HCV感染における宿主応答の分子機構の解析と新規創薬標的の探索

文献情報

文献番号
200728024A
報告書区分
総括
研究課題名
HCV感染における宿主応答の分子機構の解析と新規創薬標的の探索
課題番号
H19-肝炎-一般-011
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
松浦 善治(大阪大学微生物病研究所分子ウイルス分野)
研究分担者(所属機関)
  • 考藤 達哉(大阪大学医学研究科)
  • 竹内  理(大阪大学微生物病研究所)
  • 藤田 尚志(京都大学ウイルス研究所)
  • 加藤 宣之(岡山大学大学院医歯学総合研究科)
  • 土方  誠(京都大学ウイルス研究所)
  • 小原 道法(東京都臨床研)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
38,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
C型肝炎ウイルス(HCV)による自然免疫や獲得免疫の回避機構を解析し、これらの成果を新しい治療法の開発に資することを目的とする。
研究方法
1) HCVの初期感染過程に関与する宿主因子を解析した。2) 血液中に存在する樹状細胞のTLR発現プロファイルをC型慢性肝炎患者と非感染者で比較した。3) RIG-I欠損細胞にHCV遺伝子を導入しRIG-Iの役割を検討した。4) 2本鎖RNAを細胞外から加えた場合にNS3-4AがIFNの産生を抑制できない原因を解析した。5) 患者血清由来HCVの感染によるIRF7活性化機構を解析した。TLRの誘導を阻害するHCV蛋白質を検索した。
結果と考察
1) NS3がプロテアーゼ活性非依存的にTLRシグナルを抑制し、NS5AがTLRシグナル伝達系で重要なMyD88に結合して抑制的に作用することを見いだした。2) C型慢性肝炎患者でリバビリンによってTh1誘導能が改善する症例では治療効果が高いことが示された。また、HCVによるシグナル伝達抑制機構の存在が示唆された。3) RIG-IのC末端に活性抑制領域が存在し、ウイルスRNAと宿主のRNAの識別を行なうことを明らかにした。4) IFN-α6の産生をモニターできるマウスを作製し、RNAウイルスの呼吸器感染においては肺胞マクロファージがIFN-α産生細胞であることを明らかにした。5) ヒト血清由来のHCVが効率良く感染し増殖する新規不死化ヒト肝細胞を樹立した。6)病態の異なる患者由来NS3/4AはIPS-1を切断するが、TRIFは切断しないことが示された。
結論
) NS5A蛋白質がMyD88と相互作用することで、TLRシグナル伝達経路に干渉していることが示唆された。2) HCV排除に樹状細胞が関与しており、免疫制御治療の標的になりうることが明らかとなった。3) RIG-IのCTDはセンサードメインそのものであり、HCV RNAはこの部分で感知されていると考えられる。4) HCV RNAの複製により活性化されるIFN産生系におけるNS3-4Aの抑制効果は不完全であることを明らかにした。6) ヒトの肝臓ではIRF7がもともと発現しており、ウイルス感染によって早期に活性化され、IFN産生に機能することが考えられた。

公開日・更新日

公開日
2008-03-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-01-22
更新日
-