特定疾患患者の生活の質（Ｑｕａｌｉｔｙ ｏｆ Ｌｉｆｅ、ＱＯＬ）の向上に関する研究

文献情報

• 文献番号: 200731039A
• 報告書区分: 総括
• 研究課題名: 特定疾患患者の生活の質（Ｑｕａｌｉｔｙ ｏｆ Ｌｉｆｅ、ＱＯＬ）の向上に関する研究
• 課題番号: H17-難治-一般-039
• 研究年度: 平成19(2007)年度
• 研究代表者(所属機関): 中島 孝(独立行政法人国立病院機構新潟病院)

研究分担者(所属機関)

• 伊藤　道哉(東北大学大学院　医学系研究科　医療管理学分野)
• 稲葉　一人(久留米大学医学部)
• 荻野　美恵子(北里大学医学部　神経内科学)
• 川村　佐和子(青森県立保健大学　健康科学部　看護学科)
• 熊本　俊秀(国立大学法人大分大学　医学部　脳・神経機能統御講座)
• 黒岩　義之(横浜市立大学大学院　医学研究科　神経内科)
• 清水　哲郎(東京大学大学院　人文社会系研究科)
• 西澤　正豊(新潟大学脳研究所　臨床神経科学部門　神経内科学分野)
• 牛込　三和子(群馬パース大学　保健科学部　看護学科)
• 小倉　朗子(財団法人東京都医学研究機構　東京都神経科学総合研究所　難病ケア看護研究部門)
• 水島　洋(東京医科歯科大学　情報医科学センター)
• 秋山　智(広島国際大学　看護学部)
• 石上　節子(東北大学医学部付属病院　緩和医療部)
• 今井　尚志(独立行政法人国立病院機構宮城病院　神経内科)
• 大生　定義(立教大学　社会学部　社会学科)
• 川井　充(独立行政法人国立病院機構東埼玉病院)
• 川田　明広(東京都立神経病院　脳神経内科)
• 久野　貞子(国立精神・神経センター武蔵病院　神経内科)
• 小森　哲夫(埼玉医科大学　神経内科)
• 後藤　清恵(独立行政法人国立病院機構新潟病院)
• 山海　嘉之(筑波大学大学院　システム情報工学研究科)
• 藤井　直樹(独立行政法人国立病院機構大牟田病院　神経内科)
• 宮坂　道夫(新潟大学医歯学系保健学科)
• 福永　秀敏(独立行政法人国立病院機構南九州病院　神経内科)
• 山内　豊明(名古屋大学医学部　基礎看護学講座)
• 武藤　香織(東京大学医科学研究所　ヒトゲノム解析センター　公共政策研究分野)
• 牛久保　美津子(群馬大学医学部　保健学科)
• 信國　圭吾(独立行政法人国立病院機構南岡山医療センター　神経内科)
• 美原　盤(財団法人脳血管研究所附属美原記念病院　神経内科)
• 吉野　英(吉野内科・神経内科医院)
• 難波　玲子(神経内科クリニックなんば)
• 福原　信義(新潟県厚生連上越総合病院　神経内科)
• 堀川　楊(医療法人社団朋有会　堀川内科・神経内科医院)
• 川島　孝一郎(仙台往診クリニック)
• 伊藤　博明(独立行政法人国立病院機構新潟病院　神経内科)

• 研究区分: 厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
• 研究開始年度: 平成17(2005)年度
• 研究終了予定年度: 平成19(2007)年度
• 研究費: 39,000,000円
• 研究者交替、所属機関変更: -

研究報告書（概要版）

研究目的

根治療法がない病気に対してどのように科学的に対応すべきかが本研究の主要な研究目的である。医療におけるQOL(生活の質)は科学概念であるが、患者、家族とケアチームとの関係性の中で生まれてくる構成概念（construct）であり、患者属性ではなく、変化するものである。このため、難病医療・ケアにおける適切な多専門職種ケア（multidisciplinary care）とナラティブアプローチを使った、QOL向上に関する研究が必要である。

研究方法

コンセンサス会議、全国調査を郵送法による調査研究。ALSケアの国際疫学調査（英国、米国、日本）を行った。多専門職種のチームによる難病ケア研究をおこなった。神経難病における音楽療法を考える会、神経難病における非侵襲呼吸ケア研究会、SEIQoL-DWユーザー会、難病倫理研究会、サイバニクス倫理検討会委員会を共催した。海外研究者と国際共同研究をおこなった。難病の人工呼吸療法はJohn R. Bach教授（ニュージャージ医科大学）、難病の緩和ケア研究はDavid Oliver教授　（ロチェスターウイズドムホスピス）、難病のQOL評価研究は　O'Boyle教授、Hickey講師（アイルランド王立外科大学）と行った。

