基礎研究と臨床研究の融合による、神経疾患によってひきおこされる疼痛に対する新しい治療法の開発

文献情報

文献番号
200730038A
報告書区分
総括
研究課題名
基礎研究と臨床研究の融合による、神経疾患によってひきおこされる疼痛に対する新しい治療法の開発
課題番号
H18-こころ-一般-016
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
柿木 隆介(自然科学研究機構生理学研究所・統合生理研究系)
研究分担者(所属機関)
  • 片山 容一(日本大学医学部脳神経外科)
  • 山本 隆充(日本大学医学部先端医学講座応用システム神経科学部門)
  • 齋藤 洋一(大阪大学医学部脳神経外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
10年以上前には、ヒトにおける痛覚認知の脳内処理機構に関してはほとんど何もわかっておらず、治療も従来からの経験に基づくものが中心であった。また、基礎研究者と臨床医の間にはコミュニケーションが非常に少なく、互いの研究成果を紹介、討議する場はほとんどなかったといっても良い状態であった。基礎研究と臨床研究の融合により、神経・筋疾患によってひきおこされる難治性疼痛の新しい(画期的な)治療法の開発を最終的な研究目標とする。
研究方法
神経・筋疾患によってひきおこされる難治性疼痛は、その発症メカニズムと責任部位が明らかにされていないため、治療が困難である。そのためには、先ず、健常人における脳内の痛覚認知機構を最新の非侵襲的脳機能計測法を用いて詳細に明らかにする。その結果に基づき、痛覚認知に重要な役割を果たしている部位を脳外科的に刺激、凝固あるいは摘出することにより、除痛治療を行う。また、極めて特殊な痛みを訴える患者さんに対しては、各患者さん各々に非侵襲的脳機能計測を行い、その結果に基づいて治療を行っていく。
結果と考察
研究代表者は本年度は4編の英文原著論文を発表した(印刷中を含む)。最も興味深かった研究成果は「情動と痛覚」の関係である。実際に痛み刺激を与えられなくても、注射のような痛そうな写真を見ただけでも「心の痛み」が出現した。その時にfMRIを計測すると、実際に痛み刺激が与えられた場合と類似の脳活動が記録された(Cerebral Cortex, 2007)。この研究成果は、痛みというものに対する心理的アプローチが重要である事を端的に示している。研究分担者は、大脳皮質運動領刺激による視床痛などの中枢性疼痛に対する効果を知る上で、重要な検査法を開発した。大脳皮質運動野刺激のメカニズムとして、帯状回などの周辺皮質への効果が考えられる。また、下行性の運動路が脊髄後角レベルでの侵害入力の抑制や視床レベルでの疼痛制御にも関与していることが示唆する重要な成果だった。日本大学、大阪大学いずれにおいても20例近い症例に治療を行い、成果をあげた。
結論
本研究も2年目となり、当初の目標である「基礎研究と臨床研究の融合による神経性難治性疼痛の新しい(画期的な)治療法の開発」にかなり近づいてきた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-14
更新日
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