C型肝炎の状況・長期予後の疫学像の解明に関する研究

文献情報

文献番号
200728011A
報告書区分
総括
研究課題名
C型肝炎の状況・長期予後の疫学像の解明に関する研究
課題番号
H18-肝炎-一般-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
井上 真奈美(国立がんセンターがん予防・検診研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 若井 建志(名古屋大学大学院)
  • 田中 英夫(愛知県がんセンター研究所)
  • 田中 恵太郎(佐賀大学医学部)
  • 廣田 良夫(大阪市立大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
45,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国における肝がんの発症にはC型肝炎ウイルス(HCV)の持続感染が重要な役割を果たしているが、感染者における肝がん等への進展・防御要因の疫学的解明は進んでいない。本研究は、既存集団等を用いて、HCV感染者における肝がん等への進展・防御要因を、環境・宿主・ウイルス関連要因、遺伝子・環境交互作用などの側面から疫学的に検討し、HCV感染者におけるHCV関連疾患の発症予防対策に資することを目的とする。
研究方法
研究対象集団におけるHCV感染状況を特定した上、HCV感染者におけるいくつかの環境・宿主・ウイルス関連要因や遺伝子多型交互作用と肝がんや肝硬変との関連について検討した。また、コーヒー摂取による肝がん予防介入研究を計画した。
結果と考察
血清ALT値がHCV感染の有無によらず独立した肝がんの予測マーカーとなることを示した。その他の血清予測マーカーとして、SOD活性値およびsFas濃度との正の関連及びIGF-I、IGF-II、IGFBP-3、TGF-β1値との負の関連を見いだした。また、慢性肝疾患患者において最近の喫煙が肝がんリスクを上昇させ、慢性肝疾患患者においても禁煙を勧奨する事が重要であることを明らかにした。一方、喫煙と関連する遺伝子多型では、CYP1A2多型が現在喫煙者あるいは現在多飲者において肝がんリスクを大きく修飾し、前炎症性サイトカインの遺伝子多型では、非飲酒者および現在喫煙者におけるIL-1B-31C/T多型の肝がんとの関連が示唆された。重感染としては抗HBc抗体及び抗H. pylori抗体との関連は認められず、抗HTLV-I抗体との関連は集団により一致していなかった。肝硬変の要因としては、内因性エストロゲン及び緑茶・コーヒー・高水分摂取と負の関連、ショ糖や炭水化物の高摂取と正の関連を認めた。さらに、ベトナムにおいて、慢性肝炎患者を対象としALT値の変動を指標としたクロスオーバーデザインによるコーヒー摂取介入研究を実施中である。
結論
複数集団による検討から、HCV感染者において、喫煙、緑茶・コーヒー摂取の他、食習慣、女性関連要因、肝機能値、SODやIGF関連因子等、血清予測マーカー、さらにはHTLV-IやオカルトHBV、H.Pylori等との重感染と肝がんや肝硬変との関連について検証した。また慢性肝炎患者を対象としたコーヒー摂取介入研究を実施中である。

公開日・更新日

公開日
2008-03-25
更新日
-