循環器疾患に対する根拠に基づく鍼治療の開発

文献情報

文献番号
200732047A
報告書区分
総括
研究課題名
循環器疾患に対する根拠に基づく鍼治療の開発
課題番号
H18-医療-一般-023
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
川田 徹(国立循環器病センター研究所先進医工学センター循環動態機能部)
研究分担者(所属機関)
  • 宍戸 稔聡(国立循環器病センター研究所先進医工学センター循環動態機能部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年の研究から、全身の自律神経への介入が慢性心不全などの循環器疾患の治療に効果的であることが分かってきた。東洋医学における鍼は、全身の自律神経へ介入する有効な方法と考えられるが、西洋医学のように根拠に基づく医療が実践されるにはいたっていない。本研究では動物実験によって鍼治療の作用機序を科学的・系統的に解明し、これまでよりも定量的に適用できる電気鍼システムを開発することによって、鍼治療の観点から循環器疾患に対する総合医療を推進する基盤を確立する。
研究方法
本年度は前年度の研究成果を元に、電気鍼に対する動的な血圧応答を数学モデルで近似し、電気鍼に対する血圧応答を予測できるシミュレータを作成した。このシミュレータを用いて最適制御のための制御係数を決定し、目標の降圧を達成するために、電気鍼の刺激電流と刺激周波数が自動的に変わるような血圧フィードバックによる電気鍼システムを開発した。そして、麻酔下のネコを用いて20 mmHgの降圧実験を行い、電気鍼システムの動作を検証した。
結果と考察
電気鍼に対する動的な血圧応答は無駄時間を含む2次遅れ系のモデルで近似できた(定常ゲイン=-10.2±1.6 mmHg/mA, 自然周波数=0.040±0.004 Hz, 減衰係数=1.80±0.24, 無駄時間=1.38±0.13秒)。このモデルを組み込んだシミュレータを用いて比例積分制御の最適な係数を決定したところ、フィードバックの比例ゲインを0、積分ゲインを0.005としたとき、1分以内に安定した降圧作用が得られることが予測された。実際に血圧フィードバックによる電気鍼システムを開発し、麻酔下のネコにおいて検証したところ、電気鍼の刺激強度は自動的に調節され、目標降圧の90%到達時間は38±10秒、定常偏差は1.3±0.1 mmHgであった。以上の結果から、血圧フィードバックを用いて極めて定量的に電気鍼を適用できることが示唆された。
結論
電気鍼に対する動的な血圧応答を定量化することにより、それを利用して血圧フィードバックによる電気鍼システムを開発することが可能であった。このシステムを用いることにより、電気鍼に対する感受性の個体差に応じて、自動的に電気鍼の刺激強度が変化するような鍼療法が可能であることが示唆された。最終年度はこれまでの研究成果をヒトの電気鍼に適用していく予定である。

公開日・更新日

公開日
2008-04-24
更新日
-