終板アセチルコリンエステラーゼ欠損症、及び、他の細胞外マトリックス分子欠損症におけるタンパク標的療法の開発研究

文献情報

文献番号
200730018A
報告書区分
総括
研究課題名
終板アセチルコリンエステラーゼ欠損症、及び、他の細胞外マトリックス分子欠損症におけるタンパク標的療法の開発研究
課題番号
H17-こころ-一般-023
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
大野 欽司(名古屋大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 祖父江 元(名古屋大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経筋接合部の分子欠損症による先天性筋無力症候群は、世界中から数多くの症例が報告されているが日本からの報告は少ない。諸外国でもde novo遺伝子変異が数多く存在することから、本症候群は日本にも多数存在すると考えられる。先天性筋無力症候群は欠損分子に応じた治療が可能であるタイプが多く、本症候群の診断、及び新規治療法開発研究は、患者利益につながると期待をされる。先天性筋無力症候群の中でも、COLQ遺伝子変異による終板AChE欠損症は、従来、全く治療法が存在しない。わが国の終板AChE欠損症の一例も不幸な転帰を辿っている。本研究では、終板AChE欠損症に対して、臨床応用を近視野に入れたタンパク標的療法の開発研究を行う。
研究方法
Collagen Q (COLQ遺伝子産物)は、コラーゲンドメインを介して3分子が3重鎖構造を形成し、acetylcholinesterase (AChE) catalytic subunit (ACHE遺伝子産物)12分子と結合し、非対称性A12-AChEを形成する。本研究では、collagen Qがシナプス基底膜への係留シグナルを有する細胞外構造タンパクであることを利用し、COLQ欠損モデル動物のTリンパ球に正常COLQ遺伝子と正常ACHE遺伝子を導入し、A12-AChEを血中に発現させ、シナプス基底膜への係留を試みた。また、骨格筋にCOLQ遺伝子を導入し、一部の骨格筋に発現したA12-AChEが、血流・組織間液を介してCOLQ遺伝子非導入骨格筋のシナプス基底膜への係留することを確認した。
結果と考察
平成19年度は、レトロウィルスのTリンパ球への導入と、組換えA12-AChEのTリンパ球からの放出を確認した。大量の遺伝子組換えTリンパ球の調整が完了していないために、モデル動物を用いた治療には至らなかった。骨格筋への親和性を有するAAV8を用いた研究では、モデル動物の治療に成功した。5週齢のマウスに治療を行い、運動機能がほぼ正常化できたことは、本プロジェクトで提案をしてきた「タンパク自体の組織親和性を用いたタンパク標的療法」の有用性を示唆している。
結論
タンパク標的療法は従来の神経筋疾患モデル動物の遺伝子治療ではみられない程度の良好な運動能力改善効果を示した。今後、本手法の臨床応用や他疾患への応用を含めて研究を行う。

