思春期のひきこもりをもたらす精神科疾患の実態把握と精神医学的治療・援助システムの構築に関する研究

文献情報

文献番号
200730058A
報告書区分
総括
研究課題名
思春期のひきこもりをもたらす精神科疾患の実態把握と精神医学的治療・援助システムの構築に関する研究
課題番号
H19-こころ-一般-010
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
齊藤 万比古(国立精神・神経センター国府台病院リハビリテーション部)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 順一郎(国立精神・神経センター精神保健研究所)
  • 中島 豊爾(岡山県精神科医療センター)
  • 水田 一郎(神戸女学院大学人間科学部)
  • 近藤 直司(山梨県立精神保健福祉センター)
  • 皆川 邦直(法政大学現代福祉学部)
  • 弘中 正美(明治大学文学部・明治大学心理臨床センター)
  • 奥村 雄介(関東医療少年院)
  • 清田 晃生(国立精神・神経センター精神保健研究所)
  • 斎藤 環(爽風会佐々木病院)
  • 原田 豊(鳥取県立精神保健福祉センター)
  • 渡部 京太(国立精神・神経センター国府台病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在、医療・保健・福祉・教育の領域で一貫性あるひきこもり概念の策定と、標準的な評価・支援システムの開発が緊急に求められており、本研究は10代を中心とする「思春期ひきこもり」を対象として、その実態把握とともに、医療的治療と社会的援助を包括した支援システムの開発を目指すものである。
研究方法
三年計画でなされる本研究は「実態把握のための研究」「治療・援助システムの開発ならびに標準化のための研究」「総括研究」から構成されており、分担研究者は前二者の一方もしくは両方の分野の調査研究に取り組み、主任研究者と総括研究ワーキンググループは総括研究として広範な調査研究やガイドライン作成に主に取り組んでいる。
結果と考察
今年度は「ひきこもり」を「様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学、非常勤職を含む就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)を指す現象概念である。」と定義することを研究班として決定した。文献研究からひきこもりが一般人口の1?3%前後に生じる現象とされ、開始年齢は10代後半が平均値とされるが、中学年代以前に始まるものも20-30%おり、中学生・高校生年代のひきこもりへの早期介入の意義が示唆された。また医療および保健機関を訪れるひきこもり事例は統合失調症、気分障害、不安障害の診断される割合が高く、発達障害も多く見出されることがわかった。本研究班では10代のひきこもりに対するアウトリーチ・サービス、集団親ガイダンス、ひきこもりデイケア、教育相談的支援、就労支援などについて検討と試行を始めている。本年度は保健・福祉・教育相談機関に対する全国調査を実施し、ひきこもり事例の取り扱い数は教育機関が全相談事例の78%と最も多く、義務教育年代の事例では教育機関と児童相談所が、成人事例では精神保健福祉センターおよび保健所・保健センターが対応の中心となっており、回答した機関のうち96%が地域で不登校・ひきこもり事例への相談活動を行う際に精神科医療機関との連携を必要としていると回答していた。
結論
青少年の社会性発達を阻害するひきこもりは、発達障害を含む精神障害の事例が多く、不登校から始まっている事例も多いことから、保健・福祉・医療・教育等の機関が連携して思春期年代での早期対応システムを構築する意義は大きい。

公開日・更新日

公開日
2008-07-23
更新日
-