我が国における動物由来感染症の感染実態把握に資する研究

文献情報

文献番号
200726039A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国における動物由来感染症の感染実態把握に資する研究
課題番号
H19-新興-一般-010
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
高山 直秀(東京都立駒込病院小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 道永麻里(東京都医師会)
  • 川島龍一(神戸市医師会)
  • 多田有希(国立感染症研究所感染症情報センター)
  • 菅沼明彦(東京都立駒込病院感染症科)
  • 丸山総一(日本大学生物資源科学部)
  • 赤尾信明(東京医科歯科大学大学院国際環境寄生虫学)
  • 福士秀人(岐阜大学応用生物科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
13,440,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国において動物由来感染症の診療に関して医師と獣医師の連携が不十分で,動物由来感染症の診療および診断に必要な検査体制の確立が立ち後れているばかりか,動物由来感染症の発生数,発生地域,感染経路などの実態把握も不十分である。
研究方法
動物由来感染症の実態把握に資するため,①動物由来感染症症例を,感染症関係学会での発表及び「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)に基づく届出症例について収集した。②動物由来感染症を診療する上で不可欠な血液検査を,トキソカラ症,トキソプラズマ症,猫ひっかき病,オウム病,Q熱,E型肝炎の6疾患について,濾紙採血検体を用いて試行した。③36年ぶりに輸入狂犬病が2例発生した後に狂犬病ワクチンへの需要が急増したことから,新しい狂犬病ワクチン接種方式の可能性などを検討した。ヒト狂犬病症例を国外から収集し,海外で報告されたヒト狂犬病患者の治療法についても検討した。
結果と考察
2006年4月~12月の間にE型肝炎は46例,オウム病は16例,日本紅斑熱49例,ライム病12例,レプトスピラ症24例の届出があり,感染経路,患者年齢などの集計ができた。濾紙検体検査では,14件中1件でイヌ回虫に対する抗体が陽性,猫引っ掻き病抗体は10件中1件で,トキソプラズマ抗体は13件中1件で陽性であったが,オウム病抗体は11件,Q熱抗体は14件すべて陰性であった。1981年以降の27年間に英文で発表されたヒト狂犬病症例報告を検索して,78件の報告を抽出した。また,WHO狂犬病専門家会議の第1回報告書を翻訳した。我が国において狂犬病が流行していた時代に発行された,狂犬病流行及び予防対策の記録を収集してデジタル化した。
結論
感染症法に基づく届出症例の集計・分析は動物由来感染症の実態把握に有用な手段となり,集計・分析結果は医療関係者に動物由来感染症診断に有益な情報となる;濾紙採血検体による抗体検査は,今後さらに継続する必要がある;狂犬病ワクチンへの需要が急増した場合に,新たな接種法による曝露前免疫の導入が有用な対策となる;我が国ではヒト狂犬病の診断・治療の経験が集積されていないので,諸外国での症例報告や治療経験を参考にした国内医療関係者用治療指針をも作成すべきである;WHO狂犬病専門家会議の報告書は医療関係者や動物狂犬病対策関係者にとって有用な情報源となる。

公開日・更新日

公開日
2008-05-02
更新日
-