抗酸菌感染症の発症・診断・治療・新世代予防技術に係わる分子機構に関する研究

文献情報

文献番号
200726035A
報告書区分
総括
研究課題名
抗酸菌感染症の発症・診断・治療・新世代予防技術に係わる分子機構に関する研究
課題番号
H19-新興-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
牧野 正彦(国立感染症研究所 病原微生物部)
研究分担者(所属機関)
  • 河村 伊久雄(京都大学大学院 医学研究科)
  • 小林 和夫(国立感染症研究所 免疫部)
  • 田村 敏生(国立感染症研究所 病原微生物部 )
  • 菅原 勇(結核予防会結核研究所)
  • 荒川 宜親(国立感染症研究所 細菌第二部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
53,310,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
病原性抗酸菌は、免疫応答能を凌駕した後、特異な病状を発現させる制御が難しい慢性感染症である。病原性抗酸菌感染症の制御に貢献すべく、診断・予防・治療上の諸問題の解決を目的とした。
研究方法
結核菌感染細胞の細胞死を半定量的に測定した。KasB欠損結核菌株を用い休眠誘導ターゲット分子同定を試みた。1型糖尿病ラットを用い、危険因子としての糖尿病を検討した。ウレアーゼ欠損BCG及びHSP70-MMP-II結合蛋白導入BCGを作製した。Ag85B由来ペプチド25を用いて、CD8陽性T細胞活性化機構を検索した。細胞壁を構築する抗酸菌特異的遺伝子破壊株を産生した。
結果と考察
組織破壊誘導能力の強い強毒株は感染細胞のネクローシスを誘導し宿主免疫反応の誘導を阻止する。弱病原性株は、アポトーシスを誘導し宿主免疫反応を惹起する。細胞死の形態を規定する抗酸菌因子の同定が、新しい予防・治療法の開発に繋がることが判明した。宿主免疫反応が有効に活性化されると、抗酸菌は休眠状態に入る。休眠誘導ターゲット分子として、細胞壁のミコール酸が重要である可能性が示唆された。免疫不全がリスクファクターとして大きく脚光を浴びてきたが、これに加え糖尿病が重要な位置を占めることが明らかになった。高血糖値が持続するとマクロファージの機能障害が誘導され、生体防御反応の誘導が妨げられた。発症予防には、初回免疫と追加免疫の両者およびその組み合わせが重要であり、CD4陽性T細胞とCD8陽性T細胞の両者が活性化する必要がある。初回ワクチンとして、ウレアーゼ欠損BCGはCD4陽性T細胞を、HSP-70-MMP-II結合蛋白導入BCGはCD8陽性T細胞をより強く活性化した。追加免疫ワクチンの開発では、CD8陽性T細胞の活性化に主眼を置いた。結核菌表層タンパク抗原Ag85の有効性とその機序の解析が行われ、CD8陽性T細胞が抗原提示細胞から強いシグナルを受けるためには、CD4陽性T細胞との相互作用による効率的抗原提示細胞の活性化が重要であることが判明した。多剤耐性結核菌に対する化学療法剤の新しいターゲットを探索する目的で、結核菌の細胞壁の解析が行われ、新しいターゲット遺伝子が同定された。
結論
病原性抗酸菌症の診断・予防・治療における新しい方策を開発する道筋が規定された。

公開日・更新日

公開日
2008-05-02
更新日
-