免疫疾患に対する免疫抑制療法等先端的新規治療法に関する研究

文献情報

文献番号
200729011A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫疾患に対する免疫抑制療法等先端的新規治療法に関する研究
課題番号
H17-免疫-一般-011
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
小池 隆夫(北海道大学大学院医学研究科内科学講座・第二内科)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 一彦(東京大学大学院医学系研究科内科学専攻 アレルギーリウマチ学・内科学)
  • 原田 実根(九州大学大学院病態修復内科学(国立病院機構大牟田病院))
  • 住田 孝之(筑波大学大学院人間総合科学研究科先端応用医学専攻臨床免疫学)
  • 山村 隆(国立精神・神経センター神経研究所免疫研究部)
  • 長澤 浩平(佐賀大学医学部内科)
  • 上阪 等(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科膠原病・リウマチ内科)
  • 坂口 志文(京都大学再生医科学研究所生体機能調整学)
  • 田中 良哉(産業医科大学医学部第一内科学講座)
  • 畠山 鎮次(他移動大学大学院医学研究科 医学専攻生化学講座医化学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
28,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、多発性筋炎、多発性硬化症などの難治性全身性自己免疫疾患や間質性肺炎などの難治性病態に対する先端的新規治療法の確立と開発を行うこと。
研究方法
①抗リン脂質抗体による細胞刺激シグナル、細胞活性化メカニズムについての検討を行った。②炎症誘発性サイトカインの分子レベルでのシグナルにおける抑制機序を解析した。③TGF-βの作用に拮抗する薬剤の有効性、安全性を検討した。④IL-32による炎症性関節炎の病態形成への関与を検討した。⑤筋炎モデルマウスを確立し、詳細な検討を加えた。⑥invariant V24 NKT (iNKT) 細胞の役割を解析した。⑦制御性T細胞特異的マーカーを認識する単クローン抗体、および制御性T細胞機能を操作できるアゴニステイックあるいはブロッキング抗体を作製し、免疫応答におよぼす効果を解析した。⑧CD20抗体療法を、既存の治療に抵抗性を示した重症SLEに投与し、臨床効果を検討した。⑨治療抵抗性自己免疫疾患に対する自己末梢血幹細胞移植の安全性と有効性を検討した。
結果と考察
免疫調節細胞であるCD4陽性CD25陽性の抑制性T細胞やNKT細胞の機能調節による免疫・炎症反応の抑制、さらには自己抗体産性B細胞を弁別できる方法論の確立等、新しい治療に応用可能になった。分子標的阻害による抗リン脂質抗体症候群の新たな治療法、TGFβアゴニストによる強皮症やループス腎炎等の繊維化病変の治療応用、ユビキチン化酵素や新規サイトカインIL-32をターゲットとしたな関節リウマチの治療戦略の基礎的成果を上げることができた。抗CD20抗体や造血幹細胞移植等すでに他分野で使用されている薬剤や治療の方法論が、自己免疫疾患の分野でも現実的に応用が可能となってきた。いままで存在しなかった、多発性筋炎のモデルマウスの作成に成功したが、それを用いた筋炎の治療法の開発が可能となった。
結論
本年度は班員相互の議論と技術的交流を通じて、先端的かつオリジナリティーの高い研究成果をあげることができた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200729011B
報告書区分
総合
研究課題名
免疫疾患に対する免疫抑制療法等先端的新規治療法に関する研究
課題番号
H17-免疫-一般-011
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
小池 隆夫(北海道大学大学院医学研究科内科学講座・第二内科)
研究分担者(所属機関)
  • 上阪 等(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 膠原病・リウマチ内科学)
  • 坂口 志文(京都大学再生医科学研究所 生体機能調節学分野)
  • 住田 孝之(筑波大学大学院人間総合科学研究科 先端応用医学選考臨床免疫学)
  • 田中 良哉(産業医科大学医学部第一内科学講座)
  • 畠山 鎮次(北海道大学大学院医学研究科生化学講座)
  • 原田 実根(九州大学大学院医学研究院病態修復内科学(国立病院機構大牟田病院))
  • 長澤 浩平(佐賀大学医学部内科学)
  • 山村 隆(国立精神・神経センター神経研究所免疫研究部)
  • 山本 一彦(東京大学大学院医学系研究科内科学専攻 アレルギーリウマチ学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、難治性の自己免疫疾患における免疫系の異常の特徴を明らかにし、先端的新規治療法を確立・開発し、患者の生活の質を向上させ、さらには疾患の治癒を目指すことである。