結果と考察

指針作成「筋萎縮性側索硬化症の包括的呼吸ケア指針－呼吸理学療法と非侵襲的陽圧換気療法（NPPV）H19年」、提言書の作成「難病領域における医療・福祉制度変更の影響調査―平成19年度ワーキンググループ報告書」を作成した。ALS等神経難病緩和ケア・終末期医療に関する調査（医師、看護師むけアンケート調査）、事前指示書に関するアンケート調査（病院医師、看護師むけ）、事前指示書に関するアンケート調査（在宅医師むけ）、終末期医療における「尊厳」保持要因のアンケート調査（看護師むけ）。QOL評価法であるSEIQoL（個人の生活の質の評価法,The schedule for evaluation of individual quality of life）において面接・評価法の国際応用研究を難病領域でおこなった。我が国の保健医療制度における緩和ケアは国際的な緩和ケア概念とは異なったものと考えられた。

結論

我が国で行われてきた難病ケアは国際的には緩和ケアに分類され、当研究班において国際共同研究をおこなったSEIQoL法は、根治療法のない疾患に対する QOL向上など具体的解決策の妥当性を評価する指標になりうる。難病対策は国際的に評価されうるケアシステムである。

公開日・更新日

• 公開日: 2008-05-13
• 更新日: -

文献情報

• 文献番号: 200731039B
• 報告書区分: 総合
• 研究課題名: 特定疾患患者の生活の質（Ｑｕａｌｉｔｙ ｏｆ Ｌｉｆｅ、ＱＯＬ）の向上に関する研究
• 課題番号: H17-難治-一般-039
• 研究年度: 平成19(2007)年度
• 研究代表者(所属機関): 中島 孝(独立行政法人国立病院機構新潟病院)

研究分担者(所属機関)

• 伊藤　道哉(東北大学大学院　医学系研究科医療管理学分野)
• 稲葉　一人(久留米大学医学部)
• 荻野　美恵子(北里大学医学部　神経内科学)
• 川村　佐和子(青森県立保健大学　健康科学部看護学科)
• 熊本　俊秀(大分大学医学部　脳・神経機能統御講座)
• 黒岩　義之(横浜市立大学大学院　医学研究科　神経内科)
• 近藤　清彦(公立八鹿病院　脳神経内科)
• 清水　哲郎(東京大学大学院　人文社会系研究科)
• 西澤　正豊(新潟大学脳研究所　臨床神経科学部門　神経内科学)
• 牛込　三和子(群馬パース大学　保健科学部　看護学科)
• 小倉　朗子(財団法人東京医学研究機構　東京都立神経科学総合研究所)
• 水島　洋(東京医科歯科大学　情報医科学センター)
• 秋山　智(広島国際大学　看護学部)
• 石上　節子(東北大学医学部附属病院　緩和医療部)
• 今井　尚志(独立行政法人国立病院機構宮城病院　神経内科)
• 大生　定義(立教大学　社会学部　社会学科)
• 川井　充(独立行政法人国立病院機構東埼玉病院)
• 川田　明広(東京都神経病院脳神経内科)
• 久野　貞子(国立精神・神経センター武蔵病院　神経内科)
• 小森　哲夫(埼玉医科大学　神経内科)
• 後藤　清恵(独立行政法人国立病院機構新潟病院)
• 山海　嘉之(筑波大学大学院　システム情報工学研究科)
• 藤井　直樹(独立行政法人国立病院機構大牟田病院　神経内科)
• 宮坂　道夫(新潟大学医歯学系　保健学科)
• 福永　秀敏(独立行政法人国立病院機構南九州病院　神経内科)
• 山内　豊明(名古屋大学医学部　基礎看護学講座)
• 武藤　香織(東京大学医科学研究所　ヒトゲノム解析センター　公共政策研究分野)
• 牛久保　美津子(群馬大学医学部　保健学科)
• 信國　圭吾(独立行政法人国立病院機構南岡山医療センター　神経内科)
• 美原　盤(財団法人脳血管研究所附属美原記念病院　神経内科)
• 吉野　英(吉野内科・神経内科医院)
• 難波　玲子(神経内科クリニックなんば)
• 福原　信義(新潟県厚生連上越総合病院　神経内科)
• 堀川　楊(医療法人社団朋有会　堀川内科・神経内科医院)
• 小池　亮子(独立行政法人国立病院機構西新潟中央病院　神経内科)
• 川島　孝一郎(仙台往診クリニック)
• 伊藤　博明(独立行政法人国立病院機構新潟病院　神経内科)

• 研究区分: 厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
• 研究開始年度: 平成17(2005)年度
• 研究終了予定年度: 平成19(2007)年度
• 研究者交替、所属機関変更: -

