ウイルス肝炎による肝がんの再発防止メカニズムの解明に関する研究

文献情報

文献番号
200728021A
報告書区分
総括
研究課題名
ウイルス肝炎による肝がんの再発防止メカニズムの解明に関する研究
課題番号
H19-肝炎-一般-008
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
小俣 政男(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 石橋 大海(国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター)
  • 正木 尚彦(国立国際医療センター 第二消化器科)
  • 古瀬 純司(国立がんセンター東病院 肝胆膵内科)
  • 吉田 晴彦(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
  • 椎名 秀一朗(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
  • 金井 文彦(東京大学医学部附属病院22世紀医療センター臨床薬効評価学講座)
  • 建石 良介(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
  • 田中 康雄(東京大学医学部附属病院22世紀医療センター臨床薬効評価学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
35,047,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝癌の予後をさらに改善するためには年率15?20%に及ぶ肝癌の治療後再発を抑止することが必要である。本研究では、再発をもたらす遺伝的素因および癌結節遺伝子異常を解析し、肝癌再発機序の解明を目指し、さらには患者個別の再発防止システムを構築する。本研究はSNP解析と癌結節遺伝子異常の解析からなり、臨床データとあわせて肝癌再発機序を解明する。
研究方法
癌結節の遺伝子異常の解明:肝癌に特異的なsomaticな遺伝子異常を調べるため、まず高密度オリゴヌクレオチドアレイを用いて、ヒト肝癌細胞株における遺伝子異常(コピー数増幅や欠失など)を網羅的に解析した。次に、その成績に基づいて、ヒト肝癌腫瘍生検70検体について遺伝子異常を調べた。この際、マイクロダイセクション法を用いて癌部および非癌部を分離し別個に解析した。さらに、検出された遺伝子異常と肝癌再発等の臨床情報との関連を検討した。
結果と考察
肝癌細胞株において高頻度に異常のみられた10種の遺伝子について、腫瘍生検標本を用いて解析したところ、2種の遺伝子では大きな結節で有意にコピー数増加がみられ、またGRHL2のコピー数が増幅されている肝癌では、多変量解析で調整しても再発時間が有意に短縮していた。肝癌再発の機序としては、多中心性の新規発癌と微小肝内転移肝癌があると考えられる。癌結節におけるGRHL2の増幅が肝癌再発に関連していたことは肝内転移を示唆するが、癌結節における特定の遺伝子異常が生じやすい遺伝的体質の存在も否定できず、その場合は多中心性発癌の可能性もある。一方では異時性肝癌のクロナリティーの解明、他方では肝癌再発と関連するSNPの解析が肝癌再発機序の解明に必須である。
結論
本年度の研究においては、肝癌結節遺伝子異常(増幅、LOH)と再発等予後との関連を検討し、特定遺伝子の増幅が肝癌再発と有意に関連することを見出した。肝癌再発機序の解明には、今後、異時性発癌におけるクロナリティーの検討と、新規ならびに再発肝癌に関連するgenomic SNPの網羅的検討が重要である。

公開日・更新日

公開日
2008-04-09
更新日
-