精神科救急医療、特に身体疾患や認知症疾患合併症例の対応に関する研究

文献情報

文献番号
200730057A
報告書区分
総括
研究課題名
精神科救急医療、特に身体疾患や認知症疾患合併症例の対応に関する研究
課題番号
H19-こころ-一般-009
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
黒澤 尚(日本医科大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 平田豊明(静岡県立こころの医療センター)
  • 八田耕太郎(順天堂大学医学部)
  • 小林孝文(島根県立中央病院)
  • 上條吉人(北里大学医学部)
  • 粟田主一(仙台市立病院)
  • 岸泰宏(埼玉医科大学総合医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
29,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
一般救急医療体制と比較して整備の遅れている精神科救急医療体制、対応不十分である身体合併症医療、および増加する認知症疾患について、それら3点を統合する視点での短期的施策および中・長期的に構築すべきシステムの提言が全体の目的である。
研究方法
特定地域の全数調査や構築モデルの介入研究による検証といった科学性的手法の下、次の研究組織を編成して研究を実施した。
1. 精神科救急医療体制の検証と今後の展開に関する研究(平田)
2. 実証的な精神科救急医療の構築および精神科救急・精神科領域における身体合併症に関する研究(八田)
3. 地方における精神科領域の身体合併症に関する研究(小林)
4. 一般救急・身体科領域における併存精神疾患に関する研究(上條)
5. 認知症疾患に対する統合的救急医療モデルに関する研究(粟田)
6. 社会一般の精神科領域に関する受療行動上のニーズに関する研究(岸)
結果と考察
精神科救急病棟群が地方や民間病院へと拡大するにつれて、精神科的三次救急の比率の減少、自宅退院率が増加するなど、治療の継続性が重視される傾向が強まっていた。精神科救急治療については、国内初の前向き多施設共同研究が実施され、鎮静法に関するガイドラインの基礎となる成果が得られた。身体合併症領域については、前向きコホート研究により、精神疾患・身体疾患共に入院水準の身体合併症の発生(罹患率)は人口10万対25(東京)?36(島根県)、在院日数メジアン28日、即日の依頼要請への謝絶率34%であった。総合病院型認知症疾患センターには鑑別、専門相談、地域連携とともに、BPSDと合併症に対する救急対応機能が求められていた。認知症高齢者増加率は、大都市圏において著しかった。社会一般からは、総合病院精神科が、合併症医療、精神科救急、精神科コンサルテーション機能について期待されていた。
結論
精神科救急医療システムの中・長期的な検証システムの必要性が浮き彫りとなった。精神病床を有する総合病院は、1床あたりの年間対応可能件数13.0件(回転)、都の年間の合併症発生件数3,006件、都の合併症用必要病床数231床、日本における必要数2,310床と推計できた。総合病院型精神病床の充実化とともに即応性のための機能分化誘導の施策の必要性を示唆している。大都市に暮らす認知症高齢者に対する医療資源の整備は急務の課題である。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-