正常圧水頭症と関連疾患の病因・病態と治療に関する研究

文献情報

文献番号
200731017A
報告書区分
総括
研究課題名
正常圧水頭症と関連疾患の病因・病態と治療に関する研究
課題番号
H17-難治-一般-017
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
湯浅 龍彦(国立精神・神経センター国府台病院 神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 石川 正恒(田附興風会北野病院 脳神経外科)
  • 森 悦朗(東北大学大学院医学系研究科 高次脳機能障害学)
  • 堀 智勝(東京女子医科大学医学部 脳神経外科)
  • 鈴木 則宏(慶應義塾大学医学部 神経内科)
  • 加藤 丈夫(山形大学大学院 生命環境医科学専攻)
  • 新井 一(順天堂大学医学部 脳神経外科)
  • 佐々木 真理(岩手医科大学放射線医学講座 神経放射線診断学)
  • 和泉 唯信(徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 稲富 雄一郎(済生会熊本中央病院脳卒中センター)
  • 大浜 栄作(鳥取大学医学部 神経病理学)
  • 数井 裕光(大阪大学大学院医学系研究科 精神医学教室)
  • 後藤 淳(東京都済生会中央病院)
  • 榊原 隆次(東邦大学医療センター佐倉病院)
  • 佐々木 秀直(北海道大学大学院医学系研究科)
  • 篠田 正樹(聖路加国際病院)
  • 伊達 勲(岡山大学大学院 医歯薬総合研究科)
  • 中野 今治(自治医科大学)
  • 橋本 正明(公立能登総合病院)
  • 橋本 康弘(福島県立医科大学)
  • 松前 光紀(東海大学医学部)
  • 宮下 光太郎(国立循環器病センター)
  • 森 敏(松下記念病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
27,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特発性正常圧水頭症(iNPH)は、歩行障害、認知障害、尿失禁を3徴とし、くも膜出血や髄膜炎などに続発する2次性水頭症を除く、原因不明の病態を指す。主に高齢者を侵す疾患であり、早期に診断し適切に治療すれば、歩行障害、認知障害、尿失禁が改善し、寝たきり老人の数を減らすことも可能である。
 本研究班は平成17年度からスタートした。研究の目的は、(1)iNPHの疫学研究、(2)iNPHの病因究明、(3) iNPHの病態解明と治療法・予防法の開発であり、老年期の難治性病態の一つを解決に導くことである。
研究方法
平成19年度は昨年同様に各班員それぞれの研究テーマに沿って研究を進めた。その内容は、1. 疫学研究、2.原因究明と病態の解明(1)iNPHのリスクファクター、(2)iNPHの画像研究、(3)iNPHの髄液研究、(4)iNPH症例の歩行解析・重心動揺計による解析・経頭蓋的磁気刺激検査、(5) iNPH症例の認知機能障害の特徴、(6)iNPHの魁け研究:iNPHの脳病理学的研究と脳のコンプライアンスに関する研究、3.iNPHの治療研究:手術効果の長期予後、4.iNPH症例の鑑別疾患の問題などである。
結果と考察
病理所見から本疾患の本態が脳の最小動脈の硬化性病変にあることが示された。INPHの病態形成にコンプライアンス低下がよりはっきりと認識されるに至り、ここでは、脳髄液のダイナミズムの消失を来たし、周辺の大動脈からの拍動性の外圧が脳室拡大あるいはSylvius列拡大の因子となるという考え方が示唆された。診断的には画像診断とタップテストの有用性がほぼ確定した。
治療法としてはVPシャント術とサイフォンガードの有用性が示され、歩行障害は治療反応性がもっともよかった。認知症は前頭葉症状が主体であることが明らかになったが、低下した前頭葉機能はシャント術後も中々改善しなかった。一方、排尿障害には、右前頭葉の機能障害が大きく関与していることが示された。危険因子として、喫煙と耐糖能の低下が明らかとなり予防活動への一つの目標が出来た。
結論
早期診断、早期治療が重要である。今後は、術後の早期リハビリ技術の開発、非侵襲的な治療法の開発、そしてiNPHを広く世の中に啓蒙、広報することが大切である。

