病原微生物の取扱におけるバイオセーフティの強化及びバイオセキュリティシステムの構築に関する研究

文献情報

文献番号
200726009A
報告書区分
総括
研究課題名
病原微生物の取扱におけるバイオセーフティの強化及びバイオセキュリティシステムの構築に関する研究
課題番号
H17-新興-一般-025
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
杉山 和良(国立感染症研究所バイオセーフティ管理室)
研究分担者(所属機関)
  • 高木 弘隆(国立感染症研究所バイオセーフティ管理室)
  • 佐多 徹太郎(国立感染症研究所感染病理部)
  • 清水 博之(国立感染症研究所ウイルス第二部)
  • 倉根 一郎(国立感染症研究所ウイルス第一部)
  • 森川 茂(国立感染症研究所ウイルス第一部)
  • 安藤 秀二(国立感染症研究所ウイルス第一部)
  • 重松 美加(国立感染症研究所感染症情報センター)
  • 倉田 毅(富山県衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
38,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国内の研究施設におけるバイオセーフティ(BS)の強化とバイオセキュリティ(BSc)体制の確立を図った。平成19年度の感染症法の改正に伴い、病原体輸送の実態把握と検討課題の特定も課題に追加した。
研究方法
アンケート調査、病原体輸送シミュレーションによる実態調査、シンポジウム、ワークショップ、研修会等の開催、病原体取扱い技術の開発と記録・管理へのICチップの活用法の検討、研究協力によるツールやシステム開発及び、国際ネットワークや国際基準と枠組み作成の会議へ参加した。
結果と考察
BSの強化:RFIDのIDタグ付けシステムによる総合的な病原体の保存管理システムの導入可能性を検討した。公的調査を補完し、国内の野性株ポリオウイルス保有施設リストを作成するための詳細な施設調査とデータベース化を実施した。病原体取扱い際しBSを担保するため、国立感染症研究所ウェブサイト上で病原体輸送、管理規程、暴露事故マニュアル等を提供した。BScの普及と確立:テロが疑われる白い粉の検査を実施する機会を捉え、緊急時を想定した可動式グローブボックスタイプBSL4の使用における事前準備やセキュリティクリアランス等の使用上の課題を明らかにした。BScのリスク評価の実施支援として開発している自己評価ツールの、独立コンピュータ上あるいはCD-R上で使用できるソフトベータ版の完成と試行評価を行った。世界健康安全保障グループラボラトリーネットワーク、欧州標準化委員会、WHOの円滑な感染性物質の国際輸送を目指す会議等へ参加し、国際的連携の枠組みの確立及び国際基準作成へ寄与した。BS及びBScのバイオリスクの包括的なリスク評価と管理に関する情報発信と教育・啓発のため、シンポジウム、研修等と病原体輸送の梱包実習を併せて地衛研ブロック単位で開催した。その実施評価を参考に、現場需要の分析材料を収集した。病原体輸送については、WHOの「感染性物質の輸送に関するガイダンス2007-2008版」を完訳提供し、輸送の試行や質問票調査により現場の実態把握、効率的かつ効果的な感染症予防と感染症の実態把握への影響の有無、業務としての経済効果等の把握に取組むと共に、公衆衛生領域での輸送とリスク評価に絞ったワークショップを通じ情報の周知に努めた。
結論
今後も継続的取組みが必要な領域である。特にバイオリスク管理者の養成と設置、法の求める施設基準等を遵守する為の仕組作り、感染症予防の要となる円滑な病原体輸送の確保は急務であり、国家的対策の必要性が認められた。