研究方法
①抗リン脂質抗体による向血栓細胞活性化の機序に関する研究②免疫・炎症反応の抑制に関与するユビキチン化酵素の解析③TGF-βアンタゴニストを介した自己免疫疾患の制御に関する研究④関節炎に関連する新しいサイトカインに関する研究⑤多発性筋炎に対する免疫抑制療法等先端的新規治療法に関する研究⑥病原性T細胞の分化およびサイトカイン産生制御機構に関する研究⑦制御性T細胞と自己免疫疾患に関する研究⑧SLEに対する抗CD20抗体療法の開発に関する研究⑨自己免疫疾患における自己抗体産生B細胞を標的とした治療法の開発⑩難治性自己免疫疾患に対する自己末梢血CD34陽性細胞移植に関する研究
結果と考察
①ゲルゾリンがβ2GPIと結合することが確認され、さらにインテグリンα5β1と共役して抗カルジオリピン/β2GPI抗体による細胞刺激シグナルに関与していることが示唆された。②新たなA20結合タンパク質としてYmerを同定しNF-κBシグナルに抑制的に働くことが明らかとなった。③自己免疫疾患の難治性病態(腎炎、間質性肺炎)に対するTGF-β阻害薬による治療戦略の有効性を示す事ができた。④関節炎に関与する複数の新規サイトカインを同定した。⑤多発性筋炎の病態を反映するモデルマウスを確立した。モデルマウスにおける筋炎発症に関与するサイトカインを同定した。⑥MS患者T細胞のDNAマイクロアレイ解析を通じて同定したNR4A2は、IL-17をはじめとする炎症制サイトカイン産生制御能を有する分子であることが示された。また合成レチノイドAm80は、Th17細胞分化制御能を有することが明らかとなった。⑦SLEの治療におけるB細胞を標的とした生物学的製剤が、病態解明や治療にブレークスルーを齎す可能性が明らかになった。⑧難治性自己免疫疾患患者に対する自己PBSCTは安全かつ有効な治療法である事が示されるとともに、その臨床効果は3年以上持続することが示唆された。
結論
全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、多発性筋炎、多発性硬化症などの難治性全身性自己免疫疾患や間質性肺炎などの難治性病態に対する先端的新規治療法の確立と開発を行った。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200729011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究の目的は、難治性の自己免疫疾患における免疫系の異常の特徴を明らかにし、先端的新規治療法を確立・開発し、患者の生活の質を向上させ、さらには疾患の治癒を目指すことであが、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、多発性筋炎、多発性硬化症などの難治性全身性自己免疫疾患や間質性肺炎などの難治性病態に対する先端的新規治療法の基礎的研究成果を上げることができた。
臨床的観点からの成果
難治性SLEに対する抗CD20抗体(リツキサン)の有用性を明らかにすることができ、臨床応用のための基礎的知見を数多く得ることができた。強皮症を始めとする難治性自己免疫疾患に対する、造血幹細胞移植の有用性を明らかにすることができた。筋炎のモデル動物を作成することに成功した。
ガイドライン等の開発
難治性自己免疫疾患に対する、造血幹細胞移植の治療レジメを発表した。今後は「先進医療」に申請する予定である。
その他行政的観点からの成果
既存治療(抗CD20抗体(リツキサン)ならびに造血幹細胞移植)でも難治性自己免疫疾患への応用が可能であることを明らかにし、難病が保険診療で治療可能なことを示した。
その他のインパクト
研究班としては特に公開シンポジウムは開催しなかったが、班員の個別研究の一部はマスコミで報道された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
165件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
14件
学会発表(国内学会)
109件
学会発表(国際学会等)
71件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Bohgaki T, Atsumi T, Koike T
Multiple autoimmune diseases after autologous stem-cell transplantation
New Engl J Med , 357 (26) , 2734-2736  (2007)
原著論文2
Yasuda S, Stevens RL, Terada T
Defective expression of ras guanyl nucleotide-releasing protein 1 in a subset of patients with systemic lupus erythematosus.