公開日・更新日

公開日
2008-04-14
更新日
-

文献情報

文献番号
200730018B
報告書区分
総合
研究課題名
終板アセチルコリンエステラーゼ欠損症、及び、他の細胞外マトリックス分子欠損症におけるタンパク標的療法の開発研究
課題番号
H17-こころ-一般-023
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
大野 欽司(名古屋大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 祖父江 元(名古屋大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経筋接合部の分子欠損症による先天性筋無力症候群は、世界中から数多くの症例が報告されているが日本からの報告は少ない。諸外国でもde novo遺伝子変異が数多く存在することから、本症候群は日本にも多数存在すると考えられる。先天性筋無力症候群は欠損分子に応じた治療が可能であるタイプが多く、本症候群の診断、及び新規治療法開発研究は、患者利益につながると期待をされる。先天性筋無力症候群の中でも、COLQ遺伝子変異による終板AChE欠損症は、従来、全く治療法が存在しない。わが国の終板AChE欠損症の一例も不幸な転帰を辿っている。本研究では、終板AChE欠損症に対して、臨床応用を近視野に入れたタンパク標的療法の開発研究を行う。また、本邦における先天性筋無力症候群の新規同定と診断・治療を確立する。
研究方法
Collagen Qがシナプス基底膜への係留シグナルを有する細胞外構造タンパクであることを利用し、COLQ欠損モデル動物のTリンパ球に正常COLQ遺伝子と正常ACHE遺伝子を導入し、A12-AChEを血中に発現させ、シナプス基底膜への係留を試みた。また、骨格筋にCOLQ遺伝子を導入し、一部の骨格筋に発現したA12-AChEが、血流・組織間液を介してCOLQ遺伝子非導入骨格筋のシナプス基底膜への係留することを確認した。
結果と考察
ヒトCOLQ遺伝子とヒトACHE遺伝子を組み込んだレトロウィルスをTリンパ球に導入し、組換え非対称性A12-AChEのTリンパ球からの放出を確認した。大量の遺伝子組換えTリンパ球の調整が完了していないために、モデル動物を用いた治療には至らなかった。骨格筋への親和性を有するAAV8にヒトCOLQ遺伝子を組み込み、モデル動物への静脈投与にて運動機能の著明な改善を認めた。また、軽度四肢近位筋力低下と労作性呼吸困難を主訴とする37歳男性がスローチャンネル症候群であることを見出し、アセチルコリン受容体ベータサブユニット第3膜貫通ドメインのV296A変異を有することを同定し、常用量のquinidineと常用量のfluoxetineが極めて有効であることを確認した。
結論
タンパク標的療法は従来の神経筋疾患モデル動物の遺伝子治療ではみられない程度の良好な運動能力改善効果を示した。今後、本手法の臨床応用や他疾患への応用を含めて研究を行って行きたい。
 先天性筋無力症候群は、スローチャンネル症候群をはじめとして病態に応じた治療方法が可能な疾患群が多く、本症候群に対して積極的に電気生理学診断を行う重要性が示された。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200730018C

成果

専門的・学術的観点からの成果
細胞外マトリックスタンパク自体の組織親和性を用いたタンパク標的療法を、終板アセチルコリンエステラーゼ欠損モデル動物であるコラーゲンQノックアウトマウスに応用し、従来の神経筋疾患に対する遺伝子治療では達成できなかった良好な運動症状の改善を認めた。本手法を細胞外分子欠損症に対する汎用の治療方法として将来確立できると期待される。
臨床的観点からの成果
コラーゲンQ欠損による終板アセチルコリンエステラーゼ欠損症は従来有効な治療法がなく不幸な転帰を辿ることが多い。また、他の細胞外分子欠損症も治療が困難な病態が多く存在し、これら病態に対するタンパク標的療法の開発は臨床的も重要であると考える。
ガイドライン等の開発
特記事項なし
その他行政的観点からの成果
特記事項なし
その他のインパクト
特記事項なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sahashi K, Masuda A, Matsuura T, et al.
In vitro and in silico analysis reveals an efficient algorithm to predict the splicing consequences of mutations at the 5’ splice sites
Nucleic Acids Res , 35 , 5995-6003  (2007)
原著論文2
Ichihara M, Murakumo Y, Masuda A, et al.
Thermodynamic instability of siRNA duplex is a prerequisite for dependable prediction of siRNA activities
Nucleic Acids Res , 35 , 123-  (2007)
原著論文3
Saito T, Amakusa Y, Kimura T, et al.
Myotonic dystrophy type 2 in Japan: ancestral origin distinct from Caucasian families
Neurogenetics , 9 , 61-63  (2008)
原著論文4
Ito M, Masuda A, Jinno S, et al.
Viral vector-medicated expression of human collagen Q in cultured cells
Chemico-Biological Interactions (in press)  (2008)
原著論文5
Kurosaki T, Matsuura T, Ohno K, et al.
Long-range PCR for the diagnosis of spinocerebellar ataxia type 10
Neurogenetics (in press)  (2008)
原著論文6
Gao K, Masuda A, Matsuura T, et al.
Human branch point consensus sequence is yUnAy
Nucleic Acids Res (in press)  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-