研究報告書（概要版）

研究目的

根治療法がない病気に対してどのように科学的に対応すべきかが本研究の主要な研究目的である。医療におけるQOL(生活の質)は科学概念であるが、患者、家族とケアチームとの関係性の中で生まれてくる構成概念（construct）であり、患者属性ではなく変化する。このため、難病医療・ケアにおける適切な多専門職種ケア（multidisciplinary care）とナラティブアプローチを使った、QOL向上に関する研究が必要である。

研究方法

コンセンサス会議、全国調査を郵送法による調査研究。ALSケアの国際疫学調査（英国、米国、日本）を行った。多専門職種のチームによる難病ケア研究をおこなった。神経難病における音楽療法を考える会、神経難病における非侵襲呼吸ケア研究会、SEIQoL-DWユーザー会、難病倫理研究会、サイバニクス倫理検討会委員会を共催した。海外研究者と国際共同研究をおこなった。難病の人工呼吸療法はJohn R. Bach教授（ニュージャージ医科大学）、難病の緩和ケア研究はDavid Oliver教授　（ロチェスターウイズドムホスピス）、難病のQOL評価研究は　O'Boyle教授、Hickey講師（アイルランド王立外科大学）と行った。

結果と考察

指針作成「筋萎縮性側索硬化症の包括的呼吸ケア指針－呼吸理学療法と非侵襲的陽圧換気療法（NPPV）H19年」、提言書の作成「難病領域における医療・福祉制度変更の影響調査―平成19年度ワーキンググループ報告書」を作成した。ALS等神経難病緩和ケア・終末期医療に関する調査（医師、看護師むけアンケート調査）、事前指示書に関するアンケート調査（病院医師、看護師むけ）、事前指示書に関するアンケート調査（在宅医師むけ）、終末期医療における「尊厳」保持要因のアンケート調査（看護師むけ）。QOL評価法であるSEIQoL（個人の生活の質の評価法,The schedule for evaluation of individual quality of life）において面接・評価法の国際応用研究をおこなった。我が国の保健医療制度における緩和ケアは国際的な緩和ケア概念とは異なったものと考えられた。

結論

我が国で行われている難病ケアは国際的には緩和ケアに分類され、当研究班において国際共同研究をおこなったSEIQoL法は、根治療法のない疾患に対する QOL向上など具体的解決策、緩和療法（パリエーション）の妥当性を評価する指標になる。難病対策は国際的に評価されうるケアシステムである。

公開日・更新日

• 公開日: 2008-05-13
• 更新日: -

行政効果報告

• 文献番号: 200731039C

成果

• 専門的・学術的観点からの成果: 国際共同研究において、個人の生活の質評価法のSEIQoL法（The Schedule for the Evaluation of Individual Quality of Life）は、根治療法のない疾患に対する QOL向上など具体的解決策の妥当性を評価する科学的指標になりうることがわかった。我が国で行われてきた難病ケアは国際的には緩和ケアに分類され、難病対策は国際的に評価されるケアシステムである。ALSの国際オーディット研究（疫学調査）で、死亡例（114症例）の各国の治療法の解析をした。
• 臨床的観点からの成果: 特定疾患のうち特に重篤な難病に対して、適切な多専門職種ケア（inter- and multi-disciplinary care）とナラティブアプローチ（narrative aproach）を使った、QOL向上の具体的な方法（緩和療法、パリエーション、palliation）関する研究が行われた。multidisciplinary careは集学的ケアと以前我が国で翻訳されたが、多専門職種ケアと翻訳用語を変更することで内容をよりわかりやすくし、患者QOLの向上を支えるシステム作りに寄与できた。
• ガイドライン等の開発: 指針：「筋萎縮性側索硬化症の包括的呼吸ケア指針－呼吸理学療法と非侵襲的陽圧換気療法（NPPV） H19年度」において、人工呼吸器使用は「延命治療」ではなく「パリエーション」であるとした。また、QOLの向上のためには包括的な呼吸ケアを多専門職種で行うことを強調し、NPPVを早期に導入することを勧めた。呼吸理学療法、心理サポート、PEGの導入は必須である。この指針を臨床で使い患者と家族のQOLの向上に役立てることで、医学的な問題点を倫理・法的な問題にすり替える混乱が回避できる。
• その他行政的観点からの成果: 特定疾患制度、介護保険法、診療報酬体系、自立支援法の変更にともなう難病領域の影響調査をQOLと制度改定の観点で実際の診療データを収集・分析して提言をまとめた。難病患者が制度改定の中で、整合性のある医療・福祉をうけられ、QOLを向上し、安心して在宅生活を送れるように以下のような提言をおこなった。提言をおこなった報告書名「難病領域における医療・福祉制度変更の影響調査―平成19年度ワーキンググループ報告書」
• その他のインパクト: 日本神経学会総会（2005年）シンポジウムー神経難病のケア「QOLとは」,International Symposium on ALS/MND（2006年)Individual ALS care in the Japanese 'Nanbyo' care model, いま終末期医療をどう考えるか？(2007年)一橋記念講堂,根治困難な患者におけるQOLとケア概念ーターミナルケア概念から緩和ケア概念へ