公開日・更新日

公開日
2008-05-02
更新日
-

文献情報

文献番号
200726009B
報告書区分
総合
研究課題名
病原微生物の取扱におけるバイオセーフティの強化及びバイオセキュリティシステムの構築に関する研究
課題番号
H17-新興-一般-025
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
杉山 和良(国立感染症研究所バイオセーフティ管理室)
研究分担者(所属機関)
  • 高木 弘隆(国立感染症研究所バイオセーフティ管理室 )
  • 佐多 徹太郎(国立感染症研究所感染病理部)
  • 清水 博之(国立感染症研究所ウイルス2部)
  • 倉根 一郎(国立感染症研究所ウイルス第1部)
  • 森川 茂(国立感染症研究所ウイルス第1部)
  • 安藤 秀二(国立感染症研究所ウイルス第1部)
  • 重松 美加(国立感染症研究所感染症情報センター)
  • 倉田 毅(富山県衛生研究所所長)
  • 篠原 克明(国立感染症研究所バイオセーフティ管理室 )
  • 富田 康浩(国立感染症研究所バイオセーフティ管理室 )
  • 宮村 達男(国立感染症研究所所長)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国内の研究施設におけるバイオセーフティ(BS)の強化及びバイオセキュリティ(BSc)の管理体制の構築と、改正感染症法による病原体輸送への影響について検討する。
研究方法
病原体取扱機関での適切な管理体制、指針、規則、マニュアル等の作成、現地調査、アンケート調査、意思決定や仕組み改善に活用するツールやデータベースの作成、国際会議、学会、国際連携、国際基準作成へ参加協力、消毒や病原体取扱い方法の検証、研修会、シンポジウム、ワークショップ等を通じた情報発信と教育・啓発活動を行った。
結果と考察
初年度:BS及びBScの国内外の実情の把握と情報収集を行った。特に国内でのBSおよびBSc文化の不在を受けて、国際機関発行の指針やマニュアルなどの翻訳活動と国際的専門家による最新情報の講演などを推進した。暴露事故対応マニュアル、病原体管理規程、要領等は、国立感染症研究所をモデルとして分担者が作成に参加協力を行った。事故対応の一環として、2年間に渡り消毒や白い粉の取扱いに関しての研究を実施した。
2年目:制圧を目指すポリオウイルスの取扱い施設調査、既存の高度封じ込め施設の調査と評価、国内の施設の在り方についての検討、先進国会議のラボネットワーク活動への参加協力を行った。ICチップを用いた病原体保管・管理の実現性の検討を行った。シンポジウム、ワークショップの開催と参加者需要の調査と情報収集を行った。BScツールの施設セキュリティに着目した質問票の作成と改良、脅威の分析用の設問や病原体の危害の設問を作成した。WHOのバイオリスク管理に関するガイダンス(初版)を翻訳紹介した。
最終年度: ICチップを用いたトレーサビリティ実現のシステムの試行、ポリオウイルス取扱い施設データベースの作成、BSc自己評価ツールのベータ版ソフトの完成と試行、ウエブページでの各種マニュアル、指針、翻訳物、輸送関連情報等の提供、高度封じ込め施設の活用における課題の提起、病原体輸送とリスク評価を中心とした実践的ワークショップの全国的展開、輸送シミュレーションによる課題の特定及び、バイオリスク専門家の養成の必要性についての検討等を行った。
結論
バイオリスク管理の確立と水準の継続維持が安全な病原体取扱いに重要であり、感染症予防には迅速かつ円滑な病原体輸送が不可欠である。バイオリスク対策の専門家の養成と認定、病原体取扱い施設・管理システムの外部評価が重要であり、その国レベルでの取り組みが必要である。

公開日・更新日

公開日
2008-05-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200726009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
バイオセーフティ及びバイオセキュリティは新しい実践的学問であり、国内において学問形態が未だ確立していない。本研究班はその基礎を築く為に必要な最新情報の収集などを初年度に実施し、指針、マニュアル等の基本的文書を作成すると共に、バイオセーフティ技術の基礎的検討として消毒や白い粉の取扱いを行い、リスク評価の論理や方法論といったバイオリスク管理学の基礎的知識体系の確立に寄与した。国際基準や国際輸送の枠組み確立の中で、本領域における各用語の定義の確定、リスク管理法のコンセンサス形成へ直接貢献している。
臨床的観点からの成果
臨床医学上の成果はないが、バイオセーフティおよびバイオセキュリティは検査・診断施設における日常的活動の一部であり、現場に必要な安全管理の方法論、アルゴリズム、ツールなどの作成を行った。研修、教育のプログラムが草案段階であるが、引き続き完成に向けた作業を継続している。ツール(ソフトウエア)や研修会の実施形態、成果の評価方法などはほぼ完成し、地方自治体などへ引き継ぐことが可能である。
ガイドライン等の開発
国立感染症研究所の病原体等安全管理規程、病原体輸送の取扱い要領、暴露事故マニュアルなどの作成に協力し、これは同所のウェブサイトで公開、提供されている。WHO発行の感染性物質の輸送に関するガイダンス、実験施設バイオセキュリティガイダンスを完訳し、広く提供している。以上は、参考資料としてバイオセーフティおよびバイオセキュリティに関する会議などで使用されている。
その他行政的観点からの成果
感染症法の改正に伴い、感染症対策として重要な位置づけにある診断用の臨床検体や、詳細診断のための病原体の輸送にも混乱が見られた。これに対して、追加課題として取組み、早期の是正に必要な情報を提供した。施設の認可などに必要な、リスク評価の支援ツールの作成などを行った。ウェブ上での提供を予定している。
その他のインパクト
岩手日報、山梨日日: 2006.07.24 ;「病原体の管理体制強化」 感染事故やテロを防止へ

公開シンポジウム: 2006.11.24, 007.10.19-20 ; バイオセーフティ国際シンポジウム, バイオリスク管理に関する国際シンポジウム及びバイオリスク評価と輸送に関するワークショップ

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
18件
これ以外に報告書、指針等の作成あり
その他論文(英文等)
6件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
12件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
その他成果(普及・啓発活動)
16件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
M. Saijo, G. Corbot, M. Philippe etal.
Development of recombinant nucleoprotein-based diagnostic systems for Lassa fever
Clin Vaccine Immunol. , 14 (9) , 1182-1189  (2007)
原著論文2
M. Saij, Y. Ami, Y. Suzaki etal.
Diagnosis and assessment of monkeypox virus infection by quantitative PCR assay
Jpn J Infect Dis  (2008)

公開日・更新日

公開日
2016-06-27
更新日
-