神経・筋変性疾患における細胞移植システムの構築と自己細胞移植治療法の開発

文献情報

文献番号
200730064A
報告書区分
総括
研究課題名
神経・筋変性疾患における細胞移植システムの構築と自己細胞移植治療法の開発
課題番号
H19-こころ-一般-016
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
出沢 真理(京都大学大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 林拓也(国立循環器病センター)
  • 田畑泰彦(京都大学再生医科学研究所)
  • 今村道博(国立精神・神経センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
41,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒト骨髄間質細胞からドーパミン産生細胞と骨格筋が高い効率で選択的に誘導されるシステムを確立した。本研究では患者本人の細胞を用いる自己細胞移植治療を目指して、これらの誘導細胞の安全性を評価する。また、生体内での細胞の生着、分化促進、機能発揮、組織の機能修復を図るために、誘導細胞と同時に生体材料、液性因子、血管前駆細胞などの要素を盛り込んだ移植システムの築を検討し、神経・筋変性疾患への実用性の高い自己細胞移植方法の確立を目指す。
研究方法
(1)リバーストランスフェクション法を用いた遺伝子導入、生体材料の検討、細胞毒性の評価を行なった。
(2)ラットを用いて骨髄間質細胞からの神経誘導を行い梗塞モデルでの分化度と有効性の相関を調べた。
(3)ラット脊髄損傷モデルを用いた移植細胞の足場の検討を行なった。
(4)骨髄間質細胞からの骨格筋誘導と安全性をヒト細胞とイヌ細胞で行なった。
結果と考察
リバーストランスフェクション法は通常のlipofectionに比べてはるかに細胞毒性が低く、遺伝子発現レベルを高めることが可能であった。マウス、サルから採取した骨髄間質細胞に対してこの方法で神経誘導を行なったところ、細胞死もほとんど見られず、細胞の神経分化、ドーパミン産生能を確認した。移植細胞の分化度とホスト脳梗塞モデルでの検討では、骨髄間質細胞から神経系細胞を誘導した場合、未分化な神経前駆細胞の方が分化したものよりも生着と機能回復で有利であることが示唆された。移植細胞の足場となるマトリックス、血管新生促進の検討を脊髄圧迫損傷モデルで行なった。ゼラチン 30 micrometerの粒にFGFを混合した叙放剤で痛覚テストにおいて優位な機能回復を認めた。ヒトおよびイヌ骨髄間葉系細胞から誘導した骨格筋系譜細胞の細胞移植治療に際する安全性の確認では、細胞の核型検査を行なったところ、いずれのサンプルにおいても染色体の欠損、転座などの変異は認められないことが確認された。また腫瘍形成の有無をみるために、ヒトから誘導した細胞をヌードマウス大腿筋に移植したところ、六ヵ月後の病理変化でも腫瘍形成は認められなかった。
結論
実用性の高い骨髄間質細胞から、神経・骨格筋を効率よく誘導する方法を見出した。有効な細胞移植治療系に発展させるために、細胞毒性の少ない誘導方法、血管新生を促進し移植細胞の足場を与えるマトリックスなどが有効であることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
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