J. Immunol , 179 (7) , 4890-4900  (2007)
原著論文3
Horita T, Ichikawa K, Kataoka H
Human monoclonal antibodies against the complex of phosphatidylserine and prothrombin from patients with the antiphospholipid antibodies
Lupus , 16 (7) , 509-516  (2007)
原著論文4
Amengual O, Atsumi T, Komano Y
A polymorphism in human platelet antigen 6b and risk of thrombocytopenia in patients with systemic lupus erythematosus
Arthritis Rheum , 56 (8) , 2803-2809  (2007)
原著論文5
Furukawa S, Yasuda S, Amengual O
Protective effect of pravastatin on vascular endothelium in patients with System Sclerosis: a pilot study.
Ann Rheum Dis , 65 (8) , 1118-1120  (2006)
原著論文6
Yasuda,S.,Atsumi,T.,Matsuura,E.
Significance of valine/leucine247 polymorphism of β2-glycoprotein I in antiphospholipid syndrome: increased reactivity of anti-β2-glycoprotein I autoantibodies to the valine247β2-glycoprotein I variant.
Arthritis Rheum , 52 (1) , 212-218  (2005)
原著論文7
Kochi,Y.,Yamada,R.,Suzuki,A.
A functional variant in FCRL3, encoding Fc receptor-like 3, is associated with rheumatoid arthritis and several autoimmunities.
Nat Genet , 37 (5) , 478-485  (2005)
原著論文8
Bohgaki,T., Amasaki,Y., Nishimura,N
Up regulated expression of tumour necrosis factor αconverting enzyme in peripheral monocytes of patients with early systemic sclerosis.
Ann Rheum Dis. , 64 , 1165-1173  (2005)
原著論文9
Fukae,J., Amasaki,Y., Yamashita,Y
Butyrate suppresses tumor necrosis factor α production by regulating specific messenger RNA degradation mediated through a cis-acting AU-rich element.
Arthritis Rheum. , 52 (9) , 2697-2707  (2005)
原著論文10
Kohyama K, Harigai M, Iwakura Y,
A new murine model defines critical mediators in the pathology and treatment of polymyositis
Arthritis Rheum , 56 (4) , 1304-1314  (2007)
原著論文11
Sugihara, M., Tsutsumi, A., Suzuki, E.,
Effect of infliximab therapy on gene expression levels of tumor necrosis factor α, tristetraprolin, T cell intracellular antigen 1, and Hu antigen R in patients with rheumatoid arthritis.
Arthritis Rheum. , 56 , 2160-2169  (2007)
原著論文12
Takanori, Y., Naito, Y., Goto, D.,
Overexpression of phosphorylated STAT-1α in the labial salivary glands of patients with Sjogren’s syndrome.
Arthritis Rheum. , 54 , 3476-3484  (2006)
原著論文13
Suzuki F, Nanki T, Imai T,
Inhibition of CX3CL1 (fractalkine) improves experimental autoimmune myositis in SJL/J mice.
J Immunol , 175 (10) , 6987-6996  (2005)
原著論文14
Chiba, A., S. Kaieda, S. Oki, T
The involvement of Vα14 NKT cells in the pathogenesis of murine models of arthritis
Arthr. Rheumat , 52 , 1941-1948  (2005)
原著論文15
Aranami, T., S. Miyake and T. Yamamura
Differential expression of CD11c by peripheral blood NK cells reflects temporal activity of multiple sclerosis.
J. Immunol. , 177 , 5659-5667  (2006)
原著論文16
Kaieda, S., S. Oki, C. Tomi, T.
Activation of invariant natural killer T cells by synthetic glycolipid ligands suppresses autoantibody-induced arthritis.
Arthr. Rheumat. , 56 , 1836-1845  (2007)
原著論文17
Nakagome K, Tabata Y, Okasora T,
Hepatocyte growth factor significantly suppresses collagen-induced arthritis in mice.
J Immunol. , 179 , 5504-5513  (2007)
原著論文18
Sagawa K, Nagatani K, Komagata Y
Angiotensin receptor blockers suppress antigen-specific T cell responses and ameliorate collagen-induced arthritis in mice.
Arthritis Rheum. , 52 , 1920-1928  (2005)
原著論文19
Tsujimura, S., Saito, K., Nakayamada, S.,
Clinical relevance of expression of P-glycoprotein on peripheral lymphocytes to steroid-resistance in systemic lupus erythematosus
Arthritis Rheum , 52 , 1676-1683  (2005)
原著論文20
Nakayamada, S., Saito, K., Nakano, K.
β1 integrin transduces an activation signal in T cells of patients with systemic lupus erythematosus
Arthritis Rheum , 56 , 1559-1568  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-