発表件数

• 原著論文（和文）: 80件
• 原著論文（英文等）: 54件
• その他論文(和文): 236件
• その他論文(英文等): 3件
• 学会発表(国内学会): 274件
• 学会発表(国際学会等): 64件
• その他成果(特許の出願): 0件 ; 「出願」「取得」計2件
• その他成果(特許の取得): 0件
• その他成果(施策への反映): 0件
• その他成果(普及・啓発活動): 0件

主な原著論文20編（論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る）

• 原著論文1: 宮下光令、秋山美紀、落合亮太、萩原章子、中島孝; 神経内科的疾患患者の在宅介護者に対する「個別化された重みつきQOL尺度」SEIQoL-DWの測定; 厚生の指標 , 55 (1) , 9-14 (2008)
• 原著論文2: 中島 孝; QOLと緩和ケアの奪還; 現代思想 , 36 (2) , 148-173 (2008)
• 原著論文3: 中島 孝、伊藤博明; 緩和ケアとは本来何なのか？生きるためのケアにむけて; 難病と在宅ケア , 13 (10) , 9-13 (2008)
• 原著論文4: 中島 孝; 神経難病と音楽療法 総論; 神経内科 , 67 (3) , 228-235 (2007)
• 原著論文5: 榛沢和彦, 林純一, 布施一郎, 相澤義房, 田辺直仁, 中島 孝, 伊藤正一, 鈴木幸雄; 新潟県中越大震災被災地住民に対する深部静脈血栓症(DVT)/肺塞栓症(PE)の診断、治療ガイドラインについて; Therapeutic Research , 28 (6) , 1076-1078 (2007)
• 原著論文6: 中島 孝; 緩和ケアは看取りの医療ではない-最後まで続くQOLの向上、生きる挑戦; 月刊公明 , 7 , 34-41 (2007)
• 原著論文7: 中島 孝; QOL評価の新しい挑戦 療養者の物語によるSEIQoL-DWの試み; 日本難病看護学会誌 , 11 (3) , 181-191 (2007)
• 原著論文8: 中島 孝、川上英孝、伊藤博明; ALSへのNPPVの導入; Journal of Clinical Rehabilitation , 16 (3) , 243-250 (2007)
• 原著論文9: 中島孝; ALSのQOL向上のための緩和ケアにむけて; 医療 , 59 (7) , 370-375 (2005)
• 原著論文10: 伊藤博明、中島 孝; 在宅神経難病患者のQOL; 神経内科 , 65 (6) , 542-548 (2006)
• 原著論文11: T.Nakajima, H.Kamei, H.Kawakami, T.Hayashi, and H.Saeki; A diagnostic algorithm of de Novo Parkinson disease differentiated from Parkinsonism-plus syndromes using discrimination analysis of cerebral perfusion SPECT; NeuroRx , 2 , 537- (2005)
• 原著論文12: 中島 孝、伊藤博明; ライソゾーム病治療に真の夜明けが訪れた; 難病と在宅ケア , 12 (8) , 37-38 (2006)
• 原著論文13: 樋口真也、中島 孝; ALS患者さんの呼吸療法の誤解を解くために; 難病と在宅ケア , 12 (7) , 7-11 (2006)
• 原著論文14: 中島 孝; QOL向上とは、難病のQOL評価と緩和ケア; 脳と神経 , 58 (8) , 661-669 (2006)
• 原著論文15: 中島 孝; ALSにおける呼吸療法―総論; 神経内科 , 64 (4) , 330-386 (2006)
• 原著論文16: T.Nakajima; Individual ALS care in the Japanese ‘nanbyo’care model: comparison with palliative care approaches in achieving best quality of life; Amyotrophic Lateral Sclerosis , 1 (7) , 45-47 (2006)
• 原著論文17: 中島 孝; 神経難病における遺伝子検査とインフォームドコンセント; 神経治療学 , 22 , 751-756 (2005)
• 原著論文18: 中島 孝; ALSのQOL向上のための緩和ケアに向けて; 医療 , 59 (7) , 370-375 (2005)
• 原著論文19: 中島 孝; 難病ケアと問題点－QOLの向上とは; 臨床神経学 , 45 (11) , 994-996 (2005)
• 原著論文20: 中島 孝; 現地での取り組み、特集「広域災害医療－新潟県中越地震を経験して」; 医療 , 59 (4) , 213-216 (2005)

公開日・更新日

• 公開日: 2015-06-08
• 更新日: -