長時間労働及び睡眠等の関連要因と発生疾患との総合調査による効果的な過重労働対策の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200733001A
報告書区分
総括
研究課題名
長時間労働及び睡眠等の関連要因と発生疾患との総合調査による効果的な過重労働対策の確立に関する研究
課題番号
H17-労働-一般-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
堀江 正知(産業医科大学産業生態科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 筒井 隆夫(産業医科大学産業生態科学研究所)
  • 寶珠山 務(産業医科大学産業生態科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
2,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
長時間労働等による健康障害の予防を目的に、現場で活用できる資料を労働者、使用者及び専門職等を対象とした電子データベースで公表し、提言をまとめることを目的とした。
研究方法
長時間労働等と気管支喘息と消化性潰瘍との関連に関する研究論文等を体系的に吟味した。精神的ストレス、疲労、Vital Exhaustion(VE)、生活時間に関する質問票の特徴や評価について、文献調査や労働者の断面調査により、過重労働対策への活用法を検討した。海外の労働時間政策について、文献調査によりわが国と比較した。労働者を対象とした縦断研究により、労働時間、睡眠時間、生活時間の関係を調べた。開発した資料を労災防止団体や商工会議所で配布し、評価した。以上の知見に基づき、過重労働対策のための資料を追加開発し、過重労働対策ナビ(http://www.oshdb.jp)の情報を更新し、提言をまとめた。
結果と考察
過重労働と気管支喘息と消化性潰瘍との関連では良質な研究報告を認めなかったが、裁判では因果関係の判断を緩やかにする一方で被災者の過失による労災保険給付を制限した判例を認めた。VEはGHQ得点やMINIの判定結果と有意に相関した。長時間労働によるストレス、疲労、うつ状態を評価するための調査票を適切に選択するためのガイドラインを作成した。精神疲労を客観的に評価する指標には汎用性のあるものを認めなかったが、疲労の原因の評価(勤務時間や仕事の内容)、主観的な疲労に関する訴え(質問紙や問診)、行動パターン(睡眠、認識、感情的な反応等に関するもの)による方法の利用が適当と考えた。EU諸国で労働時間が減少した国々では、短時間労働者が増加する傾向を認めた。生活時間の調査では、ウェブ上で調査するシステムを開発し、調査を実施した結果、長時間労働では睡眠時間が減少するよりも前から生活時間が減少する傾向を認めた。以上の知見に基づいて、「過重労働者の健康リスクマネジメントのためのアクションチェックリスト」と「小規模事業場における過重労働対策・面接指導Q&A」を開発し、「過重な業務の負荷による健康影響を適切に予防するための提言」をまとめ、これらを産業保健センター等に配布した。情報を更新した過重労働対策ナビは、「過重労働」という検索用語で上位にヒットするようになった。
結論
長時間労働等による健康障害の予防をめざしてガイドラインやチェックリスト等の現場で活用できる資料を開発し、電子データベースで公表し、提言をまとめた。

公開日・更新日

公開日
2008-06-02
更新日
-

文献情報

文献番号
200733001B
報告書区分
総合
研究課題名
長時間労働及び睡眠等の関連要因と発生疾患との総合調査による効果的な過重労働対策の確立に関する研究
課題番号
H17-労働-一般-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
堀江 正知(産業医科大学産業生態科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 筒井 隆夫(産業医科大学産業生態科学研究所)
  • 寶珠山 務(産業医科大学産業生態科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
長時間労働とその関連要因による健康障害を予防するために、産業現場の健康管理担当者、労働者、使用者、関連分野の専門職や研究者が利用できる電子データベースを構築して公開し、提言をまとめることを目的とした。
研究方法
国内外の研究論文、判例、産業現場で利用可能な評価や予防のための技術や工夫、及び先進諸国の社会制度に関する知見を収集し、体系的に整理した。睡眠、精神的ストレス、疲労、Vital Exhaustion、生活時間に関する質問票や評価法について、文献や労働者を対象とした調査を実施して、長時間労働との関係を分析し、過重労働対策に利用する方法を検討した。また、研究期間中に行なわれた労働安全衛生法の改正により新たに規定された面接指導の実施状況を調査した。以上の知見に基づいて、過重労働対策を推進するための資料の開発と提言のとりまとめを行なった。
結果と考察
過重労働と精神疾患・循環器疾患との間には、評価指標によっては関連が認められること等を学術誌に公表した。英文の総説や原著論文は和訳してキーワード検索が可能な形式に整理した。現場の面接指導では抑うつ状態を疑う労働者が多く見つかること、長時間労働者では睡眠時間が短縮する前に生活時間が短縮する傾向があること、過重労働と疫学的な因果関係が明確でない健康障害でも裁判では因果関係が緩やかに判定された判例があること、EU諸国では労働時間が短縮した後に短時間労働者が増加している国があること等を明らかにした。これらの知見や現場の好事例に基づいて、「過重労働者の健康リスクマネジメントのためのアクションチェックリスト」、「働く人の上手な睡眠のためのチェックリスト」、「医師による面接指導の推進に関して事業者が講ずべき措置に関する指針」、「生活時間アンケート」、「過重労働対策のためのストレス調査票フローチャート」、「小規模事業場における過重労働対策・面接指導Q&A」を開発し、「過重な業務の負荷による健康影響を適切に予防するための提言」をまとめた。これらの情報を「過重労働対策ナビ」(http://www.oshdb.jp)に公開したところ、「過重労働」という検索用語で上位でヒットするサイトに成長した。労働時間の把握が困難な労働者や小規模事業場の過重労働対策、過重な業務の負荷そのものを解消する法制度、倫理規範、企業経営、労働契約、労働組合活動等の取り組みが課題と考えた。
結論
過重労働対策に関する知見や技術を多面的に整理し、過重労働による健康障害を予防するために産業現場で利用可能なチェックリスト、ウェブツール、ガイドライン等を開発し、電子データベースで公開し、提言をまとめた。

