NAD・Sir2依存性軸索保護機構を用いた神経変性疾患治療とその分子基盤

文献情報

文献番号
200730040A
報告書区分
総括
研究課題名
NAD・Sir2依存性軸索保護機構を用いた神経変性疾患治療とその分子基盤
課題番号
H18-こころ-一般-018
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
荒木 敏之(国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第五部)
研究分担者(所属機関)
  • 舘野 美成子(国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第五部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は、神経細胞でのNAD過剰産生がSir2の活性化を介して軸索突起の傷害刺激からの保護をもたらすことを過去に明らかにした。本研究プロジェクトにおいては、NAD・Sir2依存性軸索保護のメカニズムを解明し、神経疾患への治療応用を実現することを目的としている。本年度は、(1)NAD・Sir2依存性軸索保護機構(NDAP)の有効性の範囲の検討、 (2)Nicotinamide mononucleotide adenylyltransferase(NMNAT)過剰発現トランスジェニックマウス(Tg)のフェノタイプ解析、(3)ウイルスベクターを用いた治療モデル実験の最適化を中心に行った。
研究方法
1)wldsマウス由来初代培養大脳神経細胞が酸化ストレス、ERストレス、βアミロイド、低酸素/低栄養などの刺激に対する抵抗性を示すかどうかを検討した。
2)NMNAT1Tg、NMNAT3Tg、Wlds(W258A)Tg(Wlds蛋白のNMNAT酵素活性部位に変異を導入した蛋白を発現)の各Tgマウスにおける軸索変性遅延効果につき、形態学的・機能的検討を行なった。
3) マウスへのパラコート投与によるパーキンソン病モデルに対するAAVベクターを用いたNMNAT活性の過剰発現実験に関し、疾病モデル作成と、コントロールベクター投与による予備実験を行い、治療用高タイターベクターの作成を行った。
結果と考察
1) wldsマウスの神経細胞は特に低酸素ストレスに対して強い抵抗性を示す一方、それ以外のストレス刺激に対する明らかな保護を示さなかった。この実験モデルはNAD・Sir2系メカニズムが軸索保護を介さず直接細胞を保護していると考えられることから、NDAPが神経細胞全体を保護できるケースは限定される可能性が示唆された。
2) NMNAT3-Tgがwldsマウスと同様の強い神経軸索保護作用を示す一方、NMNAT1Tgにおける軸索保護は軽微であった。Wlds(W258A)Tg は野生型と同様であった。Wlds変異蛋白は野生型NMNAT1の局在とは異なり、ミトコンドリア・細胞質にも相当量存在することから、NMNAT発現による神経保護効果のメカニズムとしては、酵素活性以外に細胞内局在などの因子が軸索保護に重要な意義を持つことを明らかとなった。
結論
今後NDAPの解析を更に発展させミトコンドリア機能改変による神経保護を目指す。

公開日・更新日

公開日
2008-03-27
更新日
-