医療安全防止対策の経済評価に関する研究

文献情報

文献番号
200732025A
報告書区分
総括
研究課題名
医療安全防止対策の経済評価に関する研究
課題番号
H17-医療-一般-028
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 健康政策医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 井出 博生(東京大学医学部附属病院企画情報運営部病院管理学(東京大学医学部附属病院))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
2,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒューマンエラー防止のためのエンジニアリングの応用ではなく、医療事故そのものの疫学的調査、医療事故後の紛争処理、医療事故防止対策などの調査を行い、適切にその実態と費用を把握することにより、防止対策の実施に関する意思決定を支援する。
研究方法
昨年度までの研究としては、下記2点についての調査を行った。

1.訴訟費用の測定
 医療事故発生後に要する事後的コストに関して、裁判の判例等を調査し推計を行う。
 原告側の勝訴率の動向なども調査する。
 文献調査による諸外国での医療事故防止対策に関する経済的評価の実施状況を調査する。

2.訴訟抑制要因に関する分析
 一般人を対象としたインターネット調査を行う。

最終年度は医療安全対策に関する一般人の支払意思額の測定として、インターネット調査を行った。具体的なケースとしては、薬害有害事象の防止対策、看護師配置の強化に対する一般人の支払意思額を測定した。
結果と考察
・薬害有害事象の防止対策
 薬剤事故対策が国民にとって極めて便益の高い対策であるということが明らかになった。効果が期待できる対策をとり、かつその効果が明白に現れるとすれば、一般人は1日あたり4000円程度追加で支払う意志があるという結果が得られた。

・看護師配置の強化に対する一般人の支払意思額
 一般人の健康管理意識は高く、健康に「気を使っている」割合は8割以上に達した。一般人の支払意思額は診療報酬点数を大きく超えていることから、安全な看護体制、それに対する医療保険財政からの支出は十分に国民の支持が得られる政策であるということが示唆される。
結論
紛争費用に関する調査から、全ての医療安全対策を実施する事は経済的な側面から考えて、不可能なのではないかといえる。一方、調査より一般人の医療安全対策に対する支払意思額は、十分に高い額が示されている。結果として、医療安全として「何を」実施すべきなのか検討する必要が示唆される。また情報開示は医事紛争の抑制に効果的であるということがわかった。

公開日・更新日

公開日
2008-04-04
更新日
-

文献情報

文献番号
200732025B
報告書区分
総合
研究課題名
医療安全防止対策の経済評価に関する研究
課題番号
H17-医療-一般-028
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 健康政策医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 井出 博生(東京大学医学部附属病院企画情報運営部病院管理学(東京大学医学部附属病院))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒューマンエラー防止のためのエンジニアリングの応用ではなく、医療事故そのものの疫学的調査、医療事故後の紛争処理、医療事故防止対策などの調査を行い、適切にその実態と費用を把握することにより、防止対策の実施に関する意思決定を支援する。
研究方法
1.訴訟費用の測定
 医療事故発生後に要する事後的コストに関して、裁判の判例等を調査し推計を行う。
 原告側の勝訴率の動向なども調査する。
 文献調査による諸外国での医療事故防止対策に関する経済的評価の実施状況を調査する。

2.訴訟抑制要因に関する分析
 一般人を対象としたインターネット調査を行う。

3.医療安全対策に関する一般人の支払意思額の測定
 インターネット調査を行う。具体的なケースとして、薬害有害事象の防止対策、看護師配置の強化に対する一般人の支払意思額を測定した。
結果と考察
1.訴訟費用の測定
 損害賠償金額は、死亡のケースで逸失利益を除く慰謝料だけで2000?2800万円程度、後遺障害については状況により100?3000万円程度となった。また病院が何らかの賠償金を支払ったとみられるケースは全体の82%に達すると考えられる。

2.訴訟抑制要因に関する分析
 実際の民事訴訟の判例から誤診ケース(分娩事故および腹部大動脈の誤診)を選択し、シナリオによる調査を行った。どちらのケースに関しても情報開示自体が紛争抑制に有効であるということが示唆された。医療事故後に意思や医療機関から情報開示されることで、患者や家族が医師や医療機関が有責であると考える割合が低くなるということがわかった。

3.医療安全対策に関する一般人の支払意思額の測定
 一般人の支払い意思額は非常に高く、効果があるということが前提ではあるが、医療安全対策に対して大きな便益を感じていることがわかった。
結論
紛争費用に関する調査から、全ての医療安全対策を実施する事は経済的な側面から考えて、不可能なのではないかといえる。一方、調査より一般人の医療安全対策に対する支払意思額は、十分に高い額が示されている。結果として、医療安全として「何を」実施すべきなのか検討する必要が示唆される。また情報開示は医事紛争の抑制に効果的であるということがわかった。
今後はわが国で医療安全対策の評価が進み、医療機関の対策、政策に積極的に反映されることを望みたい。

公開日・更新日

公開日
2008-04-04
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200732025C