公開日・更新日

公開日
2008-06-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200733001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
長時間労働は、虚血性心疾患とは睡眠時間の短縮のほかに交替勤務や運転業務の場合等に有意な相関を認めた報告があること、循環器疾患のリスクである血圧や耐糖能の異常と有意な相関を認めた報告があること等を体系的レビューとして発表した。自殺等と関連では一定の傾向が認められないこと、気管支喘息と消化性潰瘍との関連では良質な研究報告がないが判例があること、vital exhaustionはGHQやMINIの結果と有意に相関すること、産業現場の面接指導では抑うつ状態が最も多く見つかっていることを明らかにした。
臨床的観点からの成果
産業医、衛生管理者、研究者等が過重労働の健康影響に関する科学的知見やその予防のための技術や工夫について理解できるように電子データベース(過重労働対策ナビ、http://www.oshdb.jp)を公開したところ、平成19年末までに代表的な検索エンジンにおいて「過重労働」という用語で3位以内に検出されるサイトに成長した。臨床的な指標が未確立な精神的ストレスや疲労等に関する調査票や評価法を体系化して論文発表した。長時間労働が生活時間に与える影響を調査するウェブツールを開発し、産業現場で利用した。
ガイドライン等の開発
事業場で面接指導の体制を構築するための「過重労働者の健康リスクマネジメントのためのアクションチェックリスト」、労働者の睡眠時間を確保するために労働者の職場上司や家族が利用する「働く人の上手な睡眠のためのチェックリスト」、産業医等が業務負荷、疲労、抑うつ状態のスクリーニングに使用する調査票を適切に選択するための「過重労働対策のためのストレス調査票フローチャート」、地域産業保健センターで過重労働対策の相談を受ける医師のための「小規模事業場における過重労働対策・面接指導Q&A」を開発した。
その他行政的観点からの成果
中央労働災害防止協会は、「過重労働者の健康リスクマネジメントのためのアクションチェックリスト」を「過重労働・メンタルヘルス対策セミナー」の資料として採用した。労働者健康福祉機構は、同資料を全国の産業保健推進センターの会議資料として採用し配布した。福岡産業保健推進センターは、「小規模事業場における過重労働対策・面接指導Q&A」を製本して県内12ヵ所すべての地域産業保健推進センターに配布した。北九州市医師会や筑紫医師会は、同資料を過重労働対策の普及のための研修会資料として採用した。
その他のインパクト
中央労働災害防止協会が事業者等を対象に開催した労働安全衛生総合研究講演会において、研究全体の成果を公表した。面接指導の促進を含む過重労働による健康障害の予防策を、「過重な業務の負荷による健康影響を適切に予防するための提言」として、事業者、産業医、地域産業保健センターの医師等に向けて取りまとめた。面接指導の結果の適正な利用法について「医師による面接指導の推進に関して事業者が講ずべき措置に関する指針」を論文で公表した。面接指導の実態調査の結果概要は、労働衛生行政施策の関係資料として利用された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
22件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
30件
学会発表(国際学会等)
18件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
その他成果(普及・啓発活動)
4件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-