急激に社会問題化している心身症の克服モデル

文献情報

文献番号
200730062A
報告書区分
総括
研究課題名
急激に社会問題化している心身症の克服モデル
課題番号
H19-こころ-一般-014
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
福土 審(東北大学大学院医学系研究科行動医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 谷内 一彦(東北大学大学院医学系研究科機能薬理学分野)
  • 田代 学(東北大学サイクロトロンラジオアイソトープセンター核医学研究部)
  • 本郷 道夫(東北大学病院総合診療部)
  • 青木 正志(東北大学大学院医学系研究科神経内科学分野)
  • 金澤 素(東北大学大学院医学系研究科行動医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 国民の健康を左右する要因としてストレスの比重が急激に高まっている。その代表的な病態が過敏性腸症候群(心身症)、摂食障害であり、共通する心理機制として失感情症を持つ。その克服手段を開発し、不登校や社会不適応対策に応用することは、わが国の厚生労働施策として重要である。本研究では、内臓知覚と認知過程に焦点を当て、末梢信号からの情動、心理形成の過程について、脳画像を中心に検討した。
研究方法
 対象に20-item Toronto Alexithymia Scale (TAS-20)を行い、失感情症の有無を判定した。内臓知覚の脳内プロセシングと失感情症の関連をPETを用いて検証した。脳ヒスタミンH1受容体画像の方法論を開発し、改善した。脳ヒスタミンH1受容体画像の男女差と摂食障害の像を得た。認知柔軟性の脳内神経処理過程の性差をfMRIで分析した。生理反応がendophenotypeになっている被験者のセロトニントランスポーター遺伝子多型を分析した。内臓知覚の部位を弁別する脳部位をPETを用いて検索した。
結果と考察
 膝周囲部前帯状回、島皮質、中脳水道周囲灰白質の局所脳血流量がNon-alexithymiaよりもAlexithymiaで有意に多かった。[11C]ドキセピンが安定供給され、脳画像上のH1受容体結合量の変化は生理機能、臨床病像と関連していた。脳ヒスタミンH1受容体結合は男性より女性で高く、摂食障害では扁桃体で高値であった。男性が女性より、運動前野(BA6)、女性が男性より眼窩前頭前野(BA11, BA47)で強い賦活が認められた。セロトニントランスポーター遺伝子多型l/l、l/s、s/sが判別された。直腸と下行結腸の刺激部位の違いによる脳反応差が見られた。直腸刺激は下行結腸刺激よりも中部帯状回、両側島、左1次体性感覚野の賦活が強く、下行結腸刺激は直腸刺激よりも両側腹内側前頭前野、前帯状回の賦活が強かった。
結論
 内臓知覚と情動が関連するという仮説が支持されたことを嚆矢とし、ストレス関連疾患の克服に繋がる知見を得た。失感情症の程度が高い程、過敏性腸症候群で観察される内臓知覚の脳内プロセシングのプロファイルに近づくこと、内臓知覚の部位特性、摂食障害や性差による脳反応が明らかにされたことにより、腸-脳信号による情動探求の妥当性を示すことができた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-08
更新日
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