公開日・更新日

公開日
2008-05-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200731017B
報告書区分
総合
研究課題名
正常圧水頭症と関連疾患の病因・病態と治療に関する研究
課題番号
H17-難治-一般-017
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
湯浅 龍彦(国立精神・神経センター国府台病院 神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 石川 正恒(田附興風会北野病院 脳神経外科)
  • 森 悦朗(東北大学大学院医学系研究科 高次脳機能障害学)
  • 堀 智勝(東京女子医科大学医学部 脳神経外科)
  • 鈴木 則宏(慶應義塾大学医学部 神経内科)
  • 加藤 丈夫(山形大学大学院生命環境医科学専攻 生命情報内科学科)
  • 新井 一(順天堂大学医学部 脳神経外科)
  • 佐々木 真理(岩手医科大学先端医療研究センター)
  • 和泉 唯信(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 神経内科)
  • 稲富 雄一郎(済生会熊本病院脳卒中センター)
  • 大浜 栄作(鳥取大学医学部 神経病理学)
  • 数井 裕光(大阪大学大学院医学系研究科 精神医学教室)
  • 後藤 淳(東京都済生会中央病院 神経内科)
  • 榊原 隆次(東邦大学医療センター桜病院内科学講座 神経内科学)
  • 佐々木 秀直(北海道大学大学院医学研究科神経内科学分野臨床 神経学)
  • 篠田 正樹(聖路加国際病院 脳神経外科)
  • 伊達 勲(岡山大学大学院医歯薬総合研究科 神経病態外科学)
  • 中野今治(自治医科大学 神経内科)
  • 橋本 正明(公立能登総合病院 脳神経外科)
  • 橋本 康弘(福島県立医科大学 生化学講座)
  • 松前 光紀(東海大学医学部 脳神経外科)
  • 宮下 光太郎(国立循環器病センター 内科脳血管部門)
  • 森 敏(松下記念病院 神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特発性正常圧水頭症(iNPH)は、歩行障害、認知障害、尿失禁を3徴とする症候群である。
本研究班の目的はiNPHの疫学研究、病因の究明、病態研究と治療法の開発である。
研究方法
疾患の特異性から、脳外科医、神経内科医、精神科医が中心となり、これに画像専門の放射線科医、神経病理学者が加わり、途中年度からは髄液の基礎研究の必要性から基礎の生化学者の参加も得た。研究の主体は、疫学研究、病態研究であったが、病理検査あるいは髄液を用いた基礎研究、即ち髄液のプロテオミクスから新たな発見があった。
結果と考察
一般社会でのiNPHの頻度に関して、画像所見から選ばれたPossible iNPHの有病率は、61歳で0.45%、70〜72歳で0.53%であった。特別養護老人ホームに入所高齢者の23.4%、養護老人ホーム入所高齢者の15.7%、グループホーム入所者の11.1%にiNPHの画像所見を認めた。iNPHのリスクファクターとしては、空腹時血糖と拡張期血圧が上がった。iNPHの病理検査結果から、脳の最小血管に極めてユニークな病変が認められた。大脳白質には特異なcystic病変が見られ、浸潤するアストロサイトのアクアポリンは低下していた。髄液動態変化として、iNPHでは中脳水道でのto and flowが損なわれること、iNPHでは脳室への髄液の逆流が全く消失してしまうことが明らかにされた。iNPHの病態の根幹には脳のコンプライアンス低下という事態が想定された。治療に最もよく反応する症候は、歩行障害であった。認知障害の特徴は特に前頭葉機能の低下が顕著であった。iNPHの排尿障害は右前頭葉機能と関連することが示された。iNPH患者の髄液中にはleucine rich glycoprotein(LRG)が特異的に増加していた。iNPH患者では術後身体リハに加えてメンタルのトレーニングを含めた広汎なリハビリプログラムの開発が必要とされ、いずれも今後の課題とされた。
結論
3年間にしては、当初の予想を遥かに超えた成果が得られた。これからがいよいよ本研究班の活動を伸ばして行く段階になる。iNPHの研究は今後益々発展すべきである。社会的な貢献度の大きな研究分野、研究テーマであり続けるであろう。

公開日・更新日

公開日
2008-05-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200731017C