統合失調症の生物学的病態解明と予防・治療法の開発

文献情報

文献番号
200730033A
報告書区分
総括
研究課題名
統合失調症の生物学的病態解明と予防・治療法の開発
課題番号
H18-こころ-一般-011
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
功刀 浩(国立精神・神経センター神経研究所 疾病研究第三部)
研究分担者(所属機関)
  • 尾崎 紀夫(名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 陣野 吉広(琉球大学大学院医科学研究科)
  • 岩田 仲生(藤田保健衛生大学医学部)
  • 那波 宏之(新潟大学脳研究所)
  • 小島 正己(産業技術総合研究所・セルエンジニアリング研究部門)
  • 尾関 祐二(国立精神・神経センター神経研究所 疾病研究第三部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、1) 統合失調症における高次脳機能障害や脳構造異常の解明、2)鍵分子の1つである脳由来神経栄養因子(BDNF)に着目した診断・治療法の開発、3)網羅的遺伝子解析や末梢血を用いた網羅的遺伝子発現解析による新たな標的分子の探索と診断法の開発、4)周産期障害やエピジェネティクスに注目した環境因の解明と薬物開発とを行う。
研究方法
1)高次脳機能検査として、WAIS-R(知能)、JART (病前知能)、WMS-R(記憶)、WCST (前頭葉機能)、TCI (気質・性格)、PPI (情報処理)等を施行した。MRI画像(拡散テンソル画像を含む)を撮像した。
2)BDNF遺伝子の多型と統合失調症や中間表現型としての認知機能や脳構造との関連について解析した。また、BDNFの前躯体と成熟型タンパクの血中濃度測定を行っている。
3)5万SNPs を用いた3段階スクリーニングにより、リスク遺伝子を絞り込んでいる。また、患者リンパ球の株化細胞を用いて網羅的遺伝子発現解析を行っている。
4) 周産期障害による発症仮説に基づいてモデル動物を作製し、有効な治療薬を探索した。
結果と考察
1)統合失調症患者では、知能、記憶、実行機能、情報処理が著明に障害されており、特異的な気質・性格をもつことを明らかにした。また、脳構造の変化(灰白質の減少、脳質拡大、神経ネットーワーク障害)について明らかにした。
2)われわれが見出したBDNF遺伝子の多型が、統合失調症と関連し、知能・記憶や脳構造と関連することを明らかにした。また、BDNFの前駆体蛋白の血中濃度の測定を行い、現在解析中である。
3)3次スクリーニングにより4つのリスク遺伝子を同定した。リンパ球の遺伝子発現解析では、統合失調症患者において発現が上昇/低下している遺伝子を多数同定し、診断に有用な遺伝子を同定した。
4)上皮成長因子(EGF)受容体阻害薬(エオモジン類縁体)は、統合失調症モデル動物の行動異常を改善し、統合失調症治療薬として有望であることが示唆された。
結論
統合失調症では著明な高次脳機能障害と構造異常が見られ、その改善にはBDNFを鍵分子とした診断・治療法の開発をさらに進める必要がある。
SNPs解析や遺伝子発現解析により、最終年度に診断・治療の鍵となる分子を決定することが十分期待できる。
EGF受容体阻害薬は新しい治療薬として有望である。

公開日・更新日

公開日
2008-04-14
更新日
-