立行政法人労働安全衛生総合研究所環境計測管理研究グループ)
  • 毛利 一平(独立行政法人労働安全衛生総合研究所人間工学・リスク管理研究グループ)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、「高負荷労働状況に関する実態把握」「労働環境及び態様が生体に及ぼしている影響の把握」「シミュレータ実験による運転パフォーマンス測定」「安全衛生管理に関する改善点の検討」を通じて、自動車運転者に対する指導・教育を含め、運輸・運送業界における情勢の変化への対応を可能とする安全衛生管理手法の高度化について検討し、これからの交通労働災害防止対策立案のための知見を提供することを目的とする。
研究方法
 予備調査として、災害防止団体、運輸・運送業界、調査・研究機関の関係者、並びに深夜のトラック運転業務に就くことが多い労働者数名を対象に、ヒアリング調査を実施した。
 また、ハイヤー・タクシー運転手約500人からなるコホートを構築し、3年間にわたる追跡調査を行った。追跡に成功した集団としては約200人の小規模なコホートとなったが、3年間のデータに基づく横断的解析結果の比較検討、および縦断的解析を行った。
 運転パフォーマンス測定については、実験装置及び実験環境の構築・予備実験を経て、リアルタイム遠隔管理の実現を想定した測定実験を実施した。
結果と考察
 ヒアリング調査では、業界内の熾烈な競争への対応に追われ、「調査へ協力出来るほどの余裕がない」ほど、厳しい状況にあることがわかった。
3年間にわたる追跡調査からは、タクシー・ハイヤー運転手の過酷な労働実態が伺える結果となっており、また、仕事の変化と健康関連QOLについて、仕事が増えても減ってもQOLが低下する可能性が示唆されるなど、注目すべき結果も得られた。
模擬運転実験では、会話によって主観的眠気が大幅に解消するとともに、注意パフォーマンスが大幅に低下するといったネガティブな影響は明確に把握されなかった。一方、会話中は一部の運転操作が不安定になる場合があることが確認された。
結論
 タクシー運転労働については、社会の関心も高く、さまざまな対策が実施されることが考えられ、それらに正当性を与えることのできるエビデンスが必要である。今後さらにデータの解析を進めるとともに、より大規模で適切にデザインされた疫学研究が必要である。
 また、IT技術の更なる進展と労働現場への導入・普及が交通労働災害の防止に及ぼす効果への期待は高く、新技術導入・新たな管理体制の構築推進を図るとともに、一方では、新たな取組みの副作用ともいえるネガティブな部分への対応を図る必要がある。

公開日・更新日

公開日
2008-06-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200733003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
「過労死」のハイリスク集団として運輸労働者が注目されているが、その労働のあり方の健康への影響を、疫学的手法によって明らかにした研究は極めて少ない。本研究では、ハイヤー・タクシー運転手約500人からなるコホートを構築し、3年間にわたる追跡調査を行った。また、リアルタイム遠隔安全衛生管理手法にいち早く着目し、認知心理学的観点から情報通信機器使用時の安全性について検討した。
臨床的観点からの成果
長時間の過重な労働の改善が必要なことは論をまたないが、一般的には望ましいはずの「労働負担軽減」が収入減少や生活不安につながり、結果としてQOLの低下につながっている、といったように、社会経済的な要因の影響を受けている可能性が示唆された。労働改善対策の導入の際に、その影響をあらかじめ複眼的な視点で考慮することが重要である、との知見を得た。
ガイドライン等の開発
(特になし)
その他行政的観点からの成果
リアルタイム遠隔安全衛生管理手法については、技術的な課題解決の必要性とならび、システムを使用する人間の側の視点にたった安全性検討が不可欠である。本研究において実施した測定実験は、リアルタイム遠隔安全衛生管理が実現した場合の情報通信機器の利用を想定した内容であり、新たな安全管理手法の開発・普及に際して有用な知見を与えるものである。
その他のインパクト
中央労働災害防止協会 労働安全衛生総合研究講演会(平成20年3月18日)において、研究成果の一部を報告した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
1件
T.Nakamura,Relation between Skill-Progress of Machinery-Operation and Fixated Objects,11th VIV
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
中央労働災害防止協会 安全衛生総合研究講演会 2008.3.18

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-